
子どもの落ち着きがない!考えられる原因や関わり方で大切なことは?

「子どもの落ち着きのなさ」が気になる親は多い
自分の子どもが、周りと比べて「落ち着きがないかも」と不安に感じたことのある方は多いのではないでしょうか。
キッズサプリ『relap(リラップ)』の製造・販売を手掛ける株式会社nanairoが実施した、幼児から小学校低学年の子どもを持つ親を対象とした「子どもの性格としつけに関する意識調査」では、半数以上の方が子どもの行動に不安を感じていました。不安の内容としては、多くの方が「落ち着きがない」「集中力がない」と回答しています。「落ち着きがない」という心配は、子育て中の親にとってはつきものとも言えるでしょう。
子どもの落ち着きがない原因にはどんなものがある?
子どもの落ち着きがないと、ADHDをはじめとする発達障害と結び付けて考えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、子どもの落ち着きがない原因はそれ以外にもさまざまなものがあります。
好奇心旺盛で欲求を抑えられない
子どもの脳は発達段階にあり、目の前の情報しか頭に入らないため全体の把握ができません。そのため、子どもが状況を見て周りに合わせられずに衝動的に行動するのは自然なこと。具体的には、興味をそそるものがあればすぐに手を伸ばす、遊びたいと思ったらすぐに遊び始めるなどの行動です。

これは知的欲求にあふれているということでもあり、伸びる糧にもなるので悪いことばかりではないのですが、落ち着いて欲しい場面もありますよね。ある程度我慢ができる年齢になれば落ち着くことも多いので、しばらくは気長に見守ってあげることも必要です。
自己主張のはじまり
子どもは成長するにつれ、しっかりとした自我が芽生えて主張が出てきます。しかしその思いを正確に言葉で表現するには未熟で、大きな声を出す、泣くなどの方法で伝えようとすることも。思い通りにいかないときに現れるこれらの行動が、落ち着きがないように見えるのかもしれません。

また、全ての主張を親が受け入れる形で育てられた子どもは、「なんでも思い通りになる」と思い込んでしまうことも。思い込みによりルールに則って行動するのが苦手になり、自分自身のコントロールが難しくなる場合もあります。
好きな人の関心を引きたい
子どもは、好きな人の関心を引くために落ち着きのない行動をとる場合があります。つまり親や先生、友達がどの程度まで自分を受け止めてくれるのかを探る「試し行動」です。2歳前後では、泣き叫ぶ、物を投げる、噛みつく、4歳前後ではやってはいけないとわかっているのに親の顔を見ながら繰り返すといった行動が見られます。試し行動は、きょうだいの誕生をはじめとする環境の変化がきっかけになることもあります。

子どもが試し行動をする理由はただひとつ。「こんな自分でも愛してくれているのか」「自分のことを嫌いになっていないか」という不安な気持ちです。これは相手の愛情を確認できるまで、さまざまな行動で表現されます。
ストレスを感じている可能性も
大人と同様、子どもは子どもなりにストレスを感じています。「お腹がすいた」という一時的なものから、きょうだいの誕生、友達関係、他者からの学力評価など持続性のあるものまでさまざまです。ストレスを大人のように上手に発散しきれないという子どもの特徴が、落ち着きのなさにつながっていることがあります。
生まれ持った気質によるもの
落ち着きのなさは、子どもが生まれ持った気質である可能性も。子どもには生まれつきそれぞれの気質があり、環境や人との関わりにより成長するにつれて性格が形成されていきます。気質は主にDoingタイプとBeingタイプの2つに分類できると言われています。
何かを行動することで安心を感じるのがDoingタイプ、その場に存在しているだけの感覚で特に動かなくても安心を感じるのがBeingタイプです。アクティブでじっとしていられないDoingタイプに対し、Beingタイプは穏やかでゆったりと行動します。落ち着きがないと感じるのは、子どもがDoingタイプであるからなのかもしれません。
子どもを取り巻く環境によるもの
環境が落ち着かない原因となっているケースもあります。子どもが落ち着かないときは、環境にも目を向けてみましょう。子どもが落ち着いて椅子に座っていられないケースでは、椅子が硬い、高さが合わないなど、椅子自体が座りにくいということも考えられます。

また、食事に集中できないケースでは、目に入るところにおもちゃがある、机と椅子の高さのバランスが悪い、食器がままごと道具と変わらない素材である、ということが一因となり得ます。
落ち着きがない子どもと関わるときの親の心構え
落ち着きがない子どもとの関わり方をお伝えする前に、親に必要な心構えについてご説明します。
心構え1:楽な気持ちで接する
落ち着きがない子どもに対して、イライラしてきつく叱ってしまうこともありますよね。前述の意識調査では、約6割の方が子育てをしているなかで「叱るときに感情的になってしまう」と回答しています。しかし心に余裕がないと子どもにストレスを与える可能性もあり、負のループにつながることも。

まずは捉え方を見直して、個性として受け入れて楽な気持ちで関わることをおすすめします。「落ち着きがない子ども」は、一方で「エネルギーにあふれた自由な子ども」であるともいえます。また、「言うことを理解してくれない」ではなく、「理解に時間がかかっているだけ」と捉えましょう。
さらに、子どもの落ち着きがないからといって、自分の育て方を責める必要はありません。今落ち着きがなくても、成長するにつれ落ち着いてくるといわれているため、長い目で見ることも必要です。
心構え2:自分の内面にも目を向けよう
親と子どもは合わせ鏡であるといわれています。落ち着かない様子がある場合、子どもは親の影響を受けていることが多くあります。もしかしたら親である自分にも似た一面があるかもしれません。時間はかかりますが、自分の内面と向き合って改善していくことで、子どもに変化が見られることもあります。

落ち着きがない子どもと関わるときのポイント
落ち着きがない子どもに対して、感情的に叱るのは逆効果であるといえます。では、どのような関わりが必要なのか見ていきましょう。
ポイント1:感情的に叱るのではなく良い部分を褒める
落ち着きがない子どもは周りから否定されたり叱られたりすることが多く、劣等感や孤独感を抱える傾向があります。良い部分を積極的に褒めて自己肯定感を高め、気持ちを安定させることが重要です。
褒め方にもポイントがあります。「上手にできたね」という曖昧な表現ではなく、どのようなところが良いと感じたのかを具体的に言葉にして褒めるようにします。そのためには、日頃から子どものことをよく知り、褒めるポイントの見極めが必要になります。そのときに、誰かと比べて「○○くんより○○ができたね」という褒め方は他人を見下す癖がついてしまう可能性があるので控えましょう。比べる場合は、「頑張ったから、できなかったことができるようになったね。すごいね」というようにできなかった過去と比べて褒めるようにします。
また、褒める言葉は「すごい」「えらい」だけではありません。「○○ちゃんが手伝ってくれて助かったよ」「ありがとう」という感謝の言葉を素直に伝えることも褒めることに繋がります。
ポイント2:子どもに分かりやすい言葉や視覚情報を使って伝える
社会のルールやその場に合わせた振る舞い方などは、根気よく伝えましょう。何度言っても伝わらないときは、絵や写真などで見えるようにするのもおすすめです。守って欲しいルールやマナーを絵に書いたり、絵本を使ったりするのもいいですね。
また「試し行動」である場合は特に、悪いことを親が受け入れてしまうと悪化する傾向にあります。悪いこともしっかりと伝えていきましょう。
ポイント3:落ち着ける環境づくり
子どもが環境により落ち着かない可能性が考えられるときには、環境の調整が必要です。例えば椅子に座っていられない子の場合、椅子に座りにくい理由があるのかもしれません。クッションをつける、前に机を置く、椅子を変えるなどの工夫により子どもが落ち着いて座っていられるようになることもありますよ。
ポイント4:子どもと親との関わりを大切にする
親子が1対1で過ごせる時間をできるだけつくりましょう。週に1度、短時間だけでもかまいません。子どもは親子で楽しく過ごすことで親の愛を感じられるようになり、情緒が安定し自信がつきます。
また、「好き」を言葉にして伝え続けることも大切です。悪いことばかりしたとしても、受け入れるつもりであるということをしっかり伝えます。大人を困らせるための試し行動である場合には、「どんなあなたも大好き」という親の思いを受け取ると、試し行動は落ち着いていきます。
さいごに
子どもの落ち着きがないと、すぐに発達障害とつなげて不安になる方もいるかもしれません。しかしその行動は、子どもの好奇心の現れや愛情の確認作業であるケースも。そのほか、環境やストレスにより落ち着きがなくなっている可能性もあります。子どもの落ち着きがないときは、できるだけ大きな心で子どもの気持ちを汲み取り、安心できる場をつくってあげてくださいね。
参考
- 秋山 邦久,福村出版 (2009/5/1)『臨床家族心理学―現代社会とコミュニケーション』
