「ユネスコスクール」って?日本には世界最多の認可校が!
「ユネスコスクール」とは?
まず、文部科学省の説明から見てみましょう。
ユネスコスクールは、ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校です。
文部科学省及び日本ユネスコ国内委員会では、ユネスコスクールをESDの推進拠点として位置付けています。
現在、世界180か国以上の国・地域で10,000校以上のユネスコスクールがあります。
ユネスコスクールは、ユネスコ憲章に示された理念を学校現場で実践するため、1953年にASPnet (Associated Schools Project Network)として始まりました。
現在、世界182か国で11,500 校以上がASPnetに加盟して活動しています。日本国内では、1,116校の幼稚園、小学校・中学校・高等学校及び教員養成系大学がこのネットワークに参加しています。(2018年10月時点)
参加校は公立・私立の園や学校や、「京田辺シュタイナー学校」、「箕面こどもの森学園」などのオルタナティブスクールも参加しています。
ユネスコスクールの活動目的
世界中の学校間の交流を通じ、生徒間・教師間で情報や体験を分かち合うことや、地球規模の諸問題に若者が対処できるような新しい教育内容や手法の開発、発展を目指しています。
具体的に日々の授業等でどんな取り組みをするか、ということは定められておらず、「ユネスコスクールの4つの基本分野と、ESD (持続可能な開発のための教育) にもとづいた実践が求められます。
ユネスコスクールの4つの基本分野
基本分野は、地球規模の問題に対する国連システムの理解、人権、民主主義の理解と促進、異文化理解、環境教育です。
一つずつ、詳しく見ていきましょう。
地球規模の問題に対する国連システムの理解
グローバル化や複雑化する諸問題(貧困、飢餓、失業、エイズ、環境汚染、気候変動、識字、文化、ジェンダー(性差)、児童就労など)と、国連システムを理解し、問題解決のプロセスにおける国際協力の重要性を学びます。
人権、民主主義の理解と促進
「世界人権宣言」(1948年)、「児童の権利に関する条約」(1989年)等を出発点として、学生の自らの経験のなかから、他者の権利だけでなく、義務や責任(人種差別、偏見、民主主義、相互の尊重、市民の責任、寛容と非暴力紛争等、人権に関連する問題)について意識を広げます。
異文化理解
社会がより多文化化、多人種化するなか、異なる習慣、伝統、価値観に対する理解を促進します。
情報交換やパートナーシップの構築、学校間・国同士の共同プロジェクトはユネスコスクール・プロジェクト・ネットワークの中核で、他文化への理解や敬意を深めます。
環境教育
環境問題(汚染、エネルギー、森林保護、海洋および大気に関する研究、土壌侵食、天然資源保護、砂漠化、温室効果、持続可能な開発など)を検討し、解決の手段や科学が人類の将来に果たす役割を考えます。
ESDとは?
ESDは、Education for Sustainable Developmentの略で、「持続発展教育」とか、「持続可能な開発のための教育」と呼ばれています。ユネスコが、これからの世界教育基準として提唱する概念の一つです。
今の世代だけを視野に入れた開発や発展ではなく、私たちとその子孫たちが、この地球で生きていくことを困難にするような問題をについて考え、立ち向かい、解決するための学びです。
ESDとSDGsってどういう関係?
加えて、持続可能な社会の創り手を育成するESDは、持続可能な開発目標を達成するために不可欠である質の高い教育の実現に貢献するものとして、「SDGsの17全ての目標の実現に寄与する」と第74回国連総会において確認されています。
ESDはSDGs17の全ての目標実現の鍵となっているということですね。
ESDは学校の教育に反映されているの?
2008年3月に幼稚園教育要領、小学校・中学校の学習指導要領が公示され、2009年3月には高等学校の学習指導要領が公示されました。その新しい学習指導要領等の中で、持続可能な社会の構築の観点が盛り込まれています。
つまりESDの考え方はしっかりと公教育にも反映されているということです。教育基本法と学習指導要領等に基づいた教育の中で、ESDの考え方に沿った教育を受けることができます。
ユネスコスクール加盟のメリット
次に、ユネスコスクールに加盟した場合のメリットを考えてみましょう。
国内外のユネスコスクールと交流する機会の増加、海外との教員交流、ESDのための教材や情報の提供、ユネスコスクールHPを通じた情報交換、ユネスコスクール全国大会をはじめ、ワークショップ、研修会への参加、国内の関係機関との連携強化などがあげられます。
参加校・参加生徒に求められること
ユネスコスクールに参加した学校(およびその生徒)は次のようなことが求められます。
<ul> <li>法的拘束や義務はありませんが、積極的な活動が求められます。</li> <li>年に一度、日本ユネスコ国内委員会に報告書の提出が必要です。</li> <li>ユネスコが提案する教材が送られ、教育現場での実験・評価を依頼されることがあります。</li> <li>ユネスコから年に数回、世界のユネスコスクールの活動報告が記載されている情報誌が送付されるとともに、ユネスコが行う様々な活動に参加する機会があります。</li> </ul>
国内のユネスコスクールをご紹介
具体的な取り組みについて見てみましょう。
東京ゆりかご幼稚園
この幼稚園では豊かな環境を活かして、自然教育 〜大自然の中で思い切り遊ぶ〜、環境教育 〜遊びや生活を通して環境を学ぶ〜、労作教育 ~畑、田んぼ・・・手間暇かけて物事を成す~、畑での野菜の栽培、食農教育 ~栽培からクッキング~など体験教育に大変力を入れています。
2018年に、東京ゆりかご幼稚園のカリキュラム「ESD=持続可能な開発のための教育~里山教育」が高く評価され、「ユネスコスクール」として認定されました。
箕面こどもの森学園
この学園はオルタナティブ・スクール(小中学校)の一つです。子ども一人ひとりの個性を尊重し、民主的に生きる市民を育むことを目的とし、フレネ教育やイエナプラン教育をベースに、ESD(持続可能な未来をつくる教育)を行っています。
2015年にユネスコスクールに認証され、翌2016年にはESD重点校のサステイナブルスクール、2019年4月には、 UNESCOのハッピースクールに選ばれ、ESDテーマ、ワールドオリエンテーションを展開しています。
活動内容としては、小学部で 「さべつのたね」というテーマで、暮らし方の違い:ホームレス、部落問題、在日外国人など感じ方の違い:発達凸凹、LGBT、HSCなど、見た目の違い:義足、人工呼吸器など、違いとは何かを考え、自分の中にある「さべつのたね」について考えています。そして、何事も知ることから始まること、自分を見つめることの大切さなどを学んでいます。
オルタナティブスクールのうち、「京田辺シュタイナー学校」と「箕面こどもの森学園」の2校がユネスコスクールに認定されています。この2校は、「サステイナブルスクール」としても選ばれています。
その他のサステイナブルスクール
ESDに取り組む全国の学校のうち、公募から以下の24校が、「サステイナブルスクール」として、ESDに実践的に取り組む意欲のある学校として選定されています。
- 気仙沼市立面瀬小学校
- 気仙沼市立唐桑小学校
- 登米市立米谷小学校
- 江東区立八名川小学校
- 杉並区立西田小学校
- 目黒区立五本木小学校
- 横浜市立永田台小学校
- 新居浜市立惣開小学校
- 阿南市立桑野小学校
- 大牟田市立吉野小学校
- 石巻市立牡鹿中学校
- 大田区立大森第六中学校
- 名古屋国際中学校・高等学校
- 福山市立福山中・高等学校
- 静岡県立下田高等学校南伊豆分校
- 広島県立安古市高等学校
- 愛媛県立新居浜南高等学校
- 独立行政法人国立高等専門学校機構 福島工業高等専門学校
- 千葉県立桜が丘特別支援学校
- 愛知県立みあい特別支援学校
- NPO法人 東京賢治の学校 東京賢治シュタイナー学校
- 特定非営利活動法人 横浜シュタイナー学園
- 特定非営利活動法人 京田辺シュタイナー学校
- NPO法人 箕面こどもの森学園
さいごに
以上のように、ユネスコスクールでの学習は、国際理解だけでなく、自分の国や地域の課題を認識し、市民の一員としてどう課題解決に取り組むかを考えさせるものです。
ついつい私たちは日本には関係ない、発展途上国の問題だと考えがちですが、決してそうではありませんね。
日本での課題は、里山問題、高齢化、伝統の継承、防災、ゴミ問題など、非常に多くあります。このような問題は、特定の科目で学ぶのではなく、各教科にまたがって学習することで、自分のこととして子どもたちの真の学びになると確信しています。