子どもにしているかも!?「脅ししつけ」の怖い影響と寄り添い方
ついついやりがち?子どもに不安と混乱を招く「脅ししつけ」とは
思わず使ってしまう「脅ししつけ」とはどんなことを指すのか、具体的にみていきましょう。
その場で言うことをきかせるためだけになっている言葉
なかなか保育園や公園から帰ろうとしない時に「じゃあ勝手にしなさい。置いて先に帰るね」「早く帰らないと鬼がくるよ」、使ったおもちゃを何度言っても片付けない時には「全部捨てるからね」など、つい言ってしまうことはないでしょうか。これらは「脅ししつけ」と言われ、親が言うことをきかせたい時に子どもの恐怖心へ訴えかける、即効性のある言葉です。鬼から電話がかかってくるアプリも出ているそうです。
小さな子どもは想像力も豊かなため、急いで帰ろうとしたり、本気で不安になって親にしがみついたり、泣き出す子もいます。一見親の言うことをきいているようにもみえますが、注意された理由を理解していないため、子どもは同じ行動を何度でも繰り返します。
「脅ししつけ」は不適切なコミュニケーション「ダブルバインド」を生む
ダブルバインド とは、1956年にアメリカの精神科医グレゴリー・ベイトソンが提唱した理論で、二重拘束という意味があります。2つの矛盾したメッセージを受けた人が、どうしたらよいか分からない混乱した心理状態になってしまう状態のことを指しています。
前述の例でいえば、「勝手にしろ」「先に帰る」と言われそのまま遊んでいると早く帰るよと怒られる、「全部捨てる」と言いつつ捨てられることなく早く片付けなさいと言われる、という最初と最後の言動が矛盾しています。他にも、「好きなお菓子を選んでいい」と言われ高いお菓子を選ぶとダメと言われる、部活で失敗し「帰れ」と顧問に言われて帰ろうとすると余計に怒られる、鬼やおばけがくるからと怖がらせるのもダブルバインドに当てはまります。最初と最後で違うことを言われることで子どもは混乱し、どの行動が正しいのか分からなくなってしまうのです。 (ダブルバインドに関する記事はこちら)
「脅ししつけ」が子どもに及ぼす心理的な影響とデメリット
「脅ししつけ」を受けて成長した子どもには、様々な心理的影響やデメリットがあります。
親が本当にして欲しい行動や判断力が身につかない
「脅し」の言葉を言われても、子どもの記憶に残るのは恐怖や不安だけです。記憶に残った恐怖や不安が子どもの中にイメージとして残り、夜泣きやトラウマに繋がる可能性があります。
また、子どもは「言うことをきかないと困る(怖い)ことになる」という条件反射的に行動しています。その場しのぎの行動でしかないため、なぜしなければならないのか、なぜする必要があるのか、という大事な理由の部分が伝わっていません。本質的な改善には至らないため、子どもが自分で判断し正しいことを行動に移すような自立性は育たないのです。
親子の信頼関係の薄れや虐待へ繋がる可能性がある
帰ると言っても帰らない、捨てると言っても捨てない、鬼がくるといってもこないなど、 何度も同じ「脅ししつけ」をされれば、子どもも親が言っていることがうそだと覚えます。成長と共に、「今はこう言っているけれど、本当は違うことを考えているのかも」「本心を話してくれない」など、疑心暗鬼になり親への信頼も薄れていくでしょう。
また親も、言うことをなかなかきかない子どもに対し、本当に置いて帰ってしまったりおもちゃを捨ててしまったりと、より刺激が強い脅しにエスカレートしていってしまう可能性があります。自分でも気付かないうちに虐待へと繋がってしまう、親にとっても内在的な危険を秘めているのです。
子どもも脅しを使い、道徳心が養われにくくなる
子ども自身が親から言われてきたように、子どもが自分の意見や主張がとおるように他人へ脅しを使うようになるでしょう。親へ「これを買ってくれたら勉強する」、友達へ「ゲームを貸さないならもう遊ばない」など、脅すことで相手を自分の思い通りにコントロールしようとする思考になりやすいのです。
また、子どもは言われた言葉を素直にそのままの意味で捉えます。例えば「食べ物を残したら目がつぶれる」など、身体障害に関わる言葉が「脅ししつけ」に入ると、「この人は言うことをきかなかったから目が見えなくなったんだ」などと誤った解釈をしてしまうこともあるようです。
このように、「脅ししつけ」を受け続けて成長すると、倫理観や共感性といった道徳的な面が養われにくくなるといえます。
自己肯定感を損失し、主張や選択ができなくなる
「脅ししつけ」では、子どもは恐怖心から親に服従しています。繰り返し「脅ししつけ」を受けていると、「親には逆らえない」「意見を言っても否定される」という不安や無力感が心に植え付けられます。自分で考えることも無駄に感じ、やめてしまうでしょう。その結果自分の意見や選択に自信が持てなくなり、能力や魅力の面でも自己評価が低くなるため、自分自身を卑下し、大切にできなくなっていく可能性も出てきます。
聴く姿勢が大事!脅さずに子どもに寄り添った声かけ方法
「脅ししつけ」を使わないようにするには、どのような方法があるのでしょうか。
子どもの意見を否定しない!まずは気持ちを受け止める
頭ごなしに子どもの気持ちを否定すれば、子どもなりに反発心や意地も出て、なおさら話を聞いてもらえないかもしれません。急いでいると親もイライラしやすいですが、少し深呼吸をして冷静になり、まずは子どもの話を聞き、共感して気持ちに寄り添ってあげるのです。気持ちを言葉で表現することは、精神的な安定をもたらします。「○○したいんだね」「○○したくないんだね」と子どもの気持ちを代弁し、一旦受け止めましょう。そうすると、子どもも「受け入れてもらった!」と気持ちが落ち着き冷静になるため、こちらの話を聞きやすくなります。
なぜそうする必要があるのか?言葉を選んで理由を説明する
子どもにも伝わりやすい、分かりやすい言葉を選んで理由を説明してあげるとよいでしょう。帰らなければならない理由では、ご飯やお風呂の時間が遅くなってしまうこと。おもちゃを片付ける理由では、部屋が片付いて気持ちいいことや、躓いて転んだり怪我したりせずに済むことを伝えます。子どもにとってどんなデメリットがあるのかを理解してもらうのです。
「それでもいいもん!」なんて子どもの声が聞こえてきそうですね。説明しても抵抗されたら、親の気持ちも伝えてみましょう。「寝る時間が遅くなったら悲しい」「一緒にご飯をゆっくり食べたいな」と素直に伝えてみると、子どもも「じゃあいいよ!」と乗り気になってくれる可能性が高くなります。
この時注意したいのが、説明が長くなりすぎないことです。子どもが分かりやすいようにたくさん説明をしても、子どもからしてみれば情報量が多くなり、言葉の理解も追い付かないでしょう。言い返すほどの語彙もまだ出ず、親の言葉を全て受け止められないため、自然な心の防衛本能で耳を閉ざしてしまいます。そのまま人の話を聞かずに、どんどん聞き流すことが癖づいてしまうため注意が必要です。
条件を付けず、伝える言葉はシンプルに!選択肢も与えよう
「○○しないなら」「○○できたら」といった条件付きの言い方は控えます。出来るだけシンプルに「○○しようね」と伝えた方が、子どもには理解しやいためです。また、言われたことをできない自分は「愛されない」「価値がない」と感じてしまうことも防げます。親の感覚的には、子どもへ伝えたいことが10個あったら、その内一番伝えたい1個だけを伝えるような感覚で話すとよいでしょう。
子どもの意見や気持ちに譲歩し、選択肢を与えることも効果的です。「まだ遊びたいんだね。じゃあ、あと2回遊んだらお家行く?それとも3回?」、「これとこれどっちがいい?」と子どもに選ばせると、自分で納得しながら行動できます。
さいごに
「脅ししつけ」についてご紹介しました。自分自身が受けた経験があるという方や、周りの保護者が使っていたなんて状況もあるのではないでしょうか。しかし、「脅ししつけ」からは実質的な良い効果が期待できず、小さい頃からの小さな積み重ねが、成長した時にどの程度影響を及ぼすかは計り知れません。ただ、実際に鬼やおばけの存在を使用する点でいえば「子どもが小さい時は説明しても分からない」「嘘も方便だ」という意見もあり、賛否両論あるようです。とはいえ、脅ししつけに頼りすぎないように、子どもにかける言葉を意識していけるといいですね。
参考サイト
- 子どもが脅されて育つと…「脅すしつけ」の落とし穴と改善策 [子育て] |All About(https://allabout.co.jp/gm/gc/485096/)
- 人の話を聞かない子供を「話を聞ける子」に育てるには|株式会社ひばり(https://fujichild.jp/info-post/%E4%BA%BA%E3%81%AE%E8%A9%B1%E3%82%92%E8%81%9E%E3%81%91%E3%82%8B%E5%AD%90%E3%81%AB%E8%82%B2%E3%81%A6%E3%82%8B%E3%81%AB%E3%81%AF/)