グレゴリー＝ベイトソン（米国の文化人類学者・精神医学研究者）が1950年代に提唱した心理学用語です。二つの矛盾した命令を受け取った者が、板挟みになり、その矛盾を指摘することができず、最終的には従わざるを得ないようなストレス状態をいいます。

子育ての日常からダブルバインドの例をあげてみましょう。

「ごはんだから、早くおもちゃ片づけて！！」と子どもに言っても、子どもはいつまでも片付けようとしません。そこであなたは「食べないんだったら、ごはん片づけるからね！！」と言って、脅してしまいます。しかし、実際にはごはんを片づける気持ちはあなたにありません。日頃の会話でこんな心当たりはありませんか？　こちらは意識していなくても、子どもを脅していることが多々あります。

一番の悪影響は子どもの自己肯定感の低下と、間違ったコミュニケーションの方法を学んでしまうことです。臨床心理士の高山恵子氏は、脅しによって自分の選択を否定されたりするダブルバインドの状態が続くと、子どもは自己主張をしなくなると言います。

また、ダブルバインドによってしつけられた子どもは、友だちに対しても「おもちゃ貸してくれなかったら、もう遊ばない！」などと脅したり、親を信用しなくなったりします。ダブルバインドは子どもをコントロールするために、大人の都合で脅しているにすぎないことを子どもは見抜いていて、学習しているのですね。

子どもに「ご飯食べたらテレビを見てもいいよ」と言ったのに、いつまでもテレビを見続ける子どもに「いつまで見てるの！！消すよ！」と言ってしまう。

「ご飯終わったら、30分だけテレビを見てもいいよ」とあらかじめ時間を決めておけば、子どもは注意されても混乱しないし、親もイライラせずにすみます。

この問いかけは、片付けが不得意な子どもにも応用できます。「片づけなかったらおもちゃ捨てるからね！」と脅かすのではなく、「100数える間に片づけられる？50でできるかな？」と言ってみましょう。子どもは選択肢を与えられて自分から行動しようとします。

実は言葉かけってとても難しいものです。かけた言葉によって、子どもの自己肯定感を伸ばしてあげることもできるし、傷つけてしまうこともあります。そして、子どもを大いに褒めましょう。子どもは褒められることによって、「自分が認められている」と感じられるようになり、自己肯定感が高まります。また、子ども自身の主体性を引き出す声かけとして、「どうだった？」「どうしたらいいと思う？」「どうなりたかったの？」と聞くようにしましょう。そうすると、子どもは自分の力で、自分なりの解決策にたどり着くことができるからです。

この記事では、子どもを混乱させ、自己肯定感を傷つける「ダブルバインド」についてお伝えしました。自己肯定感の基礎は、0～6歳頃の間に固まります。普段から意識的にダブルバインドにならないよう気を付け、褒める言葉かけをしましょう。その他、気を付けたい声かけとして、他の子どもと比較しないこと、強制的な「〇〇しなさい」や、存在を否定する言葉かけ（〇〇ちゃんがいなければOO）は止めましょう。