【徹底解説】子どもの完璧主義を予防・改善するには?増えている完璧主義の特徴・原因
完璧主義の子どもの特徴
「他者から愛され、他者から認められるには、完璧なパフォーマンスを発揮しなければならないと考える」のが完璧主義です。
子どもの完璧主義は、4~5歳くらいから次のような兆しが見え始めます。
- 失敗することを過度に恐れる
- 期待した通りに物事が進まないと頻繁に癇癪を起し、イライラする
- 新しいことへ挑戦するのを避ける
- 間違いを犯すリスクのあることを拒否する
- 恥をかくことを過度に恐れる
- 困難を前にするとすぐに諦める
- しなければならない事をぐずぐずと後回しにする。
- 0か100か、「オール・オア・ナッシング」の選択をする
一見、育てやすく良い子に見える完璧主義の子どもの、何が問題なのでしょうか?
完璧主義の問題点
完璧主義な子どもがそのまま大人になってしまった場合、少しでも何かができないと自分を責めるようになってしまいます。
また、完璧主義の子どもは自分だけでなく、他人にも完璧を求めてしまうため、否定的・批判的になりがちで、人間関係がうまくいかずにストレスを感じるようになってしまいます。
また、自分ができないところを人に見せないようにしてしまうので、困った時にも人に助けを求められなくなることも考えられます。
失敗への恐怖は、新しいことやリスクがあることを避け、確実にできることだけをやるので、能力が伸びにくくなります。
(参考)
池田浩・三沢良「失敗に対する価値観の構造」J-STAGE,2012年(最終閲覧日:2021年4月16日)
子どもが完璧主義に陥る原因は?
子どもが親から安心感を得られていないことが、子どもの完璧主義の原因の一つです。一般的には、親の機嫌が良ければ優しく接してもらえ、子どもは安心感を得ます。
逆に、親の機嫌が悪いと、子どもの側は、親との関係そのものが絶たれたように感じるものです。
子どもとは無関係であっても、親が機嫌が悪いと、言葉だけでなく言葉にしない事(実はこの方が深刻)でも、子どもは、親の反応を、自分の行動に対する直接的な反応だと受け止めて不安になってきます。
そして、親の機嫌が悪いのは「自分のせいだ」と、子どもは捉えてしまいます。それを呪縛的思考といいます。
呪縛的思考とは?
呪術的思考は臨床心理学用語で、「”ある行動や考え”と”災難・悲劇的な出来事”の間に(勝手に)相関関係があると考え、恐怖を感じたり、自分の考えがそのまま物事を引き起こす原因になると信じること」です。
一般的に、幼児は呪術的思考をする傾向が強く、特に2~7歳が強いと言われます。呪術的思考は、幼い子どもにとっては正常な発達過程の一部ですが、子どもの心に完璧主義的な傾向を芽生えさせ、子どもが完璧主義に陥る原因になります。
臨床的な研究によると、不当な精神的外傷を受けた子どもは、呪術的思考の段階から抜け出せないことが多いといいます。
(参考)
M・スコット・ペック(著),森英明(訳)(2011)平気でうそをつく人たち:虚偽と邪悪の心理学.草思社文庫
子ども目線で辿ってみよう
わかりやすく、子どもの目線で具体例をあげてみましょう。
「きのう、私がOOしたら、ママはすごく機嫌が良かった。今日もそうしよう」といった考え方に、子どもはよくなります。
そのため、「2度目にOOした時に、最初の時と同じ反応を得られない」と、子どもは自分が間違っていたのだと考えてしまいます。
この思考の問題点は、実際には、母親の機嫌が良かったのはOOのせいではない、というところです。
母親の機嫌が良いのは「OOが原因ではない」と子どもが気づいてしまったら、子どもはどうすれば自分が親の機嫌を良くするかわからなくなって、ますます不安になっていきます。その結果、自分に厳しく当たることで解決しようとします。
子どもの完璧主義を予防・改善する方法
子どもが完璧主義になるのを予防するには、親の子どもへの関わり方、考え方を変えていく必要があります。
失敗を責めない
子どもの失敗を責めるのではなくて、親がまず、それを冷静に受け入れましょう。そして、どうすればいいのか前向きに考える練習を子どもと一緒にしていきましょう。
結果だけを評価しない
結果というものはどうしても分かりやすいので、そこに目を向けがちですが、プロセスに着目してあげましょう。特に頑張っても結果が出なかった場合には、結果も含めて受け入れましょう。
否定的な言葉をかけない
「どうしてこんなこともできないの!!」「そんなことしたらダメ!!」など否定的な言葉を使うことは簡単です。「どうしてできないの?」と言われても、できないものはできないのです。感情に任せたまま否定的な言葉を使わないように気を付けましょう。
子どもを認める
ありのままの子ども、その子の良いところを認めてあげましょう。子どもよりもできることが多い大人としては、子どもの悪いところに目がいきがちです。
親も子どもに説明する
親が不機嫌な時は、子どもに分かるように理由を説明しましょう。そうすることで子どもも「なぜ機嫌が悪いのか?」がわかるようになり、むやみやたらに自分のせいにすることを防ぎます。
頼ることを教えましょう
自分が困った時は人の助けを頼ることを教えてあげましょう。例えば街で人に道を聞いたり、レストランでお店の人にお願いするなど、普段から人に頼ることを教えましょう。
親の弱みも隠さず見せる
親も完璧ではありません。しかしながら子どもに対して弱い面を見せているでしょうか?親の背中を見て育つのが子どもであるならば、弱いところがあってよいということも親の背中で見せてあげましょう。
結果だけを評価し、否定的な言葉を子どもに浴びせ続けると、子どもは「自分は完璧じゃないからダメなんだ」と思うようになり、親に認めてもらいがために完璧主義者になってしまいます。
もともと完璧主義者の子どもは頑張り屋なので、表面的には自己肯定感が高いように見えますが、実は逆で頑張っていない自分はダメな自分だと思っているので、自己肯定感が低いのです。ありのままの、その子のいいところをもっと認めてあげる必要があります。
子どもが失敗したとき、親はどうする?
失敗したことを、いつまでも引きずらない事が大切です。受験に失敗したときは、親もいち早く気分の転換をはかりましょう。そして、「また、がんばろうね」と冷静に、やさしく声がけしたいものです。
そして、親自身もその失敗を引きずらないことがポイントです。失敗を引きずり続け、親自身が失敗を避ける様な子育てをしてしまうケースがあります。そのような親を「カーリングペアレント」といいます。
カーリングペアレントとは?
「カーリングペアレント」とは、子どもが失敗することを避けるために、失敗してしまう要因になりうるものを次々と排除したり、避けさせるように積極的に手を出してしまう、過保護で過干渉な親のことです。「先回り育児」とも言われ、アメリカでは「ヘリコプターペアレント」とも呼ばれます。
カーリングペアレントになりやすい人の特徴として、以下が挙げられます。
- 妥協しない人生を歩んできた
- 理想主義者である
- 厄介ごとが面倒である
- 周りへのケアを忘れない
- 努力により成功者になった
- 子どもは自分の分身であると考えている
また、自分がカーリングペアレントかどうかをチェックする項目は以下になります。
- 子どもに家事やお手伝いを全くさせない
- 何でも失敗しないように口出しや手出しする
- 子どもの課題と親の課題の区別がついていない
- 子どもが失敗するとイライラする
- 子どもの代わりに説明する
- 子どもの宿題や学校の準備をしてしまう
- 子どもの忘れ物を届けている
- 子どもの課題を代わりにするのが愛情と思っている
- 優しくしてさえいればいい子に育つと思っている
- 通常の生き方から逸れるのは失敗だと思っている
いかがでしょうか?当てはまった項目はあったでしょうか?
もしいま当てはまっていたとしても、この項目を知ることで、自分を俯瞰することができ、冷静になれるかもしれません。
まとめ
親が完璧を求めていると、子どもが完璧主義者になってしまいます。まずは親自身が完璧主義から抜け出しましょう。
完璧主義には良い適応的完璧主義と、問題が多い不適応的完璧主義があります。適応的完璧主義の人は、高い目標を持っていて、達成のために無理はせず、他人からの評価を気にしすぎず、計画的に行動でき、積極性があります。
不適応的完璧主義の人は自分にとって高すぎる目標を目指し、常に人からの評価を気にし、失敗を過度に恐れ、自己批判的です。
この記事では完璧主義の持つネガティブな面を子育ての視点からお伝えしました。ミシガン州立大学の研究によると、完璧主義のネガティブな面は、親から子どもへと引き継がれていく可能性があるそうです。
そして、子どもの完璧主義の核心にあるのは、「安心ではないという感覚」であることをお伝えしました。
失敗を極度に恐れる子ども、親の機嫌を伺い、とりなす様な行動をする完璧主義の子どもの原因は、親の行動や親の影響と知って、ドキッとした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
子どもは親が言ったことよりも、むしろ親が口に出さなかったことに大きい影響を及ぼされることを覚えておきましょう。