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何が体罰になる?適切なしつけを行うため気をつけること

戸川琴
2021/04/15 00:04
子育ては、大人の思い通りにいかないことばかり。何度言っても困った言動を繰り返す子に、根気よくしつけをするのは大変なことです。そのうえコロナ禍では在宅勤務や長期の休園・休校など、普段と違う状況のなかで余裕がなくなる場面もあったでしょう。 今回は児童虐待に関する法律に目をむけて、冷静に対策を考えてみたいと思います。社会の目指す「体罰によらない子育て」と、それを実践する方法を紹介します。

コロナ禍による影響も?児童虐待が増加傾向にある現状

児童虐待相談対応件数をみてみると、平成2年には1,101件だったのが令和1年の速報値では193,780件に激増しています。虐待防止の意識が高まったことによる相談の増加も考えられますが、少子化が進んでいるにも関わらず児童虐待の懸念が減らないことについては、深刻にとらえなくてはなりません。

心理的虐待が最も多く、次いで多いのが身体的虐待

児童虐待の内訳をみると心理的虐待が最も多く、年々増加傾向にあります。また2020年においては、家庭内暴力(DV)も増加しています。


次に多いのは、身体的虐待です。言っても聞かない子に対して、つい手をあげてしまいたくなることは誰にでも起こり得ます。


しかし、子どもに身体的な苦痛を与えても、いいことはありません。親子の信頼関係が崩れ、ますますしつけがしにくくなる場合もあります。


参考:

内閣府『DVへの対応について』(https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/000707300.pdf

コロナ禍で子どもとの接し方に変化はあった?

ステイホームが続いた2020年は、休園・休校によって家庭の負担が一気に増え、生活リズムが崩れたり、経済的な困窮があったり、家族との不和が顕在化したりと、日常生活にさまざまな困難が起こりました。


それに加えて在宅勤務や家事などをしながら一日中子どもの相手をしていると、余裕を持った接し方ができなくなってしまうことも。以前は子どもと適切な距離を保てていたはずが、ステイホームによる急な変化によって、うまくいかなくなったというケースもあるでしょう。


普段から充分意識している方でも、追いつめられるとコントロールを失ってしまうことはありますよね。

児童虐待に関する法改正で、体罰が明確に禁止される

体罰によるしつけが禁止

以前は民法で親権者の「懲戒権」が認められており、しつけの範囲で行われる体罰は明確に禁止されていませんでした。


しかし段階的な改正を経て、2020年4月に施行された児童虐待に関する改正法では、体罰、または体罰によるしつけが禁止となりました。これまで身体的虐待を「しつけ」と称して行っていたケースも虐待と認めることで、いち早く被害に遭った子どもを救出することができるようになったのです。


ただし、児童虐待の防止等に関する法律および児童福祉法は、子育てを監視し否定するものではありません。虐待を疑われることを恐れて追いつめられる親がいるのも事実です。


法律を知ることで主観的になりがちな子どもへの接し方を客観視し、バランスをとっていくという考え方がよいでしょう。


参考:

厚生省『体罰によらない子育てのために』(https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/minnadekosodate.pdf

何が体罰?身体的虐待にあたるケースとは?

体罰は、叩くなどの暴力はもちろんのこと、長時間にわたる正座の強制や食事を与えないなどして身体的苦痛を加え、罰を与えようとする行為です。


ほかに、罰として嫌なにおいを無理やりかがせるなど、身体的な不快感を与える行為も体罰とみなされます。


子どもに身体的苦痛を与えてしまうのは、しつけの場面に限りません。大人はスキンシップやコミュニケーションのつもりでも、明らかに嫌がっていれば考え直した方がいいでしょう。


しかし家族だからといって、初めから加減が分かるわけではないと思います。子どもの反応をみながら、適切なかかわり方を調整していくことが大切ですね。


参考:

『体罰によらない子育てのために』(厚生省)リーフレット

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/taibatu.html

『体罰によらない子育てのために』(厚生省)とりまとめ

https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/minnadekosodate.pdf

『体罰の定義について』(文科省)

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331908.htm

子育ては親だけの責任じゃない!社会で子どもを守ろう

改正法では、親権者以外の保護責任者からの虐待防止策も盛り込まれました。家族のかたちが様々であるいま、たとえ親子関係になくても子どもの健全な育成に対して責任があることをはっきりさせる必要があるでしょう。


また、児童福祉施設や学童保育など保護責任のある職員についても体罰を禁じています。虐待は、親だけの問題ではありません。子どもは社会で育て、社会で守る存在という認識が高まればいいですね。


参考:

『児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法』(厚生省)

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000589309.pdf

『放課後児童クラブの基準等について』(厚生省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000037a9p-att/2r98520000037ae0.pdf

体罰によらない子育てを目指し、しつけで気をつけること

体罰は一時的にしつけの効果があるように思えますが、中長期的にみたときには子どもの成長に悪影響を及ぼす恐れがあります。親が体罰には意味があると考えている場合でも、子どもは別人格の人間です。今後は体罰によらない子育てを実践しなければなりません。


厚生労働省のまとめた資料によると、しつけとは「子どもの人格や才能等を伸ばし、社会において自律した生活を送れるようにすること等の目的から、子どもをサポートして社会性を育む行為」とあります。それでは虐待にならないよう何に気をつけてしつけを行えばいいのでしょうか。

納得感を持たせること

子どもに自分でやりたいという欲求が出てくると、過度なしつけは強制されているように感じてしまいます。そこで大事なのが、子どもに「自分の意思で決めた」という納得感をもたせることです。


以下に紹介する方法も、ぜひ子どもと一緒にルール作りをしてみてください。小さな子どもの場合、親の決めたルールを一緒に確認したり、選択肢を用意して選ばせてあげたりするのもいいですね。

生活にルールとリズムを

しつけの基本は、子どもが生活におけるルールとリズムを身につけることです。しかしこれが一番難しく、口頭で注意したりご褒美で釣ったりするだけではなかなかうまく習慣化しませんよね。


そこで参考にしたいのが園や学校のシステム。まず始めやすいのは、起床時間やごはんの時間、就寝時間にチャイムを鳴らすことです。大事なのは、親が干渉しすぎないこと、そして粛々とチャイムに従って行動することです。初めは従わない子どもも、チャイムという基準があることで自分の行動を振り返れるようになります。慣れてきたら、遊ぶ時間や勉強する時間なども設定しましょう。


また、子どもが自主的に着替えたり、片付けができたりするよう、家の中の物を必要最小限にして、どこに何があるか分かるように収納することもおすすめです。小さい子どもの場合、マークや色を使って仕分けると覚えやすくなりますよ。

そもそもしつけが必要な場面か?

叱らない育児という考え方もありますが、明らかに悪い習慣や周囲に迷惑をかけるような言動についてはやはり厳しいしつけが必要でしょう。しかし、子どもの発達段階や状況によっては、しつけをしてもあまり効果がないケースもあります。


例えば、子どもが大人の注意も聞かずにふざける場合、叱り続けると逆効果になることがありますね。原因はさまざまですが、もしかすると園や学校で頑張りすぎていて、プライベートではわがままに振舞いたくなるのかもしれません。しかし周りに迷惑をかける状況を放っておくと、子どもが迷惑をかけたことを自覚したときに自尊心が傷つくおそれもありますから、うまく隔離するなどして本人の気が済むのを待ちましょう。ここは甘えさせるべきか、けじめをつけさせるべきかを考え対応することで、ここぞというときのしつけの効果も高まります。

普段から無理のない生活を

普段から無理のない生活を

どうしても見逃せない言動があって厳しくしつけをする場合は、大人が落ち着いてきちんと子どもと向き合う必要があります。まずは子どもとの生活の中でゆとりある環境が整っているかどうかを振り返ってみてくださいね。

頑張り屋さんは効率化を図って

頑張り屋の人は、生活の時間的・経済的余裕をギリギリまで削ってしまいがちです。子どもは大人の状況を察しますから、どうせ自分に意識を向けてくれないと反発し、結果的にしつけがエスカレートしてしまうかもしれません。何かあった時でも余裕をもって対応できるように、生活を圧迫しているのは何かを探り、思い切って効率化しましょう。


なくても困らない買い物を減らしたり、レトルト食品やテレビの教育番組などをうまく活用したりして、子どもと健全な関係が保てることを最優先に生活を組み直すといいでしょう。そしてスキマ時間には無理に予定を詰め込まず、思い切って休憩するようにしてくださいね。

周囲に頼ることの大切さ

子育ては周囲のサポートがあってこそだと言われるものの、状況的に頼るのが難しい場合もありますよね。しかしワンオペ育児状態だと、いざというときに逃げ場がありません。


家族の協力や行政の手厚いサポートを受けられるのが理想ですが、叶いそうにない場合はまずSNSなど自分が抵抗のないところで周囲とつながっていくという方法もあります。一方、しつけのエスカレート防止という意味では定期宅配サービスを申し込むのも手です。少しお金はかかりますが買い物の負担も減らせますし、担当者制なら家庭の状況を気にかけてくれるかもしれません。もし合わなければ解約すればいいので、必要以上に人間関係で悩むこともないでしょう。


精神的な余裕が生まれてきたら、地域の子育てコミュニティに参加してみたり、行政の窓口に相談したりして、困ったときに助けてもらえる周囲との関係づくりができるといいですね。

まとめ

児童虐待は、誰も幸せにしません。過去にはしつけの範囲で体罰を容認する時代もありましたが、今後は子どもへの体罰は認められなくなりました。体罰によらない子育てを実践することで、子どもとのかかわり方への意識が高まり、その他の虐待防止にもつながればいいですね。しつけは子育てのなかでもとくに難しいことですから、一人で責任を負うことなく周囲にも頼り、適切なしつけができる環境を生活の中に整えていきましょう。

    この記事の著者
    戸川琴(peekaboo)
    ライター
    小・中学校担任や放課後デイケア職員としての勤務を経て、現在は子育てをしながら、ライター業も行っています。
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