子どもの上手なほめ方は?やってはいけないNGもご紹介
子どものほめ方の実験
子どもが良い成績をとった時、「さすが、お父さんとお母さんの子、頭がいいね」、「よく頑張ったね」どちらのほめ方をしたほうが子どもに良い影響があると思いますか?
コロンビア大学の心理学者C.ミューラー教授とC.デュエック教授は、公立小学校の5年生の生徒、400人を対象に「ほめ方」の実験として、以下のような4回のテストを生徒に受けさせました。(Mueller, C. M., & Dweck, C. S. (1998). Praise for intelligence can undermine children's motivation and performance. Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 33–52. https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2F0022-3514.75.1.33)
一回目のテスト
子どもたちに簡単なテストを受けさせ、成績にかかわらず「80点以上だった」と伝えました。
その後、生徒を無作為に三つのグループに分けました。
(1)グループ 「頭がいいね」と能力をほめる
(2)グループ 何もほめない
(3)グループ 「よく頑張ったね」と努力をほめる
二回目のテスト
最初のテストより難しいが挑戦すればとても勉強になるテストと、一回目のテストと同じくらい簡単なテストの2種類を用意し、生徒にどちらのテストを解くか選ばせました。
すると、(1)グループの35%しか難しいテストを選ばなかったのに対し、(2)グループの子どもは55%、(3)グループの子ども、すなわち努力をほめられた子どもの90%が難しいテストに挑戦したのです。
「頭がいいね」と能力をほめられたグループの子どもたちは、自分の能力を認めてもらうため、失敗しない簡単なテストを選んでいたのですね。
三回目のテスト
三回目は全員に難しいテストを与えました。難しい問題なので良い結果を残したのはわずかでした。しかし、努力をほめられたグループと能力をほめられたグループでは考え方に違いがありました。
前者は「頑張りが足りなかったから」と考えていましたが、後者は「自分には能力がないから」と思い込んでいました。
四回目(最後)のテスト
最初と同じくらいの難易度のテストを受けさせました。すると、努力をほめられたグループの点数が約30%上がり、能力を褒められたグループの点数は20%も下がったのです。それだけでなく、ウソをつきやすくなることもわかりました。
どういうことかというと、生徒たちに事前に、他の学校に送るが実際に会うこともないし名前も知られないと伝えた後、自己評価をさせ、通知表をつけさせる実験をしました。
すると、能力をほめられたグループの40%が水増しした通知表を作成し、努力をほめられたグループのほとんどが正直に自分を評価していました。
【考察】能力をほめることは、子どものやる気をむしばむ
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?
テストを受ける理由に違いがありそうです。努力をほめられた子どもたちの理由は、「何かを学ぶこと」であったのに対し、能力をほめられた子どもたちの理由は、「良い成績を取ること」にあると考えたのです。
そのため、2回目のテストで悪い成績を取ったときには、「自分には能力がない、努力しても無駄だ!」と考え、モチベーションが下がったと考えられます。
そのため、3回目のテストは難易度が1回目のテストと同じであったにもかかわらず、1回目よりも成績が下がり、それでも認めて欲しいために、自己評価では嘘をつく傾向が高くなったのです。
その一方で、努力をほめられた子どもたちは、2回目で悪い成績を取ったときに、「努力が足りなかったせいだ、もっと勉強しなければ、、、」と考え、より一層努力をするようになりました。その結果、3回目のテストでは、1回目よりも伸びたのです。
この実験からミューラー教授は「能力をほめることは、子どものやる気をむしばむ」と結論づけています。
子どもをほめる時は「頭がいいね」「賢いね」とほめるよりも、「今日は1時間も勉強ができたね」「集中して頑張ったね」というように、もともとの能力ではなく、頑張りや努力、プロセスをほめることが重要であることがわかります。
本来は誰にでも備わっている”試行錯誤しながら学ぶ力”
東京大学の白水始教授(心理学者)は、試行錯誤しながら学ぶ力は、本来は誰にでも備わっていると言います。
子どもは頑張った内容には触れられずに結果だけをほめられると、「パパやママは点数しか見ないんだな」と、学ぶ意欲をそがれてしまいます。
周囲の大人は、点数などの結果だけに注目するのではなく、子どもが取り組んでいる内容や、取り組み方などにも気を配ってあげることが大切です。
「良いほめ方」と「悪いほめ方」例
では、どのような言葉をかければよいのでしょうか?子どもの努力や計画、行動などを具体的にほめるときの言葉がけをご紹介します。
良いほめ方
「頑張ったらできるよ」
「よく頑張ったね」
「一生懸命走ったね」
「最近、集中して取り組めるようになったね」
悪いほめ方
「全然勉強してないのにいい点とるなんてすごいね」
「こんなこと思いつくなんてとっても賢いのね」
「簡単にできるなんて才能あるね」
”結果”ではなく、”プロセス”をほめよう
「賢いね!」と言って子どもをほめると成績を下げてしまうというコロンビア大学の実験結果に、皆さんはどのような感想を持ちましたか?
子どもはほめれば、ほめるほど自己効力感が高まると勘違いしていませんでしたか?そうではなく、ほめかたにもコツがあることがわかりました。
努力やプロセスをほめられることで、子どもたちが難しいことにもチャレンジするようになることには納得がいきます。
うまくいかなかったけれど、プロセスを見ていてくれて、「~~のところまでは、難しいのに良く頑張ったね」といわれると、うれしくなって、次はもっと頑張ってみようという気になります。
親が気をつけなくてはならないこと、それは、ついつい能力やテスト結果をほめてしまいがちになりますが、成功しているうちはまだしも、失敗したときに立ち直れなくなる危険性をはらんでいることを覚えておきたいものです。
小学校低学年では成績が良かった子どもでも、学年が上がるにつれて勉強が難しくなってくると成績が下がってくる子もいます。この時、能力をほめられて育っていると勉強ができないのは自分には能力がないからだと考え、挑戦を避ける傾向が生まれます。
しかも、結果が悪くてもそれを受け入れられず、嘘をつくようになります。さらに、失敗を恐れて緊張して、どんどん成績を落としてしまうという悪循環に陥ってしまいます。
自分は賢いと思いたいあまり、失敗することを恐れてチャレンジする気力を失ったり、努力して結果が出なければ「やっても駄目だ、無駄だ」と無力感を感じてしまうのですね。
本当は努力によって取り戻せるのですが、能力をほめられて育った子どもは努力しようとはしません。成功することしか頭にないので、失敗から学ぶことができず、努力の必要性も感じないのです。そのため成績が下がったときに努力することができずに、立ち直れなくなります。
筆者の知り合いに「お父さんもお母さんも頭がいいのだから、あなたには才能があるはず。できないのはあなたの努力不足!!」と言われ続けた人がいます。
子どもにとってはつらい言葉ですよね。努力は強制するものではなく、親はその言葉を吐きたくても我慢して、子どもの小さな努力でも認めるような言葉がけ、「だんだん落ち着いて勉強できるようになったね」「一生懸命やってるね」などと言ってあげて欲しいと思います。
とはいえ、自分の子どもを冷静に観察してほめることは親として本当に難しいことです。orioriユーザーの皆さんも、ぜひ、この難題に挑戦してみてくださいね。