ハイハイをしない赤ちゃん「シャフリングベビー」とは?発達への影響はあるの?
シャフリングベビーとは?
赤ちゃんの成長は、
- 生後3~5カ月ごろに首座り
- 生後5~6カ月ごろで寝返り
- 生後8カ月ごろにお座りの安定
- 生後7~9カ月ごろにハイハイ
- 生後8~11カ月ごろでつかまり立ち
- 1歳ごろに伝い歩き
- 1歳~1歳6カ月で一人歩き
という流れで発達していくのが一般的です。
シャフリングベビーとは、ハイハイを始めるころになってもお座りの姿勢まま、膝をすってお尻をずらして移動する赤ちゃんを指します。
シャフリングベビーという言葉の由来は英語の“shuffle(シャッフラー)”という「引きずって歩く」という意味から来ており、座ったまま前進する子を示す「いざりっ子」とも呼ばれています。
また、シャフリングベビーは非常に軽度な下肢の筋緊張低下により歩行開始に遅れが出るといった傾向があり、その他にも以下のようなものが特徴としてあげられます。
シャフリングベビーに見られる特徴は?
見られる特徴は、座ったままずるずる移動してハイハイをしないことや、成長がゆっくり以外に、下記の特徴があります。
- 座ったまま前進する以外の発達には問題がない
- 両脇を抱えて持ち上げたとき、股関節を曲げて足の裏を地面につけるのを嫌がる
- うつ伏せになるのが嫌い
- 足を使う遊びや運動を嫌がる
- 寝返りが苦手。もしくはしようとしない
- つかまり立ちや歩き始めの成長速度とがゆっくり
これらが当てはまる場合はシャフリングベビーの可能性があります。
シャフリングベビーと診断されると、今後歩けるのかなど心配になるかもしれません。しかし、普通に歩けるようになるケースが多いので特別な治療はせず、経過観察中にマッサージをするなどの指示のみされる場合が多いです。
ただし、以下のような兆候が赤ちゃんに見られる場合には専門家による診察を受けた方が良いでしょう。
こんな兆候が見られる場合は専門機関に相談を
必ずしも病気が原因でシャフリングベビーとなるわけではありませんが、心配な人は専門家に相談するのもひとつの手です。
病気の早期発見や治療ができるように、以下が当てはまる場合には専門家を尋ねてみてもいいでしょう。
- 母乳やミルクののみが悪い
- 抱っこするとぐらぐらする、首の座りが悪い
- 言葉の理解が遅い
- 手指の発達が遅い
- 目線を合わせない
- 表情の発達が乏しい
- あまり笑わない
このような兆候が見られた場合、筋肉の異常により筋力の筋緊張の低下や呼吸障害を引き起こす先天ミオパチーや脳性麻痺、発達障害や知的障害などの可能性もあげられます。あまり不安になりすぎないように、まずはお医者さんに相談しましょう。
シャフリングベビーになる原因って何?
さまざまな諸説がありますが、シャフリングベビーの原因は医学的に解明されていません。(参考:1歳6カ月児健診におけるshuffling babyの疫学的調査)
その中の1つは遺伝で、シャフリングベビーの40%は、かつて親や兄弟もシャフリングベビーだったという報告があります。(参考:あいち小児保健医療総合センター 乳幼児健診の実際)
その他、シャフリングベビーは5~9月生まれに多く見られるという調査報告もあります。(参考:1歳6カ月児健診におけるshuffling babyの疫学的調査)
5~9月生まれの赤ちゃんは、成長過程でうつ伏せや寝返りが始まる時期が秋~冬ということもあり、厚着のため運動がしにくいのが原因ではないかと言われているのです。
シャフリングベビーになったのは親のせいと感じる人もいるようですが、医学的にも解明されていないため自分やパートナーを責める必要はありません。ママパパにできる以下の対処法をして赤ちゃんの成長を見守りましょう。
シャフリングベビーの対処法ってあるの?
以下の対処法を行ったからと言って、必ずしもシャフリングベビーでなくなるわけではありません。しかし足を刺激することで発達を促すことには繋がるかもしれません。
ベビーマッサージ
多くのシャフリングベビーは足をつけたりすることを嫌がります。ベビーマッサージをすることで足の発達を促しましょう。
太ももから足の先にかけて優しくなでるように触ってあげると赤ちゃんも気持ち良くなります。肌の乾燥を防ぐためにベビーオイルなどのマッサージオイルを使っても良いかもしれません。
ママと赤ちゃんの大切なスキンシップタイムとなり絆も深まりますよ。
足の曲げ伸ばし運動
足が緊張している状態のときに、足をつけたがらないことは珍しくありません。足に刺激を与えることで、足を動かすことを意識させましょう。
やり方は、無理な力を入れず優しく関節を曲げる、伸ばすの作業を繰り返します。途中で足首をくるくると回してみるのも良いでしょう。赤ちゃんが自分の手や足と認識するきっかけにもなります。おむつ替えのときなどに実践してみてください。
保育園に通っている場合はクラスの先生にも協力を仰いでみましょう。
赤ちゃんの左右や背後から声掛けをする
お座りの姿勢から他の姿勢に変えることを避ける傾向があるシャフリングベビー。左右や背後からママパパが声を掛けると、方向転換をするため手を使う頻度が増えます。
これにより、赤ちゃんは身体の重心を左右に傾けるコツを掴み、いつのまにか四つん這いができるようになり、四つん這いからお座りの姿勢になることに慣れていくでしょう。
ハイハイしやすい環境を作る
床に物が散乱している状態ではハイハイもできません。
きれいに片づけてハイハイできるように広いスペースを確保してください。布団の上はやわらかく、足が取られやすく動きにくいので、プレイマットの上や畳などある程度硬さのある床で練習するのがおすすめです。
また、お手本としてママパパがハイハイするところを見せてあげると、赤ちゃんが真似をしてくるかもしれないので試してみましょう。
このようにハイハイしやすい環境を整えたり、足の運動をしたりすることで改善への期待が持てます。何もやらないよりはできることを実践してみましょう。さらにママパパにも気をつけて欲しい点があります。
ママ・パパが気をつけることは?
シャフリングベビーと診断されて不安な気持ちになることもあるかもしれません。しかしママパパは赤ちゃんと普段通りに接することが大切です。これらに気をつけることで赤ちゃんが伸び伸び成長してくれます。
無理にハイハイをさせない
ハイハイをしないからといって焦って、無理矢理ハイハイをさせないようにしましょう。赤ちゃんにとっても、ママパパにとってもストレスとなりいいことはありません。強制的にさせるのではなく、自然にハイハイできるように遊びの中に取り入れて誘ってみましょう。
過度に心配をしない
シャフリングベビーだからといって心配しすぎも良くありません。ママパパが過剰に心配すると赤ちゃんにも不安が伝わってしまう可能性が。赤ちゃんの成長は人それぞれです。どんと構えて温かく見守ってあげましょう。
これらに注意して赤ちゃんにストレスを与えることなくママもパパも過ごしたいですね。
シャフリングベビーを育てたママの体験談!
シャフリングベビーを育てたママからこんな体験談を聞くことができました。
そのママの赤ちゃんは成長がゆっくりめで首座りが遅く、3カ月検診では母子手帳に「要観察」のハンコを押されたのだとか。
その後、生後7カ月でお座りができるようになったものの、ずりばいやハイハイはせず、座ったままの状態でお尻で移動をし始めたそうです。
10カ月検診ではシャフリングベビーと診断。
保育士さんのすすめで療育センターを受診し、専門家のアドバイスから家や保育園で足の曲げ伸ばし運動やマッサージを続けた結果、1歳3カ月ごろには一人歩きができるようになったそうです。
その後は成長面で気になる点はなく、現在は中学2年生。陸上部で元気に走り回っているそうですよ。
この話を聞くと安心しますよね!
さいごに
シャフリングベビーと診断されて、不安になったり自分を責めたりしてしまうママパパもいるかもしれません。しかしシャフリングベビーも赤ちゃんのひとつの個性。親のせいでもなければ誰のせいでもありません。心配しすぎず、ゆっくりと成長を見守ってあげましょう。ただし注意しなければならない兆候が見られた場合や、どうしても不安で気になってしまうという人は、ママパパだけで抱え込まず専門家の診断を受けて悩みを和らげてくださいね。
参考
あいち小児保健医療総合センター「乳幼児健診の実際」p.113
http://www.achmc.pref.aichi.jp/sector/hoken/information/file/screening_manual/manual09.pdf
厚生労働省「乳幼児健康診査事業 実践ガイド」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000520614.pdf
国立成育医療研究センター「乳幼児健康診査身体診察マニュアル(平成30年3月)」
https://www.ncchd.go.jp/center/activity/kokoro_jigyo/manual.pdf