イギリス教育を受けさせたい人必見！英国教育の制度やイートン校への入り方は？

ライター　村田美子

2023/07/14 03:07

読者の皆さん、こんにちは。英国の教育制度は、私たち日本人には少しわかりにくいのですが、この記事では、英国の教育制度を公立学校とインディペンデント・スクール（パブリックスクールと呼ばれる私立校）に分けて、わかりやすくご説明します。EU離脱が留学に与える影響も考えてみましょう。

英国の教育制度の概説
イートン校に入るための小学校とは？
EU離脱で変わる？国際色豊かな英国教育
さいごに

英国の教育制度の概説

英国はイングランド・アイルランド・ウェールズ・スコットランドからなります。日本では英国を一くくりにイギリスと一般に呼びますが、英国の教育は、地域によっても、また、公立学校か私立学校かによっても異なっているため、その仕組みは複雑です。

この記事ではイングランドの公教育と私立教育に焦点を当てます。どちらもナショナルカリキュラムという、日本でいう学習指導要領に沿った教育が行われます。

就学前教育（3歳〜4歳）

3歳から4歳まではNursery（ナーサリー／保育園）に通ったり、小学校の中に設置された幼児クラスに行きます。週5時間までは国の補助金が出ますが、それ以上預けると費用が別途に掛かります。義務教育ではありません。

レセプション（4歳〜5歳）

小学校（Primary School)に入る前に、準備期間として、レセプションが1年間あります。レセプションは義務教育ではありませんが、無償で、小学校の中にあります。このシステムが日本にもあると嬉しいですね。

義務教育

義務教育は5歳から18歳までで、公立校と私立学校があります。詳しく見てみましょう。

イギリスの公立校

公立校は学区が決まっていますが、学区によってレベルに差があり、保護者にとっては悩みの種です。公立の中でも特にレベルの高いグラマー・スクールと呼ばれる進学校もありますが、数が少なく難関です。

次にあげる初等教育・中等教育が義務教育で、日本のように学年制ではなく、2～3学年をひとまとめにしたキー・ステージ(Key Stage)制です。

Key Stage 1 Year 1〜２（５歳〜７歳）

Key Stage 2 Year 3〜６（８歳〜11歳）

Key Stage 3　Year 7〜9 （12歳〜14歳）

Key Stage 4　Year 10〜11　（15歳〜16歳）

各ステージの終わり、すなわち11歳、14歳、16歳で「Key Stageテスト」を受けます。そして、16歳からの2年間の教育はシックス・フォーム（Sixth form）と呼ばれており、一般教育修了上級レベル（Aレベル）や、それと類似したBTEC、国際バカロレア、 Cambridge Pre-Uなどのディプロマ取得のために勉強します。大学進学を希望しない生徒は職業コースの継続教育カレッジに行きます。

実は2016年まで義務教育は16歳までだったのですが、若者の失業率が高く、ニートの問題もあったため、18歳まで義務教育が引き上げられました。

英国では、次にご紹介する全寮制の私立学校（インディペンデント・スクール）や、オルタナティブスクールの一つであるホームスクーリングも合法です。

パブリック・スクールって？

イートン校に代表されるパブリック・スクール(public school)は、最近はインディペンデント・スクール（independent school,独立学校）と呼ばれることが多いです。

パブリック・スクールの教育は18歳までですが、開始年齢は11～13歳の間であることが多く、ちなみに13歳から入学できるイートン校などに通う生徒は全生徒中6.5％で、公立校からも入学しています。

私立校なのに、どうしてパブリックと呼ばれるの？と疑問を持つ読者も多いことでしょう。歴史を見ると、教会やギルドが優秀な人材を育てるために裕福でなくとも、無償で学べる場を与えるために学校を開いたのが始まりです。

そこでは、選ばれた子どもたちのみが教育を受けることができ、やがて、費用さえ出せば一般に門戸を開く、すなわち公（パブリック）に入学できる学校となり、現在のような富裕層の子弟の学びの場になっていきました。5年間の学費は2500万円ともいわれます。

イギリスの私立学校には小学部や幼児部からあるところもありますが、イートン校には小学部はなく、入学は中学校の13歳からです。

入学のための応募は8歳から12歳まで可能で、子どもが9歳になったら学校訪問もできます。イートン校の入学条件は学校での成績はもちろんのこと、音楽などの芸術やスポーツなどに秀でていて、将来イートン校に貢献してくれる生徒は優遇される場合があります。

試験、面接、コンピューターによる知能テストがあります。母語が英語でない生徒も応募できますが、高い英語の読み書き能力が求められ、小学校から受験準備が必要です。日本人の子どもがパブリック・スクールに入るためには、次でご紹介する受験準備校に入るのが早道のようです。

イートン校に入るための小学校とは？

イギリスの私立学校だけでなく公立学校からでも、海外の小学校からでもイートン校に行けます。実際、去年イートンに入学した250人のうち、公立学校や海外の学校を含む114の小学校から入学していて、国際色豊かです。

イートン校自体もイートンに入る前にどの小学校に行けばいいのか公にすすめている学校はありません。

けれども、普通イギリスでイートンなどの名門パブリック・スクールに入るために検討される学校には次のようなところがあります。

・サマーフィールズ Summer Fields, Oxford

・ラドグローブ Ludgrove, Wixenford

・コットヒルハウス Cothill House, Abingdon

・ドラゴンスクール Dragon School, Oxford

・カルディコット Caldicott, Farnham Royal

EU離脱で変わる？国際色豊かな英国教育

ご存じのように、最近、英国のEU離脱が確定しました。学費の変化でヨーロッパをはじめ、海外からの留学生が減る？とも懸念されています。

国際色豊かだった英国の教育が変わるのは残念ですが、特に高等教育では、それが顕著に表れると思います。

現在、多くのイギリスの大学では、学生の国籍により学費が異なります。一般的には、イギリス国籍の学生(Home Student)とEU加盟国の国籍を持つ学生(EU Student)の学費は同じ額で、それ以外の国籍の学生(Oversea Student)は割高です。それがイギリスのEU離脱によって、EU StudentとOversea Studentの学費が同額になる可能性があるのです。

そうなると、EU加盟国の国籍を持つ学生にとって、イギリスで学ぶ魅力が激減してしまいます。この結果、ヨーロッパからの留学生が減ることが考えられます。

実際、アンケート結果がその懸念を如実に表しています。国際教育の情報機関ICEF Monitorはイギリス留学中・もしくは出願中のEU学生のうち約半数にあたる47％が、EU離脱となった場合、イギリスはもはや魅力的でなくなるとの回答結果を報告しています。（2016年）

参考：ICEF Monitor “Brexit could discourage international students from choosing UK” 2016

EU加盟国からの学生たちが「英国留学が魅力的でなくなる」と回答した理由は、EU学生の学費の点だけでなく、ビザ優遇策による卒業後の就職・移住の自由度がなくなるためです。

さいごに

英国の教育制度について、ご説明しましたが、ナショナルカリキュラムなど日本との共通点も多いですね。「お受験」もあるようです。日本よりもっと学歴社会、資格社会といえそうです。

国際バカロレアなど生涯有効な試験に比重が置かれ、学力重視の度合いが非常に高く、出身校はもちろん、資格を履歴書などに書き、重要視されています。そのため、成人後に改めて資格を取ることで、再就職の道を開くことも可能になっています。

EU離脱が決まった今、国際色豊かだった英国の教育が今後どうなるのか少し心配でもあります。

この記事の著者

【ライター・コラムニスト】神戸市外国語大学を卒業後、京都府立高校で英語教師として勤務。その後、40歳で米国ジュニアタ大学に留学し、平和学を専攻。続いてオハイオ州立大学　教育学部　修士取得、博士課程、単位取得。帰国後、関西外国語大学にて教授。時事、カルチャー、政治経済、幼児教育～社会人教育まで多岐にわたる分野で記事執筆。20年間インドのアウトカーストの子どもたちの教育支援を行っている。 2018年、インド支援の一環として出版社、Murata Publisherを立ち上げる。著書に東洋経済新報社より「クリティカルシンキング　基礎編」「クリティカルシンキング　実践編」「誰も知らなかったインド人の秘密」、Murata Publisherより電子本39冊出版。

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