ぼーっとすることが知育に必要な理由。得た知識を整理するDMNとは？

ライター　村田美子

2021/04/12 19:04

今の子どもたちは放課後もスポーツや習い事で忙しい毎日を送っています。「頭のいい子ほど家でダラダラしている」「夕食後は、ダラダラさせましょう！」と言われたら、お母さんたち驚いてしまいますよね。ここでは、DMNという研究結果をお伝えし、なぜ夕食後はダラダラがよいのか、納得してくださいね。さあ、今から「もう、ダラダラしてないでシャキッとしなさい！」は禁句ですよ！

休む間もなく忙しい子どもたち
DMNって？
さいごに

休む間もなく忙しい子どもたち

ベネッセ教育総合研究所が2013年に「子どもたちの放課後の時間の過ごし方」について詳しく調査しました。　その結果、51.2%の小学生が忙しいと感じています。そして「もっとゆっくり過ごしたい」と答えたのが74.2%もいたのには、ショックを受けました。5年前に比べ、5.3%も増えていたのです。

また、平日の放課後に学校の宿題をする時間は平均で43.1分、学校の宿題以外の勉強時間は33.8分でした。それにプラスして塾や習い事の時間も加わるため、子どもたちは学校が終わってから夜寝るまでの間は、休む間もなく忙しく過ごしている様子が、アンケート結果からわかります。

次に、脳科学の観点から脳を休ませる効果についてお話ししましょう。

DMNって？

最近の研究で、ぼんやりしているときにも脳は活動していることが明らかにされました。それは、「デフォルト・モード・ネットワーク（DMN）」と呼ばれるのですが、この脳の活動によって、外部からの刺激をシャットアウトします。そして、ぼーっとすることで、今までに蓄積した知識を前頭葉にたぐりよせる訓練になるというものです。

デフォルトは「安静」という意味で、DMNを簡単に言うと、何もしていない時も脳が活発に動いている領域（ネットワーク）があるということです。デフォルト・モード・ネットワーク（DMN）は、ワシントン大学のM・E・レイクル教授によって名づけられましたが、同教授によると「仕事をしたり勉強をしたりといった意識的な活動をしているときに消費するエネルギー量は、脳全体の5%程度。残りの95%のうち、20%は脳細胞のメンテナンス、75%はボーっとしているときの活動にあてられている」そうです。

精神科医、樺沢紫苑医師も

DMNによってインプットされている情報が整理されるので、アイデアが生まれやすくなるのは、ぼーっと過ごす時間だ

といいます。

テレビやパソコンの画面を眺めているだけでは脳の休憩にはなりません。子どもの思考力や想像力を育てるには、外からの刺激がない状態でぼーっとすることが大切ですね。

筆者の経験で恐縮ですが、旅先でボーっと景色を眺めて過ごした後や、庭に出て季節の花を眺めたり、散歩をした後に妙案がふっと浮かんだ経験を何度もしています。きっと読者の皆さんも同じ体験をされたことがおありでしょう。

環境心理学ではDMNの役割として以下の3つをあげています。それは、「自己認識、見当識、記憶」です。自己認識とは、自分自身について考え、自分はこういう人間だと考えることをいいます。自分を深く見つめるということですね。見当識とは、自分が置かれている状況を把握すること、自分は今、どこで、何をしているのかという立ち位置を確認することです。記憶は自分が経験したことや学んだことを整理することです。

さいごに

親が良かれと思って、子どもに数多くの習い事をさせても、ただルーティンでこなしているだけでは意味がありませんね。この記事では、何もしていない時も脳が活発に動いている領域があるというDMNについてお伝えしました。子どもの想像力や思考力を育てるには、ダラダラしたり、ぼーっとすることが大切のようです。たまには親子でのんびりダラダラしてみることも、悪くありませんね。

この記事の著者

【ライター・コラムニスト】神戸市外国語大学を卒業後、京都府立高校で英語教師として勤務。その後、40歳で米国ジュニアタ大学に留学し、平和学を専攻。続いてオハイオ州立大学　教育学部　修士取得、博士課程、単位取得。帰国後、関西外国語大学にて教授。時事、カルチャー、政治経済、幼児教育～社会人教育まで多岐にわたる分野で記事執筆。20年間インドのアウトカーストの子どもたちの教育支援を行っている。 2018年、インド支援の一環として出版社、Murata Publisherを立ち上げる。著書に東洋経済新報社より「クリティカルシンキング　基礎編」「クリティカルシンキング　実践編」「誰も知らなかったインド人の秘密」、Murata Publisherより電子本39冊出版。

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