イマ―ジョン教育とは？バイリンガルに育てるための教育法

ライター　村田美子

2021/04/04 00:04

我が子には英語を自由に話せるようになってほしいと願う親は多いでしょう。早期英語教育で気をつけなければいけない点として、セミリンガルになってしまう例があります。コミュニケーションはとれても、自分の考えを明確に伝える言葉を持てないことは大変困った状態です。この記事ではバイリンガル・セミリンガルについて、社会言語学や発達心理学の観点からエビデンスをご紹介します。さらにイマ―ジョン教育を行っている加藤学園についてご紹介しましょう。

バイリンガルとは？
セミリンガルとは何か？
セミリンガルになる危険を避けるには？
イマ―ジョン教育って？加藤学園のこと

バイリンガルとは？

二か国語を自由に話し、状況に応じて二つの言語を自由に使う能力をもつこと・人です。必ずしも同レベルである必要はありません。

「英語と日本語」や「中国語と日本語」など、2ヵ国語が話せることを「Bilingual（バイリンガル）」と呼びます。

ビジネスの世界では「グローバル人材」といったテーマを話し合う時に、よく一緒に耳にすることが多いかと思います。

そもそも、言葉の語源をたどると、「Bilingual（バイリンガル）」の「Bi」とは、ラテン語の「2」という意味です。そのワードに「言葉」という意味の「lingual」が合わさることで、「Bilingual」という言葉が作られました。

ちなみに2か国語以上話す人のことを、3ヶ国語は「Trilingual」（トライリンガル）、4ヶ国語は「Quadrilingual」（クァドリンガル）、5ヶ国語は「Pentalingual」（ペンタリンガル）と呼びます。ただし、3ヶ国語以上はいちいち個別に言うのではなく、「多言語」「Multilingual」（マルチリンガル）とまとめて呼ばれることも多いです。

セミリンガルとは何か？

セミリンガルは、リミテッドバイリンガル（限界がある、限定的なバイリンガルという意味）や、ダブルリミテッド（二重に限界を背負った、どちらもダメという意味）とも呼ばれます。セミリンガルは二か国語をしゃべることができますが、両方とも言語能力が一定のレベルに達していなくて、抽象的な概念や思考ができない状態をいいます。

いわば、片言しかできず、その言葉を用いて高等教育を受けることは難しいです。どのようなケースでセミリンガルが見られるかというと、幼稚園の年少の途中から現地（海外）の学校に行くと、それまでの日本語の力がかなり落ち、将来的に日本語の学校に戻った時、授業についていけず、学力が低くなりがちです。そして、英語も途中までしか教育を受けていないので、英語でも周りより学力が低くなることになります。

左の二つはバイリンガルの例を表し、右の二つはセミリンガルの例を示しています。

セミリンガルになる危険を避けるには？

専門家の間では、外国語の学習は思考の言語（学習言語力）が母語によって確立されてから（だいたい10歳前後）が効率がよいとされています。バイリンガル教育の理論的基礎を築いた心理学者ジム・カミンズ氏（Jim Cummins）は、「子どもの第二言語能力は第一言語能力によって決まってくる」と結論付け、さらに「母語以外の言語によってイマージョン教育を受けることは効果的である」と主張しています。イマ―ジョン教育とはどのような物なのか、次に見てみましょう。

イマ―ジョン教育って？加藤学園のこと

一般教科を外国語で学ぶ外国語指導方法の一形態です。新しく導入される言語を使って学習し、その言語を習得するというものです。イマ―ジョン教育の第一人者であるマギル大学のFred Genesee氏は、Learning Through Two Languages: Studies in Immersion and Bilingual Education（1987, Newbury House）において、イマ―ジョンを次のように定義付けています。

概して、一年間にわたって少なくとも指導の50%を第二言語を通して指導するプログラムをイマ―ジョンとみなす。

イマ―ジョンプログラムでは、数学や理科、社会、他の教科を第二言語で指導します。小・中・高校を通してイマ―ジョン環境を続けることが大切です。すなわち、イマ―ジョン教育では、第二言語は教科ではなく、むしろ、学習内容を学ぶ手段で、内容重視の授業形態ということですね。北米ではLambert & Tucker (1972); Swain and Lapkin (1982); Genesee (1983, 1987, 1995); de Courcy (1993); Baker (1996)などのイマージョン教育研究が有名です。

では、日本で実際に幼稚園から高校までイマ―ジョン教育を行っている加藤学園の様子をみてみましょう。加藤学園幼稚園は、1967年、学校教育法に定める私立幼稚園として創立されました。英語イマ―ジョンプログラムの園児は、一日の約50%を英語母語教師と英語環境で過ごします。

現在、年少から年長まで6クラス（各クラス約22～25名）あり、クラス担任はバイリンガルの日本人教師と英語ネイティブ教師の二人体制です。運動会やコンサートなどの幼稚園全体の行事、遊んでいる時間、保育時間、ランチ時間など日常生活の中で英語に触れています。このように、加藤学園の幼稚園英語イマ―ジョンプログラムでは、子どものバイリンガル能力の育成と異文化理解を進めて行く自然な入り口となっています。

筆者がアメリカに留学中、土曜学校（現地に住む日本人の小中学生が通う日本語学校）を手伝ったことがあります。そこで12歳のA子ちゃんに出会いました。幼児の時、海外赴任の親と渡米して9年。日本語が育っていなくて、授業中、うつろな目をしていたのが思い出されます。この記事では、人間には考えるための言葉が必要であることをお伝えしました。「A子ちゃんの母語は英語だったのだろうか？その後、日本に帰ったと聞いたけれど、どんな人生を歩んでいるのだろう？」　いろいろなことが思い出されます。

加藤学園について、詳しく知りたい方は、下記リンクからご覧ください。

加藤学園の詳細はこちら

インターナショナルスクールとの違い、母語保持、アイデンティティーのことなどが書かれています。

この記事の著者

【ライター・コラムニスト】神戸市外国語大学を卒業後、京都府立高校で英語教師として勤務。その後、40歳で米国ジュニアタ大学に留学し、平和学を専攻。続いてオハイオ州立大学　教育学部　修士取得、博士課程、単位取得。帰国後、関西外国語大学にて教授。時事、カルチャー、政治経済、幼児教育～社会人教育まで多岐にわたる分野で記事執筆。20年間インドのアウトカーストの子どもたちの教育支援を行っている。 2018年、インド支援の一環として出版社、Murata Publisherを立ち上げる。著書に東洋経済新報社より「クリティカルシンキング　基礎編」「クリティカルシンキング　実践編」「誰も知らなかったインド人の秘密」、Murata Publisherより電子本39冊出版。

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