小学校で教科担任制が始まる?教科担任制のメリットとデメリット
教科担任制とは?
教科担任制とはそもそもどういうものなのでしょうか?小学校では、ひとりの担任がほとんどの教科を指導する「学級担任制」が主流です。一方教科担任制では、中学校や高校などのように、ひとりの教員が担当する特定の科目を複数の教室で指導します。
それでは、どうして小学校に教科担任制導入の動きが出ているのでしょうか?
小学校への教科担任制導入の動きと内容
文部科学省では、2022年度(令和4年度)より小学校高学年からの教科担任制導入に向けた具体的な取り組みを進めています。ただし一度にすべての学校で教科担任制を取り入れるのは難しいことから、数年をかけて徐々に移行していくことになるでしょう。
また教科担任制導入に伴い、2022年度より年間950名、4年で計3800名程度を目安に教員を増加させる方針だといいます。当初はより多くの人員増加を計画していたそうですが、予算の都合上、上記の人数に落ち着いたのだとか。
導入の目的は?
小学校高学年への教科担任制導入には、大きく以下の4つの目的があるといいます。
1.学力向上
2.複数の教員による細やかな指導の実施
3.「中1ギャップ」緩和
4.教員の働き方改革
教科担任制によって一人の教員が特定の教科を専任することは、授業の質の向上につながり、それによって子どもたちの学力の向上も期待できるでしょう。またひとりの教員だけでは見落としてしまいがちな問題点も、複数の教員がかかわることで把握しやすくなるかもしれません。
小学校から中学校へ進学する際、指導方法の違いに戸惑い、中学校に上手く馴染めない子どもも少なくないといいます。小学校高学年から中学校のような教科担任制を経験することで、スムーズに中学校に馴染みやすそうですね。
また教員にとっても、担当する教科が少なくなることで、授業の準備などの負担が軽減されるかもしれません。
どうして高学年から?
教科担任制は、どうして低学年からではなく高学年から導入されるのか気になりますよね。低学年のうちは各教科の専門性が低いこと、また授業に慣れていない子どもにとって一日に複数の教員の授業を受けるのは混乱を招く可能性があることから、低学年では教科担任制はデメリットが大きいと判断されたようです。
学校の授業に慣れ、教科の専門性が高まる高学年が、教科担任制を導入する良いタイミングだと考えられているのでしょう。
担任はいなくなるの?
教科担任制を導入したからといって、担任がいなくなるわけではありません。学級担任は自分が担当する教科のほか、道徳や総合など専門の教員がつかない教科も担当する形が多いようです。
どの教科が対象になるの?
ひとりの教員が複数の教室で授業を行う教科は「専科」と呼ばれますが、すべての教科が専科になるわけではないといいます。文部科学省によると、小学校高学年の専科に選ばれるのは、理科や算数、外国語、体育といった専門的な授業が求められる教科が優先されるそうです。
導入している学校はある?
あまり知られていませんが、実は小学校高学年で教科担任制を取り入れている学校はすでにいくつもあるようです。兵庫県では2018年度から469校を対象に教科担任制が始まり、ひとりの教員が2~3教科を担当しているといいます。
また北九州の一部の小学校では、教科担任制度に加え、中学校の教員が小学校で学級担任を持つという画期的な取り組みが行われているのだそうです。小学校の教員資格がないため、一部の授業を担当できないというデメリットはありますが、小学校と中学校の連携がとりやすいという点は大きなメリットといえるでしょう。
教科担任制のメリット・デメリット
小学校高学年から教科担任制を取り入れると、どのようなメリット・デメリットが考えられるのでしょうか?
メリット
学級担任制の場合、学校で子どもが関わる教員は主に担任だけですが、教科担任制だと複数の教員が日常的に子どもと接することになります。子どもによっては担任の教員との相性が悪い場合もありますが、担任以外の教員と気軽に話をできるようになると、学校での不安などを相談できる場所が増えることでしょう。
また教員にとっても、担当する教科が減ることで負担が軽減され、より専門にする教科の授業の質を高めることができるはずです。また複数のクラスを同じ教員が担当することで、クラスごとの授業の進捗や内容の差を減らせる点もメリットといえそうですね。
小学校高学年から中学校の授業形態に慣れておくことで、進学後の環境の変化を軽減できるという利点もあります。
デメリット
教科担任制になると担任の教員がクラスの生徒と接する時間が減ることから、子どものささいな変化に気づきにくくなる可能性が懸念されます。また時間割を学年全体で管理することが求められるため、学校行事などによる変則的な時間割の変更の際に不備が生じやすくなる場合も。
また教科担任制に移行するには、現状よりも多くの教員が必要になるといわれていますが、教員不足の昨今、人手を確保することが難しいかもしれません。さらにひとりの教員が複数の学年を担任する場合もあるため、教員の負担が増えてしまう可能性も否めません。
さいごに
教科担任制には多くのメリットがある一方、懸念点も少なくありません。これから教科担任制が広まっていく中で、こうしたデメリットに対してどのような対処がとられていくのか、動向を見守りたいものですね。
また導入の内容は自治体や小学校によっても大きく異なるため、自分の子どもの通う小学校ではどのように教科担任制が導入されるのか、学校側の説明を聞き逃がさないよう注意しましょう。