戦争の話を子どもとしよう。パパやママの注意点やポイントは?
子どもと戦争の話をするときに大切にしたい5つのポイント
画面越しからでも目に入る現実に、子どもはどんな想いをいだいているのでしょうか。「戦争の意味もよくわかっていない」そう思われる親御さんもいるかもしれません。しかし、年齢に関係なく子どもの想いを大人が受け止めてあげることで、子どもなりの解釈で、思いもよらない話が聞ける機会でもあるのです。
子ども支援専門のNGO団体「セーブ・ザ・チルドレン」が戦争について子どもと話すときの5つのポイントについてまとめたものを発表しています。こちらを参考にして、詳しく紹介していきましょう。
ポイント1.子どもが歩み寄ってきたら、耳を傾けてあげましょう
まずは、少しの時間でも子どもと話す機会をつくるよう意識しましょう。少しずつの積み重ねで、やがて子どものほうから歩み寄ってくることも。子どもが何を考えて、どんな想いをもったのか、大人はそっと耳を傾けてあげてくださいね。
”戦争”は、子どもと話すテーマとしては若干重めなものですが、そのようなお話をするためにもまずは子どもたちと話をする基盤を整えていきましょう。
ポイント2.話をするときは、子どもに合わせて
戦争の話をするときは、子どもの年齢に合わせたコミュニケーションをとってあげることが大切です。そのためには、子どもが不安にならない言葉を選んであげましょう。年齢の低い子どもには「自分の国を守るために戦わなければならないこともあるんだ」ということが伝われば十分です。子どもが大きくなるにつれて理解力もつき、戦争がどういうものか、その危険性もわかってくるかもしれません。心配や不安にならないように、大人がフォローしてあげましょう。
ポイント3.子どもの気持ちをまず受け止めてあげましょう
子どもが、会話の中で「しっかり話を聞いてくれている」と感じることが大切になります。子どもが想いを素直に話してくれているということは、大人に対して安心感を抱いている証拠です。
ポイント4.子どもを安心させてあげましょう
子どもには、今大変なことがおこっているけれど、大人が問題解決するために一生懸命努力していると伝えてあげてください。「いつも通りお友達と遊んで、楽しいと思えることをたくさんしてね」と言ってあげましょう。子どもが不安に感じることがないよう、子どもと話をするときは、落ち着いて対応してあげることが大切です。
ポイント5.子どもの希望であれば、現実的な手助けをしてあげましょう
子どもが「なにかできることをしたい」と望むときは、その気持ちを応援してあげましょう。行動にすることで、子どもが「自分も解決に一役買っている」と感じることができるかもしれませんね。募金活動や平和を呼びかける絵を描くなど、子どもでもできることを一緒に探してあげることもおすすめです。
子どもたちが集う学校では「戦争」はどのように話されている?
ここからは、実際の子どもたちの様子をご紹介します。日頃の様子が見られない幼稚園や保育園、小学校での子どもたちはどのような様子なのでしょうか。
休憩時間で話した小学生同士の会話の一場面
ある小学校の休み時間、一緒に遊んでいた子どもに対して「ロシアかよ」などと発言する現場に遭遇。はっきりとした理由はわからないものの、「認知」というカテゴリーの中では、日常会話に出るほど話題となっているのは確かなようです。子どもから戦争について話をしてきたときは、話をしやすいタイミング。大人が時間をつくってあげましょう。
また、「戦争の話」を聞く機会を、大人がつくるタイミングは、子どものペースに合わせることが大切です。
臨床心理士で明星大学心理学部准教授の藤井靖氏は、以下のようにアドバイスされています。
- ニュースを観ながらさりげなく子どもに聞いてあげる
- 大人が「自分の子はこれくらい」など先入観を持たないで聞くことが大事
- 「命の問題」など、テーマをきめてひとつずつ伝えると理解しやすくなる
幼稚園や保育園に通っている子どもたちの場合
東京都中野区にある「アルテ子どもと木幼保園」では、保育中に年長さんと保育士がお話をする時間を設けられています。ウクライナ情勢を踏まえた、興味深いお話です。
”お友達同士でトラブルになったらどうしたらいいと思う? ”
子どもから「ピースルームで話し合いをする」という意見が出ました。ピースルームとは、園内でトラブルになってしまった子ども同士で話し合う部屋の名前のことです。部屋の中では、相手を責めたりたたいたりすることはいけないという約束ごとがあります。暴力ではなく、お互いが話し合うことで解決に導くという園の教えを、子どもたちは身につけていますね。
総括園長である戸塚陽子先生は、以下のように感想を述べられています。
- 子どもはしっかり自分たちの考えを話してくれる
- 大人も驚くほど、今起こっていることを話してくれることもある
- 相手の意見に耳を傾けられる子どもに育ってほしい
ジャーナリストとして働く2児のママがおこなう平和教育とは?
メディアに情報を提供するジャーナリストとして活躍している吉田まゆ氏。私生活では4歳と2歳の子どものママでもあります。幅広い知識を持ち合わせた彼女は、戦争について子どもたちにどのように伝えているのでしょうか。
家庭で平和教育をする際に大切にしていること
平和教育をするうえで、大切にしていることは「将来差別をしない子どもに育てる」ことです。話す優先順位はまず「戦争と平和」の意味を教えることからだと言われています。
【話をするポイント】
・特定の国を悪者にするような説明はしない
・平和に生活できている自分たちの国が、普通ではない国があるという事実を知る
まずは地球儀などを用意して、「国」の場所などを確認させます。そして、「こことここが戦っている」とだけ子どもに伝えます。子どもに教える際は、「中立な立場」で話をすることを大切にしているそうです。
戦隊ヒーローでも戦争に関わってはいけない
戦闘員として徴収されるのは成人男性なのが現状です。もし戦争になったら、パパをはじめ身近な大人の男性と会えなくなるかもしれないこと。「平和な国に住んでいるからこそパパと遊べている」と認識させることで、戦争と平和の違いが理解しやすくなりますね。
また、子どものなかには「戦隊ヒーローになって倒す!」という子もいるかもしれません。そんなときは、ニュースなど見せながら「ヒーローでも倒せないくらいあのおじさんは強いんだよ」と、ヒーローでも解決できないことを説明するのだそう。
また、子どもと話をするときは、根気強くわかりやすく説明することが大切といわれています。そして、小さな子どもは、一度に教えると混乱してしまうため、テーマごとに日にちを分けて教えてあげることを意識しているそうです。
ウクライナ情勢の話題はさけずに子どもと対話の時間をもとう
戦争が人の心に与える影響について詳しい、目白大学保健医療学部の重村淳教授は以下のように話されています。
戦争は、起こっている国だけの問題ではなく、全世界の問題として目を背けることはできない
ウクライナの話題はさけることなく、子どもと大人がしっかりと話しをするなかで、子どもがどこまで状況を知っているのか、また子どもが何を感じ、どのように想っているのかを聞き取ることが重要です。もちろん、大人と想いが同じとは限りません。大人が冷静になって、子どもの意見を聞いてあげましょう。たとえ子どもに聞かれてわからないことがあっても、「大人でもわからないことがある難しい問題だ」としっかり伝えることも、子どもと会話をするうえで大切なことです。
戦争に関する映像や子どもと戦争について話すときの注意点とは?
メディアやSNSなどさまざまな映像が流れる機器など、小さな子どもやトラウマがある人などは注意する点が2つあります。
- 映像を繰り返し観ない環境にする
- 子どもが長時間映像などを観ないようする
テレビなどをつけたままにしていると、無意識のうちに、戦争の映像を繰り返し目にすることになります。テレビなどは、こまめに消すようにすることが大切です。特に発達途中の小さな子どもは、ニュースなどの映像を目にして、危険が迫っていると感じ、より恐怖や不安が増す恐れがあります。チャンネルを切り替える、または、テレビ以外の遊びに誘うなど、大人が配慮することが大切です。
子どもの中には、「日本でも戦争が起こったら」など、不安に思う子どももいるかもしれません。そういうときは、まずは気持ちを受け止めてあげましょう。そして、大人から「大人が解決するから大丈夫だよ」と安心感を与えてあげることが大切です。
子どもがよく聞く質問とその答え方とは?
戦争について子どもがよく聞いてくる5つの質問に対する、大人の対応の仕方を専門家が紹介しています。参考にしてみましょう。(アドバイス例対象:未就学児)
質問1.なんで戦争があるの?
「誰がリーダーになるか争っているんだよ」など、わかりやすい言葉で説明してあげてください。「けんかの代わりに話し合いができるといいね」など一言そえてあげたり、「どう思う?」など子どもの気持ちを聞いたりすることもよいでしょう。
質問2.現地にいる人たちはどうなっているの?
「現地にいる人のなかには、怪我をしたり亡くなったりした人もいる。戦争ではよく起こることなんだよ」など、本当のことを話すことも戦争を理解するには大切なことです。
質問3.私も危険なの?
世界地図を見せて、ウクライナと自分たちの住んでいるところの距離を確認させてあげましょう。安全であると教えてあげることができます。
質問4.どうなるの?
これからのことは、何が起こるかは自分もわからないと正直に伝えましょう
質問5.それでも心配だけど、どうしたらいい?
「たくさん話をしよう」や「いつでも相談してきてね」と伝えてあげましょう。話すことが苦手な子どもには、絵や遊びなどを通じて、本人の気持ちを表現させてあげる機会をもつこともおすすめです。
子どもたちがする質問のほとんどは、大きく分けて3つに分類されると分析されています。
- 自分はどうなるのか
- 世界はどうなるのか
- ウクライナはどうなるのか
簡単に答えることは難しい質問ですね。答えがないからこそ、大人も子どもと一緒に考えて話をするということが大切になります。
さいごに
世界で起こっていることに目を向けると、子どもたちなりに「戦争はいけないことだ」と感じているかもしれません。日々の世活の中で、いろんなことを吸収している子どもたちは、大人が思っているよりも考え、感じています。大人はしっかり想いを受け止めて、子どもとたくさん会話をしてくださいね。