【完全版】モンテッソーリ教育とは?特徴と現状、家庭での実践方法まで徹底解説
モンテッソーリ教育とは?
モンテッソーリ教育とは、そもそもどのようなものなのでしょうか?その歴史や目的、実際にモンテッソーリ教育を受けた著名人をご紹介します。
モンテッソーリ教育の歴史
モンテッソーリ教育は、イタリアで初めて医学博士号を取得した女性であるマリア・モンテッソーリによって、1907年に考案された感覚教育法です。今から100年以上も昔に確立されたというのだから驚きですね。
①障害児への感覚教育の実践
モンテッソーリは、自身が務めていた病院に入院していた知的障害のある幼い子どもたちを観察する中で、彼らが感覚的な刺激を欲していることに気づいたといいます。そこで現在のモンテッソーリ教育で使われている「教具」の原型となるものを与えたところ、知能の向上につながることを発見しました。
②「子どもの家」の設立
その後、彼女はローマのスラム街サン・ロレンツォに、貧しい家庭の就学前の幼児を対象とした長時間保育施設「子どもの家」を設立します。集められた子どもたちの両親は労働者としての生活が厳しく、家庭で子どもに対する十分な教育やケアを行うことは難しかったといいます。
そうした環境の中で育つ子どもたちに安全な場を与えることが「子どもの家」の一番の目的だったそうですが、同時に障害児へ行った感覚教育を応用した新たな科学的教育法を用いて子どもの発達を促すという教育的な目的ももっていた点が、一般的な託児所との大きな違いのひとつといえるでしょう。
子どもの家では教室が遊び場や庭園に直接つながっており、子どもは一日中好きに行き来することができたといいます。さらに椅子や机、洗面台などはすべて子どもの使いやすい大きさに合わせて用意されていました。
また教師には授業を行うのではなく、子どもの自発的な活動をサポートしたり、環境を整えたりする役割が与えられたそうです。そのため、子どもたちはモンテッソーリが考えた教具を自分で選び、好きな場所で好きなだけ活動できたといいます。
こうして、子どもの家では「整備された環境」「謙遜な指導者」「教具」の3つの条件が整えられていたそうです。
③モンテッソーリの考えの変化
子どもの家では、もともと知的な教育は行われておらず、感覚教育や日常生活の練習に限定されたプログラムが組まれていました。モンテッソーリは幼児期に子どもに対して知的な教育を行うことに批判的で、読み書きの練習を始めるのはなるべく遅いほうがいいと考えていたそうです。
しかし、子どもの家で子どもたちを観察する中で、子どもが遊びよりも知的な作業を好む様子を目の当たりにしたことにより、固定観念を捨てたといいます。しかし彼女は読み書きや算数などの知的な教育を最重要視していたわけではなく、あくまで知的好奇心を満たすために教育内容を考案した結果、当時では革新的な早期の知的教育につながったそうです。
そうして子どもたちが楽しみながら学べる環境を整えたことにより、両親が読み書きができないにも関わらず、ほとんどの子どもたちが5歳になる前に読み書きができるようになりました。
近年まで、子どもはまっさらな状態で生まれてきて、そこに経験が刻まれて成長するものだと考えられていました。しかしモンテッソーリは、子どもが能動的で優秀な学び手であることにいち早く気づいたのです。
④モンテッソーリ教育の確立
モンテッソーリは「子どもの家」での子どもたちの知能の飛躍的な向上という結果を受け、再び大学で哲学などを学び直し、感覚教育や精神医学、知的・発達障害者研究などを通したモンテッソーリ教育を確立したそうです。
彼女は1906年にモンテッソーリ学校を設立し、その後亡くなるまで46年にも渡り子どもたちの観察を続けたといいます。「子どもは私の教師であった」と語ったモンテッソーリは「実践と観察の人」ともいわれています。
モンテッソーリ教育は100年以上前に考案された教育法ですが、現代の大脳生理学・教育学・心理学といった観点からもその効果は確認されているそうです。
モンテッソーリ教育の目的
モンテッソーリ教育では「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことを最終的な目的としています。そもそも子どもには自分を自分で育てる「自己教育力」が備わっていると、モンテッソーリ教育では考えられています。
赤ちゃんは誰かに指示されたわけでもなく、自分で寝返りやハイハイをしたり、歩いたり言葉を話し始めたりしますよね。これは子ども自身が自立のために必要だと判断しているからなのだとか。子どもには、興味・関心があることに対して心行くまで試行錯誤ながら挑戦する力があるのだそうです。
また人間の赤ちゃんは、生まれたばかりのときは精神が確立しておらず、文化に触れていく中で精神を形成していくといいます。初めて触れる文化の影響は子どもの生涯に大きな影響を与えるとされていて「日本人らしさ」などといった特徴も幼児期に培われていくのでしょう。
モンテッソーリ教育では、子どもには「ホルメ」と呼ばれる自己形成衝動があるとされています。生まれたときからホルメを持っているからこそ、子どもは自分で自分を形成していけるのだとか。しかしこのホルメが自己成長や自己形成に上手く繋げられない場合、子どもの情緒が不安定になったり、自立心をなくしたりすることがあるといいます。
そのため子どもがホルメに基づいて自己成長・自己形成ができるように、生まれたときから心理的な発達をサポートすることこそが「教育」なのだとモンテッソーリ教育では考えられています。
モンテッソーリ教育を受けていた著名人
数多くの著名人が、モンテッソーリ教育を受けていたといわれています。例えば、2016年に史上最年少のプロ将棋棋士となり、数々の活躍を挙げている藤井聡太さんも、モンテッソーリ教育を受けていたそうです。ほかにも、以下のような人たちがモンテッソーリ教育を受けています。
- Google共同創始者ラリー・ペイジとセルゲイ・プリン
- Amazonの創設者ジェフ・ベゾス
- マイクロソフト創設者ビル・ゲイツ
- Wikipedia創設者ジミー・ウェールズ
- 元アメリカ大統領バラク・オバマ
- アンネ・フランク
名だたる人々がモンテッソーリ教育を受けていたというのだから、驚きですね。モンテッソーリ教育によって育まれた集中力や忍耐力、自発的に行動する力が彼らの数々の功績へとつながったのかもしれません。
そのほかのオルタナティブ教育
モンテッソーリ教育は、義務教育などの伝統的な公教育とは異なる「もう一つの教育」である「オルタナティブ教育」のひとつです。オルタナティブ教育は、学校教育法の規定に基づいていないため、認可外の学校がほとんどで、学校教育法による卒業資格が得られないケースも多いので注意が必要です。
そんなオルタナティブ教育には、モンテッソーリ教育以外にどのようなものがあるのでしょうか?代表的なものをご紹介します。
①シュタイナー教育
0~21歳という幅広い年齢層を対象にしたシュタイナー教育では、子どもの個性が尊重され、自由で自立した人間を育てることが目標とされています。「体・心・頭」のバランスが取れた人材の育成を目指している点と芸術分野に注力している点が特徴的だといえるでしょう。
②サドベリー教育
4~18歳を対象とするサドベリー教育では、子どもの個人の自由とデモクラシーが重視されています。学校の運営を子どもたちが自ら行うのが特徴で、まさに子どもの子どもによる子どものための教育だといえそうですね。
③ドルトンプラン教育
1~17歳を対象に行うドルトンプラン教育では、自主性や創造性だけでなく、社会性や協調性を育むことも目的とされています。一つのクラスに年齢の異なる子どもたちが集まり、それぞれの個性や能力にあわせて立てられた学習計画に沿って、個別指導が行われるそうです。
④イエナプラン教育
6~15歳を対象にしたイエナプラン教育では、学校の教室が家庭のリビングルームのようにとらえられていて、内装も子どもたち自身が決めるといいます。異年齢で構成されたグループを作り、教師はそのリーダーにだけ指示を出し、自発な学びや行動へと導くのだそうです。また教科の区別はされておらず、総合学習が行われている点も特徴的だといえるでしょう。
モンテッソーリ教育の現状
モンテッソーリ教育は、現在日本や海外でどのように行われているのでしょうか?
日本でのモンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育は、日本では1960年代に導入されたといいます。義務教育課程に含まれないことから、モンテッソーリ教育が公立学校で導入されることは難しく、現在は幼稚園や保育園、認定こども園などで取り入れられているケースがほとんどです。そのため、モンテッソーリ教育は、英才教育や幼児教育だと誤解している人が少なくありません。
①幼稚園・保育園での取り組み
モンテッソーリ教育を実践している園は多くありますが、モンテッソーリ協会に認められている施設もあれば、もともとのカリキュラムに縦割り保育などのモンテッソーリ教育の要素を取り入れている施設もあるため、実際に行われている取り組みには施設によって差が大きいようです。
②モンテッソーリ教育を受けられる小学校
日本では小学校入学以降にモンテッソーリ教育を受けられる環境は少なく、モンテッソーリ教育を行っている小学校は認可外という扱いになります。卒業しても義務教育の修了資格を得ることはできないため、卒業後の進路によっては注意が必要です。
2021年現在、日本でモンテッソーリ教育が受けられる小学校は下記の3校しかないといいます。
- ザ・モンテッソーリ・スクール・オブ・トウキョウ(http://www.montessorijapan.com/)
- マリア・モンテッソーリ・エレメンタリースクール(https://www.maria-montessori-elementaryschool.com/)
- 東京モンテッソーリスクール(http://www.tokyomontessorischool.com/)
モンテッソーリ小学校には教科が割り振られた時間割がないのが特徴で、子どもが自分で学びたい内容を選んで取り組むことができます。またテストや相対的な評価を記載する成績表がなく、学校の外での活動も盛んに行われている傾向があるようです。
授業内容は学校によって異なるので、気になる施設があれば問い合わせてみてはいかがでしょうか?ただしモンテッソーリ小学校は少人数で編成されていることが多いため、申し込みを受け付けていない場合もあるようです。
海外のモンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育は日本ではまだあまり馴染みがありませんが、海外では新しい教育法として注目を浴び、欧米を中心に世界中に広まっていったといいます。
とくに当時新教育運動が行われていたアメリカに大きな影響を与えたといわれており、1930年代ごろに徐々に衰退したものの、21世紀になってから再び着目され、今ではアメリカ全土に普及しているそうです。
アメリカにはモンテッソーリ教育を行う「子どもの家」という施設が3000箇所程度あり、幼稚園から大学にかけて多くの施設でモンテッソーリ教育が取り入れられているといいます。授業内容は施設によって異なりますが、科目や授業の枠にとらわれないプログラムが組まれています。
モンテッソーリ教育の「敏感期」と「お仕事」
モンテッソーリ教育の大きな要素として挙げられるものに「敏感期」と「お仕事」があります。モンテッソーリ教育における「発達の4段階」とあわせて、押さえておきたい要素について解説していきます。
6つの時期に分類される「敏感期」
「敏感期」というのは、子どもが大人に頼らず、自分の力だけで何かをこなしたくなる時期のことをいいます。この時期の子どもは、特定の何かに強く興味・関心を抱き、集中して熱心に取り組むことで楽しく苦労せずに吸収していくといいます。
そんな敏感期には、以下の6つの時期があるそうです。
①言語の敏感期
一番早く訪れる「言語の敏感期」は6つの敏感期の中で最も長く、7ヶ月の胎児期から3歳前後までの「話しことばの敏感期」と3歳半から5歳半頃の「文字の敏感期」にわけられます。
赤ちゃんはお腹にいる時期に一番話し言葉を身に付けやすいといわれており、多く語り掛けることが大切なのだそうです。ただ言葉を覚えるだけでなく、ママやパパの方言やイントネーション、アクセントなども吸収していくことでしょう。
ママとパパの母語がそれぞれ違う場合は、双方の言葉で話しかけ続けることで、自然と両方の言語を覚えていくというのだから驚きですね。
②秩序の敏感期
「秩序の敏感期」の時期は、生後6ヶ月~3歳前後とされていて「いつもと同じ場所に物がない」ことに怒るなどといったこだわりとして表れるといいます。2歳頃に世界中の子どもたちにやってくるイヤイヤ期の背景には、この秩序の敏感期があるのかもしれません。
③感覚の敏感期
0歳から6歳まで続く「感覚の敏感期」の「感覚」とは、視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚の五感のことを指します。0歳から3歳までの幼児前期には、常に何かを触ったり口に入れたり匂いを嗅いだりして「水は冷たい」などの感覚的印象を探して溜めこんでいきます。
そして3歳から6歳までの幼児後期に溜めこんだ感覚的印象を頭の中で整理して分類・秩序化するのだといいます。こうした感覚的体験を積み重ねることが、子どもの「自分の意見を持つ」という知的自立の土台になるそうです。
④運動の敏感期
0歳から6歳までの「運動の敏感期」の「運動」は、スポーツのことではなく「歩く」「指でつまむ」などといった動作のことをいいます。0歳から3歳までは「物を持つ」「ジャンプする」などといった大きな動きができるようになる時期で、3歳から6歳までは「ハサミを使う」「折り紙を折る」などという細かい洗練された動きへと発達していいます。
大人の真似をして、自分の思い通りに身体を動かすことに興味を抱くのが、運動の敏感期なのだそうです。
⑤数の敏感期
数の敏感期は、4歳から5歳ごろに訪れるといわれています。「自分が何歳か」という年齢にこだわったり、数を数えて遊んだり、おもちゃなどを大きさの順番に並べたり、多い・」少ないという量の差に気づいたりと、日常生活の中でさまざまな形で数への興味・関心が見受けられることでしょう。
⑥文化の敏感期
「文化の敏感期」とは、言語や数以外への興味・関心があらわれる時期のことをいいます。メディアが発達した現代では、乳幼児期からそれらによって刺激を受けることが多いといわれています。
発達の4段階
モンテッソーリ教育では、人が人間として完成するのは24歳頃と考えられています。その生まれてから24歳頃までの期間は、6年ごとの4つの発達段階にわけられるそうです。
①乳幼児期
0歳から6歳までの「乳幼児期」は、先程紹介した敏感期の時期にあたります。モンテッソーリ教育ではこの乳幼児期が一番重要だと考えられています。
②児童期
6歳から12歳までの児童期になると、乳幼児期に培ってきた様々な原体験を土台として、想像の世界を広げていくことができるといいます。実際に体験していない場所のことや未来・過去のことなどを理解したり、自然や宇宙また倫理などにまつわる疑問が増えたりするそうです。
また「自分は何者なのか」というアイデンティティが芽生え、自立心が育まれることで、一人では難しい大きな課題に集団で取り組むこともできるようになります。
③思春期
12歳から18歳までにあたる「思春期」は、子どもが大人へと変わっていく時期です。精神的に不安定になりやすい時期なので、子どもへの接し方に注意が必要だといわれています。
④青年期
18歳から24歳までの青年期は、精神的にも肉体的にも十分成長し、社会の一員として他人と支え合っていけるようになる時期とされています。
モンテッソーリ教育の”お仕事”
モンテッソーリ教育での活動は「お仕事」と呼ばれています。モンテッソーリは「子どもは労働者である」と考えており、その仕事は周囲の環境から物事を吸収し、自分の力で人間を作ることなのだといいます。
一般的に「子どもは大人が作るもの」というイメージがあるかもしれませんが、モンテッソーリ教育では子どもを作り上げるのは子ども自身であり、そんな子どもを助けることが大人や社会の義務だとされています。
「お仕事」は子どもの興味・関心や発達段階にあわせたものが求められます。ここからは、乳幼児期の発達段階を0歳から3歳までの「前期」と3歳から6歳までの「後期」にわけて、どのようなお仕事があるのかご紹介します。
①前期
0歳から3歳までの時期は、人生の中で一番物事を吸収する力がある時期とされ「吸収する精神(無意識)」の時期とも呼ばれています。言葉を話し始めたり、歩き始めたり、トイレができるようになったりと、社会で生きていく中で必要な基本的動作を身に付けるのもこの時期なのだとか。
この時期の子どもは、大きくなってからでは何年かけても習得が難しいことでも簡単にできるようになるというのだから驚きですね。このころの子どもには、どのようなお仕事があるのでしょうか?
・粗大運動の活動
「粗大運動」とは、胴体や手足の筋肉を使い、身体全体を動かす運動のことをいいます。頭を動かしたり、寝返りをしたり、ハイハイをしたり、歩き始めたりといった運動は1歳頃までにできるようになることが多いです。
・微細運動の活動
微細運動とは、腕や手の筋肉を使った「叩く」「持つ」などといった細かな動きが必要になる運動のことを指します。ボタンを留めたり、箸を使ったり、文字を書いたりすることも微細運動のひとつです。
手足の運動の発達は、身体の中心から末端へと進んでいくといわれており、初めは手のひら全体で物をつかむことからスタートし、徐々に指先だけで物をつまめるようになるといった風にステップアップしていくことでしょう。
初めから思いのままに身体を動かすことは難しいですが、何度も繰り返し練習することで大人と同じような動きができるようになっていきます。こうして粗大運動と微細運動を獲得することは、子どもの自立につながるといわれています。
・日常生活の練習
日常生活の練習では、粗大運動と微細運動を組み合わせることが目的となります。日常生活では、洋服を脱いだり着たりするだけでも身体全体から指先までさまざまな動きが必要になるため、多様な動作の良い練習となるはずです。
また社会の一員として日常生活に子ども自身が参加することで、社会や家族の中に適応していけることでしょう。
・言語教育
話しことばの敏感期には、子どもは身近で使われている言語を母国語として獲得していくといいます。しかし子どもが獲得できる言葉の質や量は、周囲の環境によって大きく変わるのだとか。
モンテッソーリ教育では、子どもの豊富な語彙を培うため、発達段階に合わせた細かなステップが用意されているそうです。また豊かな語彙を育むことは、子どもの会話を促すことにもつながり、次のステップである書くことにも続いていくのでしょう。
・感覚教育
子どもの発達段階や興味・関心に沿った教具を使うことは、子どもの美的感覚や危機感覚などの洗練を促すといいます。また教具の使い方によって、知性を育むこともできるでしょう。
・音楽
子どもは誰に指示されるともなく、音を聞くと手や身体などを自然に動かしたり、楽器を鳴らしたり、声を出したりして楽しい気持ちを表現するといいます。こうした動きを繰り返すことは、さまざまな動作の獲得につながるため、音楽に親しめる環境を整えてあげることが大切なのだそうです。
・美術
クレヨンや色鉛筆、粘土などを使って、言葉以外の方法で自分の思いを表現します。また指先を細かく使うため、目と手の協応動作や微細運動の精度を高めることにもつながるでしょう。
②後期
3歳から6歳までは「意識の芽生え」の時期といわれ、前期で無意識で吸収したさまざまな運動・感覚を整理したり秩序化したりすることを意識的に行うとされています。この時期には、どのような教育環境やお仕事が求められるのでしょうか?
・日常生活の練習
後期の日常生活の練習では、自分の身体を自分の思い通りに動かすため、運動の完成を目標にします。ボタンを留めるなどの着脱衣や洗濯・掃除といいった実生活に関連するさまざまな活動を通し「自分のことが自分でできるようになる」ことで、自立へ向けた成長へつながるはずです。
・感覚教育
子どもの感覚器官は、3歳までにほとんど発達するといわれています。そのためこのころの子どもは、小さな音やわずかな匂い、かすかな味の違いに気づくなど、感覚刺激に対して敏感なのだそうです。
感覚教育は、そんな「感覚の敏感期」使い、意識的に感覚器官を使って練習を行います。正確かつ多様な情報を集めることで、子どもの知性や情緒の発達を促すことができるでしょう。感覚教育は「言語」「算数」「文化教育」といった知的教育分野の礎とされ、モンテッソーリ教育では重視されています。
さらに教具の使い方を身に付ける中で、物事を観察する力や自分で考える力を伸ばすこともできるのではないでしょうか?また感覚教育に使われる教具では「対にする」「段階づける」「分類する」という力を培うことができるそうです。
・言語教育
子どもは「言語の敏感期」に身近で使われている言語を母語として獲得します。子どもの発達段階に合わせた細かなステップで、豊かな語彙や文法を身に付けるのだそうです。モンテッソーリ教育では「日常生活の練習」や「感覚教育」で育んだ手や指先、腕を自分の思い通りに動かす力を使い、文字を書く練習につなげるよう工夫されているといいます。
・算数教育
モンテッソーリ教育の算数教育では、物の数を具体的に体感できる教具が使われます。言葉で説明するのが難しい数の概念ですが、実際に手に取って扱うことでスムーズに理解することができるでしょう。
・文化教育
言語と数字を除く、さまざまな分野の教育を総合したものが「文化教育」にあたります。小学校の理科や社会に相当するものとイメージするとわかりやすいでしょう。子どもの好奇心に沿って、興味・関心を広げていくことが目的とされています。
モンテッソーリ教育で重視されるポイント
モンテッソーリ教育では、どのようなポイントが重視されているのでしょうか?
重視されること1:内発的動機づけ
モンテッソーリ教育では、外的動機づけよりも内発的動機づけが重視されます。外的動機づけとは、他人からの評価や報酬・罰などによって起こるモチベーションのことをいいます。一方、内発的動機づけは知的好奇心などの自分の内側にある興味や関心によるもののことを言います。
・内的動機づけはなぜ重視される?
もともとモンテッソーリは、子どもにご褒美を与えることに否定的ではなかったといいます。しかし、知的な作業に集中していた子どもがご褒美として提示した遊びを拒み、作業を続けることを選んだことに驚いたそうです。そのうえ子どもたちは、ご褒美に対してだけでなく、罰に対しても同様に関心を示さなかったといいます。
こうした経験から、彼女は大人が行う称賛も批判もともに子どもの集中を妨げてしまうことに気づいたのだとか。そのため子どもが物事に集中し始めたら、子どもには一切構わないようにすることが大切なのだそうです。
また内発的動機づけが十分であるにも関わらず、ご褒美などを与えてしまうと、子どものやる気を損なってしまう傾向があるといいます。
しかし褒めることも注意することもしないと、子どもがきちんと学ぶことができるのか不安に感じる人も少なくないでしょう。
モンテッソーリ教育では、子どもに対するフィードバックは環境が与えてくれるといいます。とくに趣向を凝らして作られた教具から直接的なフィードバックを受けることで、子どもは自分で自分を評価し必要があれば訂正することができるでしょう。
・子どもの好奇心を引き出す教具の考案
モンテッソーリ教育で使われる教具は、子どもが興味・関心を抱きやすいよう考案されているといいます。また「子どもの家」では、さまざまな教具の中から好きなものを自由に選んで活動することができたそうです。
こうした内的動機づけを継続させられる学習方法を提唱した点も、モンテッソーリ教育が長く世界で広まっている理由のひとつといえるでしょう。
重視されること2:運動
モンテッソーリ教育では、運動と認知には深い関係があると考えられています。一般的に「学習」というと大人しく椅子に座って行うイメージがあるかもしれません。しかしモンテッソーリは子どもたちを観察する中で「知的な発達は運動を通して起こる」ことを発見したといいます。
むしろ、子どもに静かにすることや大人しくしていることを無理強いしてしまうと、学習の妨げとなってしまう可能性があるのだとか。自由に動き回り、自分の動きによってどのようなことが起こるのか実際に体験することが大切なのだそうです。
また、子どもたちが自由に動き回れる「子どもの家」では、家具は子どもに合わせて作られており、椅子などは持ち運びできるようになっています。しかし身体を思い通りに動かす力が未熟な子どもは、家具にぶつかったり倒してしまったりすることも。
そうした経験を重ねることで、子どもは自分の未熟さを知り、周囲に注意しながら動き回ることを学んでいくといいます。
重視されること3:日常生活
モンテッソーリ教育では日常生活が重視されているため、モンテッソーリ教育を取り入れている園では行事が少ない傾向があるといいます。運動会や発表会などでも、特別な練習は行わないという施設もあるのだとか。
モンテッソーリ教育を構成する要素
モンテッソーリ教育を構成する要素として「教具」「環境」「大人(教師)」の3つが挙げられます。教具が用意されていても、環境が整っていなければ学びに繋げることは難しく、また教具の使い方を教える人がいなければ活用することは困難ですよね。
それでは、それぞれの要素は具体的にどのようなものなのでしょうか?
要素1:教具
教具とは、効果的に学習するための道具のことを指します。モンテッソーリ教育にはさまざまな教具がありますが、子どもの発達にあわせて選ぶことが必要だとされています。言語教育や感覚教育など、教具によってどのような能力を育めるのか異なるため、教具を選ぶときの参考にしてみてはいかがでしょうか?
モンテッソーリ教育の教具は、材質や重さなど細部にこだわって作られていて、子どもの好奇心を引き出すだけでなく、五感も刺激してくれるといいます。遊びながら学びにつなげられるため、子どももスムーズに取り組みやすいでしょう。
要素2:環境
モンテッソーリ教育では「子どもには自己教育力がある」と考えられていますが、環境が整っていなければやる気を引き出すことは難しいでしょう。それでは、子どもが自己教育力を発揮できるようどのような環境を整えればいいのでしょう?
・整理整頓された清潔な空間
子どもが自分で作業を選択できるよう、教具などが整理整頓されていることが重要だといいます。また清潔な空間を用意しておくと、子どもが汚れや乱れに気づきやすく、きれいな状態に戻そうと自分から行動しやすいかもしれません。
・集中できる環境
子どもが作業に集中できるよう、落ち着いた空間を整えることも大切です。作業内容や子どもの発達段階によって適する環境が異なることを考慮するといいですね。またハサミなどの危険を伴う道具を使った作業を行うときは、保護者の目が届くようにしましょう。
・子どもに合わせた家具
子どもの身体に合わせた家具を取り入れることで、子どもは無理のない体勢で長く集中を保つことができるはずです。また大人の手を借りずに椅子などを持ち運ぶことができれば、作業の準備から片付けまで自分の力だけで行えるでしょう。
・教具
教具や教材は、子どもの発達に合わせたものを選ぶようにしましょう。しかし子どもにとって今は難しいものでも、目につく場所に用意しておくことで子どもの好奇心を刺激してくれるかもしれません。
また子どもの使う道具は、なるべく本物を用意してみてはいかがでしょう?ガラスなどの割れ物を与えることに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、壊れやすいものに触れることで、物を丁寧に扱うことを学べるはずです。
さらに本物の質感は、子どもの感性を磨くことにもつながることでしょう。美しい色や形のものにこだわってもいいですね。
要素3:大人
モンテッソーリ教育では、両親や教師などの大人は「援助者」という位置づけになります。援助者の役割は子どもに物を教えることではなく、子どもが学びやすい環境を整備すること。さらに大人には「深い精神性」や「控えめであること」が求められるのだそうです。
子どもには自己教育力があるので、学習には大人から与えるご褒美もフィードバックも必要ないといいます。大人が子どもを評価することは、子どもの集中力を妨げたり、子どもを怖がらせたりする可能性が高いのだとか。
モンテッソーリ教育には教員資格が存在しており、国際モンテッソーリ協会の国際免状や日本モンテッソーリ協会などの団体による独自の免状も取得できるそうです。モンテッソーリ教育について専門的に学びたい人は、自分に合った団体を探してみてはいかがでしょうか?保育経験がなくても受講できる団体もあるので、家庭教育に活かしたい人にもおすすめです。
ここからは、モンテッソーリ教育で大人に求められることや注意点をご紹介します。
・環境の整備
教具や教材などを子どもの手に取りやすいところに整理整頓し、子どもが興味を抱いたときに作業できる環境を整えることが大切です。また、子どもに合わせた道具を用意することも意識しましょう。
・選択肢を与える
子どもが決めるべきことに対して、つい大人が口を出してしまってはいませんか?親が子どものことを何でも決めてしまうと、子どもは自分で物事を決める力を育むことができないでしょう。子どもの自立のためにも、子どものことは可能な限り自分で決断させるようにしてみてくださいね。
しかし多すぎる選択肢の中から、一つのものを決めようとしても難しいもの。初めのうちは2択から選ばせ、成長に合わせて少しずつ選択肢を増やしていくようにすると、子どもの決断力を伸ばすことができそうですね。
・見守る
子どもが上手に物事をこなせていないと、つい口や手を出したくなってしまいますよね。しかし、大人が何でもやってあげたり教えてあげたりすると、子どもが自分の力で試行錯誤しながら成長していく機会を奪ってしまいかねません。
教具の使い方がわからないときや子どもに助けを求められたとき以外は手助けは控え、見守りに徹するようにしましょう。
モンテッソーリ教育のメリット・デメリット
モンテッソーリ教育には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
メリット
まずはモンテッソーリ教育で期待できるメリットをご紹介します。
・自主性・積極性が身につく
モンテッソーリ教育では、大人から指示された内容ではなく、子ども自身の興味・関心に沿って学ぶことができます。主体的に物事に取り組む経験により、自主性や積極性を育むことができるでしょう。
・集中力を養う
モンテッソーリ教育では、子どもは集中を妨げられることなく、興味のある物事に取り組むことができます。それによって、集中力や忍耐力を伸ばす効果が期待できるのだそうです。
・個性を伸ばす
モンテッソーリ教育では、個人の特徴や性質、発達段階に合わせた教育が行われるため、個性を伸ばすことができるでしょう。
・コミュニケーション能力を向上する
モンテッソーリ教育では、学年によるクラス分けは行われず、異年齢混合クラスが採用されています。同年代だけでなく、年上や年下の子どもたちと接する中でコミュニケーション能力が培われていくのではないでしょうか?
また自由を尊重し、個性を伸ばすモンテッソーリ教育を通し、他人の個性を認められるようになることで、社会性を育むこともできるかもしれません。
・器用になる
モンテッソーリ教育には、身体全体を使った大きな動きから指先を駆使した細かな動きまで組み込まれています。それにより、自分の思い通りに身体を動かす力を育んだり、手先が器用になったりする効果も期待できそうですね。
・情緒が安定する
自分のやりたいことを納得できるまで集中して取り組めることで、子どもの情緒が安定するといわれています。モンテッソーリ教育では、テストなどによる相対的な評価が行われないため、周囲に惑わされずに自分のペースでのびのびと成長できることでしょう。
デメリット
モンテッソーリ教育にはさまざまなメリットがありますが、一方で下記のようなデメリットも考えられます。
・協調性が育ちにくい
モンテッソーリ教育では、個性や多様性・自由が重視されるため、周囲に合わせるなどといった協調性が培われにくい傾向があるようです。しかしモンテッソーリ教育では異年齢混合クラスが採用されており、幅広い年齢の子どもと接するため、協調性を育める機会も少なからずあるといわれています。
・運動不足になる
モンテッソーリ教育の活動は、屋内で行われることが多いです。そのため、施設によっては運動量が不足してしまうこともあるのだとか。外遊びの時間をしっかりと設けている園もあるので、入園前にきちんと確認しておくと安心ですね。
また子どもの運動不足が気になる場合は、降園後や休日などに運動する時間を作るよう意識してもいいでしょう。体操教室や水泳教室など、習い事を活用する家庭も少なくありません。
・不向きな子どももいる
子どもの性格によっては、モンテッソーリ教育が合わないこともあるといいます。外で走り回ることが大好きな元気すぎる子どもなどにとっては、一つの物事に黙々と取り組むモンテッソーリ教育の活動は楽しめないかもしれませんね。
家庭で行うモンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育を取り入れている施設も少なくありませんが、日本ではあまり普及していないこともあり、地域によっては近隣にモンテッソーリ教育を行っている園が見つからない場合もあります。そんなときにもおすすめの家庭でできるモンテッソーリ教育についてご紹介します。モンテッソーリ教育の活動は、日常生活に関連したものが多いため、家庭でも取り入れやすいでしょう。
紙遊び
特別な道具を用意する必要のない紙遊びは、手軽に実践することができるのがうれしいですね。子どもの発達に合わせて、下記のような紙遊びに挑戦してみてはいかがでしょう?
・切り絵・切り紙
動物や植物などの子どもの興味を引く図案を使って、切り絵や切り紙にチャレンジしてみてもいいですね。子どものハサミの上達に合わせて難易度を調整すると、手先の器用さを育むことができるでしょう。
図案はインターネット上で無料配布されているものも多いので、子どもの好きそうなものをいくつか用意してみてくださいね。
・紙の縫い物
3~4歳頃の子どもには、紙と毛糸を使った縫い物はいかがでしょうか?「小さな子どもに縫い物なんて難しいのでは」と不安に感じるかもしれませんが、前もって道具の正しい使い方を教え、そばで危険がないよう見守ってあげるといいでしょう。
用意する道具は、紙と毛糸、毛糸のとじ針と大工道具の“かるこ”の4つだけ。毛糸はなるべく極細のものを選ぶと、スムーズに針に通しやすいですよ。また毛糸のとじ針は先が丸くなっているため、うっかり指をさしてしまう危険がないのがうれしいですね。
紙に穴をあけるために用意する“かるこ”は、本来は大工道具なので耳慣れない人も多いでしょう。小ぶりなサイズで子どもが握りやすいことから、モンテッソーリの子どもの家でも使われているのだとか。ホームセンターなどで販売されているので、ぜひ探してみてくださいね。
道具がそろったら、あとはかるこで紙に穴をあけ、毛糸を通した針で縫っていくだけです。穴をあける部分に「・」縫う部分に「―」と印をつけておくと縫い進めやすいでしょう。もちろん、モンテッソーリ教育で使われている型紙を活用するのもおすすめです。
また子どもの発達に合わせて、玉結びや玉止めなどの糸の始末も教えてみてはいかがでしょうか?
・紙を編む
5歳頃の子どもには、紙を編むことに挑戦してもらってもいいですね。ストライプ上に切り込みを入れた画用紙と、細長い帯状に切った画用紙を用意したら、切り込みに帯を通して端を糊でとめて余分な部分を切り落とし完成です。
切り込みへの通し方次第でモザイク型やハート形などさまざまな模様が作れるので、夢中になって作業に没頭してくれることでしょう。切り込みを直線ではなく波上にしてみると、一風変わった模様を楽しめます。子どもがイメージしやすいよう、あらかじめ大人がお手本を作っておくといいですね。
紙のサイズは、16切(四つ切りの1/4のサイズ)程度が子どもにとって扱いやすいでしょう。帯の幅は1cm程度が目安で、長さは24cm程度と長めに取っておくと編みやすくなります。切り込みを入れる作業と帯を作る作業は、大人が行うと安全です。
自然とのふれあい
モンテッソーリ教育では自然に触れることが重視されており、施設では動物や植物のお世話を取り入れているところも多いのだそうです。家庭でも家庭菜園を作ったり、植物のお世話を任せたりしてみてはいかがでしょうか?
とくに植物のお世話は、子どもの責任感を培う効果も期待できます。またきちんとお世話をしなかったらどうなるのかを実体験を持って学べるかもしれません。お世話の道具は、子どもにとって扱いやすいものを選ぶといいですね。
また散歩などで落ち葉をや小石を拾ったり、虫の観察をしたりするのも、大切な自然とのふれあいです。大人のペースで歩みを進めず、子どものペースに合わせてあげましょう。
家事
料理や洗濯・掃除などの家事のお手伝いは、モンテッソーリ教育の理想的なお仕事といえるでしょう。子どもの発達状況や興味・関心を考慮し、下記のような子どもが楽しんでできそうな作業を任せることをおすすめします。
- レタスを手でちぎる
- パン生地をこねる
- すり鉢で胡麻をする
- 食器を並べる
- テーブルを拭く
- タオルをたたむ
- 洗濯物を干す
ただしお手伝いは強制するのではなく、あくまで子どもの意思で行ってもらうことが大切です。そのため無理強いはせずに、子どもが興味をもってくれるようにまずは大人が楽しそうに作業をしてみせてはいかがでしょうか?
また大人にとっては簡単なことでも、子どもにとっては上手にこなすのが難しい場合も多いです。失敗したり最後までこなせなかったりしても子どもを責めず「手伝ってくれて助かったよ、ありがとう」などと声をかけるようにしましょう。
教具の活用
モンテッソーリ教育の教具は市販されているものも多いため、それらを活用してもいいですね。大きさの違う10個のピンクの積み木からなる「ピンクタワー」では、形と数の関係を学べるといいます。大きい順に積み重ねて塔を作ったり、積み方や並べ方を工夫してみたりする中で、美的感覚や集中力を育むこともできるでしょう。
ほかにも「円柱さし」や「色板」「マルボティック」などさまざまな教具があるので、気になるものをチェックしてみてくださいね。また市販の教具は高価なものが多いため、100均の材料などを使って、自分で教具を作る人も少なくありません。
おうちモンテのポイント・注意点
家庭でモンテッソーリ教育を実践するときは、どのような点に注意すればいいのでしょうか?
Point1:子どもに選択させる
自主性を重んじるモンテッソーリ教育では、子どもに自分で選択させることが大切だとされています。「今日着る服はどれにするか」といった些細なことでも、自分で決める機会を作ることで子どもの決断力を育むことができるでしょう。
慣れないうちは少ない選択肢の中から選ばせるようにすると、子どもの負担も少なくなりそうですね。
Point2:余計な手助けはしない
子どもが悩んだり困ったりしていると、つい頼まれていなくてもサポートしたくなるかもしれません。しかし試行錯誤しながら考える経験は、子どもの成長にとってとても大切なもの。簡単に答えを教えたり助けたりせず、見守りに徹するようにしましょう。
また大人から答えを教えてもらっても、子どもは達成感を感じにくいのだそうです。自分で努力した結果が成功につながってこそ、子どもは自信を育んでいけるのかもしれません。
Point3:方法の説明はゆっくり丁寧に
教具の使い方や道具の扱い方は、子どもにとってわかりやすいよう、ゆっくりと丁寧に教えるようにしましょう。子どもが理解するまで何度も説明するのは大変なことですが、あやふやなままにしてしまうと子どもの好奇心を損ねたり、怪我につながったりするかもしれません。
また子どもにとって、耳で説明を聞きながら、目でママやパパが示すお手本を追うのは難しいもの。同時に説明を進めるのではなく、まずは言葉で説明してからお手本を見せたほうが理解しやすいかもしれないですね。
Point4:自由とともに制限を設ける
モンテッソーリ教育では自由が重視されますが、何でも子どもの好き放題させていいというわけではありません。自分と他人をともに守るためにも、社会のルールを守らなくてはならないことを伝えるようにしましょう。
そうして自由とともに制限を設けることで、子どもの社会性を育んでいけるのではないでしょうか?
Point5:秩序のある環境を整える
子どもの健やかな発達のためには、秩序を整えることが大切だといわれています。「秩序の敏感期」でもご説明したように、大人にとってはどうでもいいことに対して子どもは強いこだわりを持つもの。
秩序が乱れることで精神的に不安定になってしまうこともあるので、物の置き場や生活リズムなど秩序の整った環境を意識して作ってあげることをおすすめします。
Point6:子どもの見本となる行動を心がける
社会のルールの守り方や他人との関わり方、困難に直面したときの対処法など、子どもは大人が想像している以上に周囲の大人からさまざまなことを学ぶといいます。そのため大人には、子どもの目を常に意識して見本となる行動をとることが求められるでしょう。
Point7:家族の一員として扱う
子どもが家の仕事に参加したがっても「まだ小さいから難しいだろう」と遠ざけてしまってはいませんか?子どもも「家族の一員」だということを意識し、子どもの気持ちを優先して積極的に家の仕事にも関わってもらうといいですね。
Point8:子どもを評価しない
子どもが何かすると、大人はつい「上手にできた」あるいは「できなかった」と評価してしまいがちですよね。しかしそんな大人の評価は、子どもの楽しい気持ちや達成感に水を差してしまいかねません。
大人からすると上手くできていないように見えても、子どもにとっては成功したと感じていることもあります。その逆もまた然り。そのため、大人は子どもを評価するのではなく、子どもの気持ちに共感することをおすすめします。
まとめ
子どもの個性や自主性を育むモンテッソーリ教育について解説しましたが、いかがでしたか?日本ではまだあまり広まっていない教育法ですが、欧米を中心に世界中で長く用いられてきたモンテッソーリ教育は家庭でもぜひ取り入れたいものですよね。一見敷居が高く感じられるかもしれませんが、モンテッソーリ教育は日常生活の中にも手軽に取り入れやすいでしょう。是非試してみてください!
参考
- 「0~3歳までの実践版 モンテッソーリ教育で才能をぐんぐん伸ばす!」(著:藤崎達宏)
- 「おうちモンテッソーリはじめます 『生き抜く力』の伸ばし方」(著:シモーン・デイヴィス/焼き:宮垣明子)
- 「マンガでやさしくわかるモンテッソーリ教育」(著:田中昌子・空生直)
- 「モンテッソーリ教育×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方」(著:伊藤美佳)
- 「『自分でできる子』が育つモンテッソーリの紙あそび」(著:百枝義雄・百枝知亜紀)