科学遊びで身に付くのは、学問的なものの見方や考え方といった理数系の基礎力や論理的思考だけではありません。ここでは科学遊びで得られる5つの力を解説します。

「なぜそうなるんだろう？」「これはどういうことだろう？」といった疑問から生まれる感情は、物事を「もっと知りたい！」と深く考える「探求心」に繋がります。探求心が育つと、物事に対して興味を持った際、自ら行動して学ぼうとする前向きな姿勢が身に付くことから、子どもの成長を促すでしょう。

科学遊びでは、実験や観察をおこなうことで、子どもが抱いた疑問を自分で解決する力が身に付きます。実験が上手くいかず、思うような結果が得られなかったときにも、問題点を考えさらに工夫することで、最後までやり抜くが力が伸びるのです。試行錯誤を繰り返しながら、あきらめずに問題解決を目指す姿勢は、将来的にも重要な資質になります。

いろいろな実験結果を求め工夫をしながら遊ぶなかで、柔軟な考え方ができるようなります。豊かな発想力は、理数系だけでなく芸術系の分野など、幅広い場面で活かせるでしょう。さらに、発想を実際に形にする創造力は、IT技術が発展し、あらゆる分野でデジタル化が進む現代社会で、必要なスキルといえるかもしれません。

科学遊びを介して観察力が身に付けば、そこからさらに事象の本質を見抜くための洞察力を磨けます。例えば「重いものは水に沈むのに、なぜ船は浮くのだろう？」という疑問から、「大きさが関係しているのかな？」「形が影響しているのかも」など、多角的にさまざまな可能性を考えられるようになります。

洞察力は、物事をあらゆる角度から見極める力といえるでしょう。そのため、課題の解決を導くだけでなく、人間関係を良好にしたり、日常でのトラブルを回避したりと、生活面においても役立つ力です。

ものをつくるタイプの実験では空間認識力を伸ばせます。空間認識力は理系分野での理解力をサポートするだけでなく、スポーツやアートの分野でも注目されています。また、自転車の運転や地図の読み取り、整理整頓など、日常生活においても欠かせない能力だといわれており、子どもに身に付けさせたい力のひとつです。

IT化が進む世界で活躍できるスキルを身に付ける方法として、「STEAM（スティーム）教育」という言葉を目にすることが増えました。STEAMとは「Science＝科学」「Technology＝技術」「Engineering＝工学」「Mathematics＝数学」の頭文字をとった「STEM（ステム）教育」に「Art＝美術」をプラスした用語です。さらに「Robotics＝ロボット工学」や「Sports＝スポーツ」を加え、「STREMS（ストリーム）教育」「STEAMS（スティームス）教育」とよばれることもあります。

これらの教育方針における共通点は、それぞれの学習分野を横断的に学ぶことです。分野ごとの型にはまったカリキュラムではなく、興味をもとに自ら探求し創造する力を養うことが、これからの教育に求められています。科学遊びは、STEAM教育にうってつけの方法といえるでしょう。

ここまで、科学遊びの重要性について解説してきましたが、頻繁におうち実験するのは難しいと感じるかもしれません。そのような場合は、実験を楽しむ前に、まずは普段の生活で科学的思考力を延ばすことを意識してみましょう。

例えば、自然のなかで植物や昆虫、生き物を観察してみてください。それだけでもたくさんの「なんだろう？」「なぜだろう？」という疑問や驚き、発見がきっと見つかります。

また、子どもが何かに関心を持った際には、大人も一緒になって興味を示すことが大切です。大人が前向きに関わることで、子どもの主体的な学びがより促されるでしょう。

ここで、科学遊びを上手に取り入れているママやパパの体験談をまとめました。チェックしていきましょう。  

毎日お風呂で水に浮くか沈むかの実験を楽しんでいます。例えば、一見簡単に浮かびそうな一円玉が実はなかなか浮かないなど、大人にも発見がある遊びです。「今日はこれが浮かぶか沈むか実験したい」と毎日自分で何かを持ってくるようになりました。

大人にとっては浮くかどうか一目瞭然で意味がなさそうなものでも、子どもにとっては驚きや発見があり、目を輝かせる姿が見られます。子どもの気持ちが盛り上がるよう、何を持って来ても受け入れるようにしているところがポイントです。

子どもが「なぜだろう？」「なんだろう？」と疑問を抱いたときには、「なぜだと思う？」「なんだと思う？」と聞くようにしています。なぜなら、子どもの経験則や本やテレビなどで目にしたことから、必ず自分なり考えをもっていると思うからです。

その際、子どもの考えが間違っていても、否定はしません。実際に検証してみないと確かめられないこともあるので、子どもの考えが正解である必要はないのかなと感じています。

ただし、「パパはこういう経験があるよ？そんなときは当てはまらないね？」と、ちょっとヒントを出すことも。一緒に調べてみたり、検証できることなら実際にしてみたりと、疑問を解決するサポートに徹することを重視しています。

科学の楽しさを知ってもらうために、実験をするときは目で見てすぐ驚きを感じられるようなものを選んでいます。例えば、夏は朝顔の花の色水にクエン酸や重曹を入れて色の変化を楽しむ実験が我が子には大人気です。

他にも、豆乳を使った実験では、加熱により湯葉ができたり、レモン汁を加えることでチーズのようなかたまりができたりと、あっと驚く変化を楽しんでいます。  

つづいて、身近な材料で簡単にできるおうち実験を紹介しましょう。実験内容はシンプルですが、いずれも原理はしっかり科学に基づいているため、はじめての実験にもぴったりです。  

ミニトマトを水に落として甘さをチェックする実験です。

【材料】

• ミニトマト
• 水
• 砂糖

【手順】

1. 水を入れた容器にミニトマトを入れ、浮かんだものを取り出す
2. 水に砂糖大さじ１を加えてよくかき混ぜ、浮かんできたミニトマトを取り出す
3. すべてのミニトマトが浮くまで2を繰り返す

【原理の解説】

ミニトマトは熟すと根から吸収する水分が制限され、実の中の水分が減少し糖が濃縮されるといわれています。つまり、完熟して糖度が高くなったミニトマトは、水分が少なく密度がアップし、水に沈むのです。最後まで沈んでいたミニトマトが本当に甘いかぜひ確かめてみてください。

ペンを使わずバナナに絵を描く科学遊びです。

【材料】

• バナナ
• 爪楊枝

【手順】

1. バナナに爪楊枝で絵を描くように跡を付ける
2. 10分毎に観察しながら30分から1時間程度放置する

【原理の解説】

バナナの皮に含まれている「ポリフェノール」が空気に触れ酸化することで変色し、爪楊枝で付けた跡が黒く浮かびあがります。時間を空けながら観察を繰り返すことで、バナナの変化をより楽しめるでしょう。

ねんどやスライムのように感触遊びも楽しめる実験です。

【材料】

・片栗粉

・水

【手順】

1.ボウルに片栗粉を入れ、そこに水を少しずつ加える

2.手で握ったり離したりして、感触の違いを楽しむ

【原理の解説】

水と片栗粉をまぜたものに力を加えることで、液体の体積や触り心地が変わる「ダイラタンシー現象」が生じます。それにより液体と固体をいったりきたりするように変化するのです。色付けしてみるのもよいでしょう。万が一口に入っても大丈夫なよう、食紅を利用するのがおすすめです。

ここからは、子どもがより科学に親しむためのおすすめ書籍を紹介します。

これまであまりみられなかった幼児向けの実験本です。豊富なイラストや写真で、小さな子どもにもわかりやすくなっています。身近な材料で簡単におこなえるうえ、月ごとのテーマが設けられているため、「今月はこの実験をしよう！」と毎月のお楽しみにできそうです。

身の回りにある「なぜ？」をもとに、生き物や宇宙などについて楽しく学べます。対象は３歳ごろからで、可愛いカラフルなイラストを用いながら、生物・物理・科学・地学といった幅広い分野をわかりやすく解説。手軽に科学の不思議を確かめられる実験も紹介されています。

STEAM教育を軸にした、科学の楽しさが詰まった１冊です。小学校低学年からとありますが、大人が一緒におこなえば幼児教育にも十分活かせるでしょう。100種類以上の実験が収録されているため、長く楽しめます。STEAMのカテゴリ分けもされているため、子どもが好きな分野から試してみるものおすすめです。

幼少期から科学に親しむことは、子どものさまざまな面での力を伸ばすことに役立ちます。子どもの将来にも大きな影響を与えるといえるでしょう。科学あそびには、手軽に試せるものがたくさんあります。ぜひ、自然観察やおうち実験を通して親子で科学遊びを楽しんでください。子どもはもちろん、大人も新たな発見にワクワクできるかもしれませんよ。

•  Gakken｜みんな大好き！「科学遊び」　おうちでできる科学遊びをご紹介 （https://www.889100.com/column/column053.html）  
• 伸芽’Sクラブ｜子どもの探究心を育てて自発的、積極的な子に！（https://www.shinga-s-club.jp/column/%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AE%E6%8E%A2%E7%A9%B6%E5%BF%83%E3%82%92%E8%82%B2%E3%81%A6%E3%81%A6%E8%87%AA%E7%99%BA%E7%9A%84%E3%80%81%E7%A9%8D%E6%A5%B5%E7%9A%84%E3%81%AA%E5%AD%90%E3%81%AB%EF%BC%81/ ）
• embot｜「創造力」の意味とは？「発想力」とは違うもの？（https://www.embot.jp/news/36496 ）
• LITALICOワンダー｜創造力とは？その意味と必要な理由、子どもの創造力を養う方法（https://wonder.litalico.jp/news/column2106-2/ ）
• GLOBIS CAREER NOTE｜観察力がある人の特徴と観察力を鍛える方法（https://mba.globis.ac.jp/careernote/1450.html ）
• WONDER CODE｜空間認識能力とは？高い人の特徴や子どもの能力を高める方法（https://wondercode.jp/blog/what-is-spatial-recognition-ability-characteristics-of-people-with-high-ability-and-methods-to-enhance-childrens-skills/ ）
• WONDER CODE｜STEM教育とは｜日本の現状とSTEAM・STREAMとの違い（https://wondercode.jp/blog/what-is-stem-education-current-situation-in-japan-and-differences-with-steam-stream/ ）
• コエテコ｜STEAMS（スティームス）教育とは？（https://coeteco.jp/articles/10633 ）
• みんなの教育技術｜科学的思考力を育む「自学」のポイントとは？（https://kyoiku.sho.jp/97651/ ）
• Z-KAI｜「感じる心」を大切に！親子で理科や科学を楽しもう（https://www.zkai.co.jp/z-navi/post-8649/ ）
• 保育士バンク！｜保育園でできる実験遊び8選。ねらいや、子どもと楽しむ簡単なアイデア（https://www.hoikushibank-column.com/column/post_2138 ）
• HoiClue｜実験遊び大集合！〜家でも楽しめる20種類以上のおもしろ実験アイデア集（小学生にも！）〜（https://hoiclue.jp/800008884.html ）
• リケラボ｜最短5分！手軽にできるおもしろ科学実験10選（前編）夏休み自由研究にもオススメ！（https://www.rikelab.jp/post/3030.html ）
• VEGEDAY｜自由研究の実験に！水に浮く野菜or沈む野菜は、何で決まる？（https://www.kagome.co.jp/vegeday/store/202107/11313/ ）
• STEAM保育｜【甘いトマトの見分け方】～STEAM保育をもっと幼児期に～（https://www.youtube.com/watch?v=d97kdcFpBM8 ）
• HoiClue｜お絵かきバナナ〜ふしぎな実験遊び〜（https://hoiclue.jp/59495.html ）
• 保育士バンク！チャンネル【公式】｜バナナとようじで簡単！バナナアートのしくみと作り方【おもしろ実験】（https://www.youtube.com/watch?v=zGN0UOAOcx0 ）
• HoiClue｜簡単な片栗粉スライムの作り方〜乳児さんから楽しめる不思議な感触遊び〜（https://hoiclue.jp/800006239.html ）
• うるおいライフ｜にぎるとかたまる？　ふしぎな液体（https://www.water.city.nagoya.jp/uruoi_life/category/learn/145187.html  ）
• 保育士バンク！チャンネル【公式】｜【おもしろ実験】固くて柔らかい？魔法のような水のつくり方（https://www.youtube.com/watch?v=nCfCzSst3D0 ）
• 風鳴社｜園児と楽しむ はじめてのおもしろ実験12ヵ月（https://fuumeisha.co.jp/products/9784907537210 ）
• 学研出版サイト｜７歳までに知っておきたい科学えほん（https://hon.gakken.jp/book/1020530300 ）
• ディスカヴァー・トゥエンティワン｜「なぜ?」「どうして?」がよくわかる わくわく科学実験図鑑（https://d21.co.jp/column/steamedu/ ）