危険を排除しすぎるのはNG!?子どもが体験しておくべき小さな危険
危険を排除することが正しい?
幼いうちから親があまりに危険を排除しすぎてしまうと、チャレンジできないまま大きくなっていきます。例えば、高いところは危ないからと木登りや高い遊具で遊ぶのを避けたり、ケガをするかもしれないと極端に刃物を使用させなかったりすると、高い場所や刃物が本当に危険であるという体験をすることができません。
近年、公園からひと昔前は当たり前に遊んでいた遊具が「危ないから」という理由で撤去されています。特に箱ブランコは2001年~2004年に事故が多発し、そのまま一気に減少していきました。また、回旋塔や遊動木など製造が中止された遊具も。
大人目線で環境を整えてしまうことは、子どもが物事の良し悪しを分からないまま成長するという危険をはらんでいます。そのため、小さな危険を伴う遊びを幼いうちに経験させることが重要です。この経験をすることで、自分の力で危険や困難を乗り越える力を身に付けることができるでしょう。また、経験で得た本当の恐怖や危険は、相手が同じような経験をした際の共感にもつながります。
子どもはケガからさまざまなことを学んでいる!
親からすると、できればケガをしないように遊んでほしいもの。しかし、実はケガをすることで子どもは大きな学びを得ることができます。ここでは、その4つを紹介します。
他者の痛みに寄り添えるようになる
ケガや危険を経験しないまま大きくなると、周りの人の痛みを知ることができない人間になってしまう可能性があります。
ジャングルジムを登ろうとして足を滑らせ落下したとき、自分がその痛みを知っていれば、友達が同じ状況になった際に気遣い、心配する気持ちが芽生えるでしょう。また、自分が砂遊びでケガをしたら、一緒に遊ぶ仲間が同じ思いをしないようにと注意喚起することもできます。
特に相手の気持ちを感じ取るのに敏感になる幼児期は、思いやりの気持ちを育むチャンスです。自分の小さな「痛い」や「危ない」が相手への思いやりにつながります。
いろいろなことにチャレンジし自分の能力を知る
ケガや危険を体験することは、いまの自分はどんなことができるのかを知るものさしでもあります。
平均台のような台から両足でジャンプし着地しようとして転倒すると、自分が考えていた着地イメージと現実の能力のすり合わせが可能です。そして、危なかったと感じれば次はもっと低い台から挑戦したり、もう少しでできそうだと思えば、今度は同じ台から転ばないように着地したりしようとチャレンジするでしょう。
ケガや危険の経験は「次」に挑戦する原動力です。そして、着地に成功したときの自信や自己肯定感につながります。
また、子どもの体重は軽く柔軟性にも優れているので、転倒や遊具での失敗などは軽いけがで済むことも。あまり神経質にならず思いっきり遊ばせてあげましょう。
失敗したあと、試行錯誤する力
より意欲的で主体的に遊ぶ子どもほど健全に成長します。
一度滑り落ちて足を擦りむいた木に今度はケガをしないように登りたい、どこに足をかけたらよいか、昨日はどうして失敗したのかなど試行錯誤をはじめます。しかし、落下の恐怖がよみがえりもう木登りには挑戦したくないという子もいるかもしれません。そのとき感じた恐ろしさもとても大切です。遊びの中で養われる力には、運動能力だけでなく恐怖体験による危機回避能力もあります。
大人は、次はどうしたらケガをしないで遊ぶことができるかを一緒に考えるような声のかけ方をしてみましょう。ケガや危険を通して工夫しながら遊ぶことを学びます。
自分を制御できるようになる
ケガや危険の経験値は、新たな危険に遭遇したときに、自分を制御して身を守ることができる力につながります。
例えば、危険を経験した子どもは、その体験を踏まえて、「この高さから飛び降りると、ケガをするかもしれない。もう少し低い所から降りよう」「火に触れると熱くてやけどするから、少し離れておこう」などと行動することが考えられるでしょう。
言われたことを頭の中で理解することがまだ苦手な幼児期では、言葉で言われるよりも、自分の経験に基づいて行動することで、自分を制御する方法を身に付けることができるのです。
子どものうちに体験した方がよい危険なこと
2011年に発行された「子どもが体験するべき50の危険なこと」という本で、著者のゲイバー・タリー氏は子どものうちに体験した方がよい危険なことを提案しています。ここではその中から3つを紹介します。
高い所から落ちる
高い所から落ちることで、地面から受ける衝撃を逃がせるような降り方を身に付けることができるでしょう。つまり、受け身の取り方を習得するということです。そうすれば、高い所での混乱は少なくなると考えられます。
刃物を使ってみる
親が料理をしている姿を子どもは目にしています。そのため、包丁を使ってみたい!と思う子どももいるでしょう。しかし、3・4歳の子どもには、刃物が危ないという認識がまだありません。そのため、まずは危ないといった認識をしっかり子どもに教える必要があります。
料理などお手伝いさせるときは子どもに適した段階を踏んで、行うのがおすすめです。子ども向けに、刃先が丸い包丁や刃が短い包丁などもあるので活用しましょう。力を入れすぎないことや、刃を動かす際には自分から向こうに動かすなどのルールを守ることも大切です。
レシピ本に逆らってみる
決まったレシピ通りに料理を作らず、子どもの好きな材料を集め、「混ぜ合わせてみたらどうなるのかな?」など、自分たちで美味しそうだと思う組み合わせを考えてみるのも楽しいですね。試行錯誤して作り出すことで、新たな味を生み出すことができるかもしれません。
子どもに刃物や火を使わせるときに気を付けること
刃物や火は、子どものときはまだ危ないと敬遠しがちな親も多いでしょう。ただ、この2つは生きていくためには必要不可欠なもの。早いうちから正しい使用法を身に付けておいて損はありません。どちらも事前に注意点を伝え、約束を守ることが大事です。
ここからは刃物や火を使うときの注意点を見ていきましょう。
刃物を使うときの注意点
はさみや包丁などの刃物は、子どもが勝手に使用できないよう手の届かない場所に保管するようにしてください。子どもが使う場合には、刃物の使い方をしっかりと説明し約束を伝えます。子どもを信頼して刃物を渡し、危なっかしい様子があってもそのまま手を出すことなく見守りましょう。信頼してもらえた気持ちは子どもにも伝わるでしょう。
ただし、前述したように、子どもの年齢に適した見守りが必要になってきます。
火を使うときの注意点
火は暮らしの中でとても重要です。しかし、近年はオール電化の家がメジャーになりつつあり、火を見たことがない子供たちが増えているといいます。火を正しく使えると災害のときなどにも役立つので、万が一に備え、火の正しい扱い方やおこし方を知っておくとよいでしょう。
お休みのときなどに、キャンプや花火、バーベキューなどを一緒にしてみるのもいいでしょう。できるだけ、火に触れる機会を増やしてあげることで子どもが興味を持ちます。小さな子どもでもゆれる炎や、花火を見るだけでも楽しいと感じるでしょう。現在では、火を起こす方法や災害時に役立つ知識などを学べるイベントや普段公園などで禁止されている、焚き火ができるプレーパークなどもあります。家族で火について考える日を作ってみるのもおすすめです。
こんなケガはあってはならない
ケガや危険な体験を通して学ぶことは多くありますが、命にかかわるような大きなけがが起きる可能性を放置してはいけません。ブランコをあまりに勢いよく立ちこぎしていたり、ジャングルジムの頂上で仁王立ちしていたり、頭のケガや身体を強く打つような大ケガはきちんと予測して防いであげましょう。
また、大人の不注意によって引き起こされるケガも未然に防ぎたいものです。刃物をしまい忘れたために子どもが手を切ってしまったり、長いスカートや首周りに紐が付いた服装で遊具で遊び衣服が巻き込まれてしまったりという事故は、大人の危機管理能力で防ぐことができます。
学びにつながらないただのケガは、痛い思いをさせるだけなので気を付けましょう。
さいごに
子どもがケガをしないようにと注意深く見守って先回りし、危険を排除するのも一つの愛情です。しかし、小さなケガをするかもしれないことをさせてあげるのも、子どもが成長するチャンスです。
子どもの自己コントロール力や挑戦する気持ち、誰かを思いやる気持ちを育むには、ケガをすることもときには必要です。子ども自身で自分の安全を守りながら遊べるようになると、親が口出ししなくても、どんどん挑戦するようになるでしょう。私たち大人が近くで見守りつつ、子どもの挑戦を後押ししてあげてください。
参考サイト
- 平成の間に「公園」が変わった…減った遊具と増えた遊具|FNNプライムオンライン(https://www.fnn.jp/articles/-/4925)
- 遊びの大切さ | (一社)日本公園施設業協会(JPFA)(https://www.jpfa.or.jp/philosophy/asobi/ )
- 消費者庁|Vol.526 はさみなどの刃物を子どもが勝手に使わないように! | 消費者庁(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20201022/#:~:text=%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%8C%E3%81%AF%E3%81%95%E3%81%BF%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%81%AE,%E4%BD%BF%E3%81%86%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E3%80%82 )
- O'Reilly Japan - 子どもが体験するべき50の危険なこと(https://www.oreilly.co.jp/books/9784873114989/ )
- 火を体験したことのない子供たちへ、「火育」で得られる自立心 | GARVY PLUS(https://garvyplus.jp/single?type=Column&id=7739 )