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アイメッセージが効果的!気持ちが伝わるアサーティブという自己表現

濱田しおり
2023/03/07 07:03
子どもに注意するとき、あなたはどんな話し方をしていますか。ビジネスや教育でも取り入れられている「アサーティブ」というコミュニケーションスキルは、さわやかに自己主張するテクニックで、自分も相手も尊重することが特徴です。人間関係に悩む人におすすめのスキルですが、子育てにも活用できます。子どもとのコミュニケーションにおいてアサーティブを意識するメリットや、具体的な方法について解説しましょう。

アサーティブはどんなコミュニケーション方法?

どのようなコミュニケーションをアサーティブというのでしょうか。詳しく解説します。

アサーティブとは

アサーティブ(Assertive)は、アサーション(Assertion)やアサーティブネス(Assertiveness)、アサーティブコミュニケーションとも言われます。アサーティブは「誰しも等しく自己主張する権利がある」という思想を前提に、自分と相手のどちらも傷付かないことを目標とした、さわやかな自己表現方法です。

アサーティブは1949年にアメリカの心理療法として始まり、1970年代の女性や黒人の解放運動を経て、人間関係を円滑にするソーシャルスキルとして発展してきました。現在は日本においても、ビジネスや教育、医療、福祉などのさまざまな分野で役立つスキルとして取り入れられています。

コミュニケーションの3つのタイプ

アサーティブの考え方では、人が自己表現するときの傾向として、大きく3つのタイプがあります。相手に合わせがちで自己表現が苦手な「ノンアサーティブ(非主張的)」と、自分の思いや要求を強く主張する「アグレッシブ(攻撃的)」、そして自分と相手どちらも尊重しようとする「アサーティブ(主張的)」です。

普段ノンアサーティブな自己表現が多い人でも、子どもや夫に対してはアグレッシブなときがある、という人もいるでしょう。人のコミュニケーションタイプは1つに限られるわけではなく、自分の状況や相手などの要素によって変わります。

アサーティブなコミュニケーション例

アサーティブなコミュニケーションとは、具体的にどのような会話でしょうか。イメージしやすいように会話の例を紹介します。

ママ友との会話の場合

ママ友から「明日ランチに行かない?」と誘われたけど、都合が悪いときの場面です。

  • ノンアサーティブ「うん、いいけど…(明日は買い物に行きたいんだけどな…)」
  • アグレッシブ「明日はムリ!もっとはやく言ってよ」
  • アサーティブ「誘ってくれて嬉しい!でも明日は買い物の予定だから行けないの。来週都合いい日はある?」

ノンアサーティブは遠慮して自分の思いを伝えられておらず、アグレッシブは自分の都合ははっきり伝えますが、相手の気持ちを尊重していません。アサーティブは、相手が伝えた内容を受け入れたうえで、自分の言いたいことは素直に伝えています。双方が納得できる結果を導くことができ、この場面において理想的なコミュニケーションだといえるでしょう。

子どもとの会話の場合

子どもが夜ごはんの前にお菓子を欲しがった場面の一例です。

  • ノンアサーティブ「え~食べてほしくないけどなぁ~…(と言いながら渡す)」 
  • アグレッシブ「ダメ!もうすぐごはんだから我慢しなさい!」 
  • アサーティブ「お菓子が食べたいのね。でもいまお菓子を食べると、夜ごはんがおいしく食べられなくなるね。がんばって作るから、食べてもらえないとお母さんは悲しいな。食べたい気持ちはわかるんだけど。…先にできたおかずから食べるのはどうかな?」 

親と子どもの会話の場合、いつも対等な立場で話すことは困難です。しつけや指導が必要なときもあり、アサーティブな会話ができないこともあるでしょう。しかし意識をすれば、アサーティブの大切な要素である「自分の相手も大切にする」姿勢は示すことができます。

アサーティブはどんなメリットがあるの?

アサーティブを子どもとのコミュニケーションに取り入れると、次のようなメリットが考えられます。

お互いにwin-winなやり取りができる

親子の会話では、親の方が上の立場にいて、指示をしたり注意したりするシーンがよくあります。その場合、子どもは親の言うことに従う結果になりがちです。あるいは、子どもの「~したい!」という強い自己主張を、親が我慢して受け入れることもあるでしょう。このようなコミュニケーションは双方がwin-winとは言えず、どちらかにストレスが溜まってしまいます。アサーティブでお互いが納得できるコミュニケーションが増えれば、どちらかがストレスを溜めたり意欲を削がれたりすることが減り、よい関係性を保つことができるでしょう。

子どもに気持ちが伝わりやすい

アサーティブを意識して会話すると、子どもが親の気持ちを受け入れやすいというメリットがあります。特に子どもに注意する場面の場合、アグレッシブな表現だと子どもに圧を感じさせて、萎縮させたり、反対に反発心を与えたりするかもしれません。そうなると、親が注意する理由である「心配」や「不安」といった本当の気持ちが伝わらない可能性があります。一方でアサーティブな伝え方なら、子どもに親の素直な気持ちが伝わりやすいでしょう。

ただし注意したいのは、気持ちが伝わることと、子どもが自分の思うとおりに行動してくれることは違うということです。自分の要求通りに子どもが動くよう誘導するのでは、アサーティブとは言えません。子どもの行動は子ども自身が選択する、ということも忘れないようにしましょう。

子どものコミュニケーション力が高まる

自分の口ぐせが、いつの間にか子どもに移っていることは少なくありませんよね。子どもは無意識のうちに、身近な人からコミュニケーションの取り方を学ぶもの。親がアサーティブな言葉遣いや姿勢を心がければ、子どもは自然に真似します。アサーティブなコミュニケーションを身に着けることは、子どもが友人や周りの人と良好な人間関係を築くことに役立つでしょう。いまアサーティブな人はさまざまな場面で求められており、非認知能力として重要なソーシャルスキルといえます。

アサーティブの具体的な方法

アサーティブなコミュニケーションを行うための具体的な方法を紹介します。

自分の本当の気持ちを知ろう

アサーティブは自己表現の方法なので、自分で自分の気持ちをよくわかっている必要があります。会話の例で挙げた、お菓子を食べようとする子どもに「食べてほしくないけどなぁ」とか「ダメ!もうすぐごはんだから我慢しなさい!」と伝えるのは、自分の気持ちが表現されていません。その言葉の奥にあるのは、「栄養が偏って成長に影響しないか心配」とか「夜ごはんが余って悲しい」といった気持ちでしょう。

ほかにも「はやくしてね」や「もうやめなさい」などと伝えるシーンはたくさんあると思いますが、そのときはどんな気持ちがあるからでしょうか。例えば朝の出勤前なら「仕事に遅れて仕事相手に迷惑をかけると、申し訳なくてつらい」などがあると思います。まずは、子どもに伝えたい自分の本当の気持ちを自覚することが大切です。

自分の思いはIメッセージで伝えよう

「I(アイ)メッセージ」を使うことが、アサーティブにおいて大切なポイントです。Iメッセージとは「私」を主語にした表現のこと。反対に「あなた」を主語にした表現は「you(ユー)メッセージ」と言います。例えば子どもに伝えるなら、「(あなたは)お菓子食べちゃダメ」「(あなたは)はやくして」と伝えるのがyouメッセージ。「私はあなたの栄養が偏らないか心配」「私ははやく行きたいよ」と伝えるのがIメッセージです。

比較すると、youメッセージは相手を責めたり否定したりする印象になる一方で、Iメッセージだとやわらかい雰囲気になります。Iメッセージを意識することが、子どもに自分の気持ちを伝えるためのコツです。

肯定的な言葉や感謝の気持ちを伝えよう

アサーティブの「自分も相手も尊重する」という前提に戻ると、子どもの気持ちや状況を否定したり非難したりする言葉は、使わないように気を付けましょう。「お菓子は食べられないよ」と伝えるより「お菓子の代わりにおかずを食べよう」と伝える方が肯定的で、子どもにとっても受け入れやすい言葉になります。

また子どもが自分の気持ちを聞いてくれたり、子ども自身の気持ちを話してくれたりしたことに対して、感謝の気持ちを伝えることも大切です。「ありがとう。〇〇ちゃんの気持ちを聞けて嬉しいよ」「お母さんの話を聞いてくれて、ありがとう」と伝えられて、いやな思いになる子どもはいません。コミュニケーションできることの喜びを素直に伝えることで、子どもと更によいコミュニケーションをとることにつながります。


さいごに

攻撃的でも受け身でもないアサーティブな自己表現は、大人同士の人間関係だけでなく、子どもとのコミュニケーションにも生かせます。親子間でアサーティブなコミュニケーションを経験した子どもは、他者との関係性の中で、自分自身も他者も大切にできるようになるでしょう。親が子どもにいつもアサーティブに対応するのは困難ですが、アイメッセージや感謝を伝えることなど、取り入れやすいポイントをぜひ意識してみてください。

参考サイト

    この記事の著者
    濱田しおり(peekaboo)
    ライター
    2020年生まれの娘を育てるママです。出産前はNICU・小児科看護師、看護教員をしていました。自分を褒めながらハッピーな育児をしたい!が目標。子どもと家族の健やかな育ちを応援したいという想いで執筆しています。
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