国立小学校にはどんな特徴がある?魅力や注意点、受験を徹底解説!
国立小学校とは?
小学校には「私立」「公立」「国立」がありますが、令和4年現在19161校ある小学校のうち、国立はわずか67校となっています。東京都は6校と多めですが、ほかの県では1~2校程度なのだとか。
それでは国立小学校とは、どのようなものなのでしょうか?
役割

国立小学校には、大きく3つの役割があるといいます。一つ目は「教員の研修の場」であること。国立小学校は、国立大学教育学部や国立教育大学の附属小学校を指します。そのため、教員を志す学生の実習の場としての役目があるのだそうです。
二つ目の役割は「最新の教育法を試す場」で、大学で研究されている新しい理論や教育法が国立小学校の授業に取り入れられているといいます。国立小学校では、公立小学校と同様に文部科学省の学習指導要領に沿って授業が進められますが、最先端の教育法などを取り入れられることで、授業の広げ方や内容には独自性が強いのが特徴です。
さらにこうした新しい教育を取り入れた成果を、公立小学校へ広めていくことも大切な役割のひとつといえるでしょう。
教員・設備の質

国立小学校は、教員の育成や新しい教育法の実践などを行うことから、経験豊富な質の高い教員が集まっているといいます。また学校によって差はありますが、設備面でも質の良い環境が整えられている傾向にあるといいます。
学費

国立小学校の学費は、公立小学校と同様に無料となっています。ただし制服やランドセルの指定を設けている学校もあるので、入学時にまとまったお金が必要になることも。また通学にバスや電車などの公共交通機関を利用する場合は、交通費がかかるので注意が必要です。
国立小学校の受験内容
国立小学校の受験は、どのようなものなのでしょうか?受験内容は学校によって異なりますが、以下のような試験が行われることが多いようです。
筆記試験

国立小学校の筆記試験では、幅広い内容が出題されます。「言語」や「数」「一般常識」などのほか、記憶力を試す問題も出題されることが多いのだとか。テープレコーダーなどで読まれる物語について、登場人物やその行動といった内容に関する出題をすることで、子どもの「聴く」力が試されることでしょう。
行動観察

複数の子どもたちがグループになって課題をこなしたり、自由遊びをしたりといった行動観察を行う学校も多いといいます。行動観察では「先生の指示を聞き、きちんと従えるか」「ほかの子どもときちんとコミュニケーションが取れているか」「リーダーシップを発揮できているか」などがチェックされるようです。
私立小学校では礼儀正しさや愛嬌などが重視されることも多いですが、国立小学校では積極性や活発性が重んじられる傾向にあるといいます。ただしコロナ禍において、行動観察を取りやめる学校も少なくないため、入試要項を確認しておきたいものですね。
制作

工作や絵画などの制作課題を取り入れている学校も、少なくありません。指示にしたがって制作を進められるかどうかだけでなく、ハサミやノリなどの使い方や手先の器用さなどがチェックされるようです。
運動

運動の試験では、ただ運動ができるかどうかというだけでなく、教員の細かい指示に従って試験に臨めるかどうかも重要なチェックポイントとなるでしょう。
面接

国立小学校の面接は、親子で行うこともあれば、子どもだけ、保護者だけで行われることもあるといいます。保護者を対象に行われる場合は、ママやパパの人間性や家庭での教育方針なども結果に大きく影響すると考えられるでしょう。
また国立小学校では、学校行事やPTA活動への保護者の協力が得られそうかどうかなども、選考基準の一つとなるかもしれません。国立小学校には幼稚園から進学する子どもが多い傾向にあるため、保育園から受験する場合はとくにしっかりと志望理由を用意しておくといいでしょう。
学校によっては、子どもを対象に口頭試問が行われることもあります。口頭試問であれ面接であれ、試験官の目を見て、しっかりとした口調で受け答えできることが望ましいといいます。当日緊張して場の空気に飲まれてしまわないよう、親子で練習を重ねておきたいものですね。
抽選

私立小学校では、試験結果をもとに能力のある子どもが上位から順に合格となります。しかし国立小学校では、試験に合格ラインが設けられていて、それをクリアした子どもの中から合格者を抽選で選ぶことも少なくないといいます。
つまり試験でどんなに良い結果を収めたとしても、運次第で結果が左右される抽選によって、不合格になってしまう可能性があるのです。国立小学校には、新しい教育の効果を研究する役割があるため、子どもの学力に多少の差異があることが望ましいのだとか。
抽選の行われるタイミングや回数は学校によって異なりますが、希望者が多いとその分合格できる可能性も低くなるため注意が必要です。
国立小学校の魅力
人気の高い国立小学校ですが、具体的にどのような魅力があるのでしょうか?
私立小学校に比べて学費が安い
国立小学校の学費は、公立小学校と同様に無償となっています。私立小学校の学費の目安が1年につき80~100万円程度だということを踏まえると、お金をかけずに高度な教育を受けられるのは大きな魅力ですよね。
ただし学校によっては、年に数万円程度学校設備への費用負担が求められることもあるので、注意が必要です。また学費が少ない分、私立と比べると施設や設備の面で差が出やすい点も考慮しておくといいですね。
教員の質が高い
国立小学校には、その地域の中でトップクラスの教員が選抜されているといるという点も、うれしいポイントではないでしょうか?また学校によっては、中学・高校のように教科担任制が採用されていることもあるといいます。
公立小学校は基本的に学級担任制となっており、担任がほとんどすべての授業を担当するのが一般的ですよね。教科担任制では、各教科ごとに授業を行う教員が変わるため、より質の高い授業を受けられるでしょう。
独自性のある授業が受けられる
国立小学校の授業は、公立小学校と同じように文部科学省の学習指導要領に沿って進められます。しかし国立小学校では、教員によって具体的な授業内容や進め方が大きく異なるという特徴があります。
体験学習を積極的に取り入れたり、複数の教科を組み合わせた画期的な授業が行われたりと、公立小学校とは一線を画した充実した内容となっています。また、附属大学で研究されている最先端の教育法が採用されることも珍しくありません。
公立小学校に比べて子どもの学力が高い
国立小学校では入学試験が行われるため、一定の学力基準を満たした子どもでなければ入学することが難しいでしょう。そのため公立小学校と比べ、生徒の平均学力は高いといえます。そんなレベルの高い友だちとともに切磋琢磨しながら学習に励むことで、より子どもの能力を高めることができそうですね。
さらに国立小学校には、子どもの教育に対して関心の高い家庭が集まる傾向にあるといいます。また私立小学校と違い、裕福な家庭ばかりではないことから、家庭の経済状況の与える影響が少ない点も魅力のひとつといえるでしょう。
いじめ・学級閉鎖への対策がしっかりしている
国立小学校では、授業だけでなくいじめや学級閉鎖などの問題に対する意識も高いといわれています。またいじめ問題などへの新しい取り組みなどが行われることもあるというのは、子どもを預ける保護者としてうれしいですね。
国立小学校の注意点
国立小学校には多くの魅力がありますが、その一方で注意しておくべきデメリットもあります。それでは、具体的にどのような難点が考えられるのでしょうか?
新しい教育が効果的でない可能性がある
国立小学校では、新しい教育法が実験的に実践されますが、可能性は低いものの思わしくない結果がでるものもあるかもしれません。また公立小学校と比べて教育実習生の受け入れが多いため、教育実習の時期に子どもが授業へ集中しづらくなる可能性も懸念されます。
通学が負担になることがある
国立小学校には公立小学校と同じように学区がありますが、その範囲は公立よりも広いため、毎日の通学が負担になるケースも考えられます。長年通い続けることを考慮したうえで、通学時間や通学手段、交通費に無理がないか判断することをおすすめします。
また国立小学校の下校時間は、公立小学校よりも遅めの16時頃が目安となるため、帰宅時間が遅くなってしまうという点にも注意しましょう。
近所の子どもとの関係が薄い
国立小学校では、広い学区内から子どもが集まるため、近隣に同級生がいないという状況も考えられます。近所の子どもと接する機会が少なくなってしまうことから、放課後や休日などに友だちと遊ぶのがなかなか難しいことも。
近くの公園などで遊ぶときや子ども会の活動に参加するときなど、親しい友達がいないことで、子どもがさみしさを感じてしまう可能性もあります。
教科書の内容を教わらないことがある
国立小学校の授業はオリジナリティにあふれているため、教科書を使わない教員や一風変わった視点から授業を展開していく教員も少なくありません。そのため、教科書に沿って授業を進める公立小学校と比べて授業が遅れたり、教科書の内容の一部を授業で取り扱わなかったりすることも。
また特色の強い教育だからこそ、教員との相性によっては子どもの成績が伸び悩む可能性もあるようです。
保護者の負担が大きい
国立小学校では公立小学校のように教科書通りに授業が進められるわけではないため、教科書の内容を家庭で学ぶよう指示されることもあるといいます。公立小学校と比べて家庭学習が重んじられることも多いため、それをサポートする保護者の負担も大きくなるかもしれません。
なかには1年生から塾に通わせる家庭もありますが、そうすると毎月の月謝が必要になるため、教育費が増えてしまう点に注意が必要です。また国立小学校では、保護者の参加する学校行事やPTA活動が多い傾向にあるといいます。
共働き家庭やひとり親家庭などの場合、そうした行事や活動への参加が大きな負担になるかもしれません。またなかには定期的にお弁当が必要になる学校などもあるので、保護者の負担がどのくらいなのか前もって確認しておくといいですね。
さらに入学してからしばらくは子どもの通学に付き添いが求められるので、送迎の時間がとれるかどうかもチェックしておくのが望ましいでしょう。
教員の異動がある
私立小学校の場合、基本的に教員の異動はありませんが、国立小学校では公立と同様に違う学校へ異動となることがあります。そのため、私立小学校のように特定の教員と長期間深い関わりを持つことは難しそうですね。
内部進学できるとは限らない
国立小学校に入学したからといって、エスカレーター式に内部進学ができるわけではありません。中学・高校へ進むためには試験に合格する必要があるため、子ども同士で競い合うことになります。
また学校によっては附属の中学校や高校がない場合もあるため、注意してくださいね。
さいごに
国立小学校の特色や教育方針は学校によって大きく異なるため、受験を検討している学校の説明会に足を運んだり、パンフレットをチェックしたりすることをおすすめします。また国立小学校では抽選が行われることが多いので、場合によっては試験すら受けられない可能性もあります。
そうした国立小学校ならではの事情を考慮したうえで、必要であれば私立小学校の併願も検討してみてはいかがでしょうか?ただし近年はコロナ禍で試験の日程が前倒しになるケースもあり、私立小学校と国立小学校の受験の間隔が短くなることも。
併願することで満足な受験準備ができなくなる可能性もあるので、各校の試験のスケジュールもチェックしてから受験するかどうかを判断することをおすすめします。