【幼児教育者監修】登園拒否や不登校にはどう対応する?園や学校に「行きたくない」と言った時の原因と対策
年齢によって原因はさまざま。幼稚園児や保育園児の登園拒否
子どもが登園拒否や登園しぶりをするのは、それぞれ何かしらの理由があります。まずは、幼稚園児や保育園児が登園拒否をする理由について考えていきましょう。
年少児の登園拒否の理由
これまでずっとパパ・ママと一緒に過ごしてきた生活が一転、初めての社会生活に不安を感じることでしょう。パパ・ママと離れたくないという気持ちから登園拒否を起こす子どもは少なくありません。また、3~4歳は徐々に友だちや先生と遊ぶ機会が増えてくるころ。友だちとの関わり方がわからない、先生が怖いといった不安感から、登園拒否につながることもあります。
年中・年長児の登園拒否の理由
クラス替えなどで環境が変わることで、変化に対応できない子どももいます。また、給食がうまく食べられないなど、園での生活で何かしらのストレスを抱えている可能性があるかもしれません。年齢が上がるにつれ、取り組むカリキュラムも難しくなります。苦手なことが出てくると周りと比較してしまい、自信がなくなり登園したくなくなることもあるでしょう。苦手な友だちがいるから行きたくないという登園拒否もあります。
また、年齢を問わず弟や妹が生まれたことによる赤ちゃん返りが登園拒否につながることも。「行きたくない」と直接言葉にするのではなく、体調不良として現れることもあります。
小学生の登校拒否は増加傾向に!その原因は?
文部科学省の「令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」によると、不登校児童数が増加していることがわかります。
なぜ登校拒否が増えているのでしょうか。
学びも遊びも選択肢が増えている
園児と同じような理由で登校拒否になる小学生もいるでしょう。それに加えて登校拒否が増加傾向にある理由のひとつに、学びと遊びの選択肢が増えたことが挙げられます。高度経済成長期の学校は、子どもにとって楽しい場所であり、新しいことを学ぶことができる刺激的な場所でした。
しかし、現在ではだれでも簡単にインターネットやSNSにアクセスでき、学校で学ぶ以外にも自分で情報を集められる時代です。学校以外で友だちを見つけることもできるでしょう。そのため、学び方も遊び方も選択肢が増え、学校は刺激が少ない場所と感じる子どもが増えているのが、登校拒否が増えている原因のひとつです。
コロナ禍で増えた『学校へ行かない』という選択肢
新型コロナウイルスの感染拡大により、小学校が休みになった時期があったことも、登校拒否が増えた原因です。これまでできていたことができなくなったときに、大きなストレスを感じる人が多いもの。行事の自粛、黙食、マスク着用などは子どもにとっても変化が大きく、学校生活が辛くなったと考えられます。
これまでは“学校に行くのが当たり前”だったのに対して、コロナ禍の登校自粛を経験したことにより“学校に行かない”という選択肢が生まれたことが登校拒否を増加させています。
登園拒否や不登校の傾向と対策
登園拒否や不登校の傾向は大きく分けて2つのパターンがあります。それぞれの対策を見ていきましょう。
ケース1:理由がはっきりとしている
まずひとつめは、登園拒否や不登校の原因がはっきりしているケースです。未就学児と小学生で共通しているのは、友だちや先生とうまくいかない、合わない、楽しくないといった理由。小学生の場合は、勉強でのつまずきも考えられます。
この場合「幼稚園に一緒に行ってほしがる」「友だちとケンカした」などと、登園拒否や不登校に至るまでに合図を出していることがあります。「いつもと違うな」と感じることがあれば、まずは子どもの様子をしっかりと観察することが大切です。
ケース2:理由がはっきりしない
登園拒否や不登校には理由があるものと思っているパパ・ママも多いと思いますが、実ははっきりとした原因がない場合もあります。夜遅くまで起きている、外で遊ばないなどの生活を続けた結果、自律神経が乱れてしまい「朝起きられなくなった」「なんとなく行きたくない」と登園拒否や不登校になることも。季節によっては、寒暖差や気圧の変動によるホルモンバランスの乱れもあるでしょう。「行くのはしぶるけど行ってしまえば楽しく過ごせる」といった場合は、このケースに該当する可能性があります。
こういった場合は、早寝早起き、栄養バランスの良い食事、外で体を動かすなど規則正しい生活をすることが改善につながります。規則正しい生活で自律神経が整う、運動してドーパミンが分泌されるなどすると、体内のホルモンバランスが整い気持ちの切り替えがスムーズになります。その結果、登園・登校ができるようになる傾向にあります。
登園・登校拒否の子どもの精神状態は?
不登校の子どもは「学校には行くべきだ」と「学校に行きたくない」という相反する気持ちがあり、どちらかを取るとどちらかは実現できない状況にあります。これは“ダブルバインド”という精神状態。気持ちが混乱して、どうにも行動できなくなっている可能性があります。
これ以外にも「家は楽しいけど親の不安やプレッシャーを感じて辛い」「家で過ごしたいけれど家も居心地が悪い」といった状態も考えられます。この状態が続くとストレスが大きくなり、さらに学校に行くのが難しくなることもあるのです。
「行きたくない」の気持ちを否定せず気持ちに寄り添うことが大切
子どもが学校や幼稚園、保育園に行きたくないと言いだした場合、親はどう対応すべきなのでしょうか。具体的な対処方法を見ていきましょう。
まずは気持ちを否定せず受け止める
子どもが「行きたくない」と言いだしたとき「行かないとだめよ」と否定したり「なんで行きたくないの?」と質問したりしてしまう人が多いでしょう。しかし、それは逆効果です。なにより大事なのは、行きたくないという気持ちを「そっか、行きたくないんだね」と受け止めてあげること。もしかすると子どもは、やっとの思いで行きたくない気持ちを言葉にしたのかもしれません。否定せず感情を受け止めてあげることが、子どもの安心につながります。
「どうしたら行けるか」を考えよう
行きたくないという気持ちを受け止めたあとに、どうしてそういう気持ちに至ったのか、その理由を探りましょう。子どもに理由をたずねるのはもちろんですが、子どもの言葉がすべて本当とは限りません。本当の原因は言いたくない、言いづらいなどの理由で、他の原因を挙げる可能性もあるのです。言葉をそのまま受けとるのではなく、いろいろな角度から原因を探る必要があります。
ここで大事なのは「どうして行けないのか」と原因を追求するのではなく「どうしたら行けるようになるか」を考えることです。行けない原因を追求しすぎてしまうと、子どもは嫌だったできごとを何度も思い出さなくてはならず、どんどん辛くなってしまいます。子どもには最低限の確認をするに留めておきましょう。
学校や園でのあれこれは親には把握しきれないので「行きたくないと言っているのですが、最近の様子を教えてください」と先生にも確認し、早めに共有することも大切です。「お母さんと一緒なら行ける」「保健室なら行ける」など、子どもにとって最善の環境を整えてあげられると、解決がスムーズになることも多いです。どうしたら行けるようになるか、先生と連携を取りつつ検討してみましょう。
登園拒否なら先生を信頼して明るくバイバイするのもあり
未就学児の場合、園への不満ではなく、新しい環境やパパ・ママと離れることに不安を感じている可能性もあります。園に行く前はとにかくグズグズするけど、あとで先生に確認すると「楽しく過ごせていましたよ」と言われるなら、このケースかもしれません。毎朝お別れする前にこの世の終わりのような泣き方をされると、胸が締めつけられるのも当然です。
しかし、ここで「行かなきゃダメよ」と説得したり「大丈夫?」と不安感をあおったりするのは逆効果!「さみしいのね、ママもさみしい!」と、子どもの行きたくないという気持ちに共感し「でも、ママも頑張るね!バイバイ!行ってらっしゃい!」と、サッと立ち去りましょう。そして帰ってきたら、明るく「会いたかったよー!」と伝え、子どもを抱きしめます。子どもの気持ちに共感して、絶対楽しく過ごせると信じること、これを繰り返していけば、いつの間にか楽しく通えるようになるでしょう。
親が焦りすぎないことも意識して
子どもが行きたくないと言い出したら「何かトラブルがあったのでは」「もう幼稚園や学校に行けなくなるかも」など、パパもママも焦ってしまいますね。些細なきっかけで登園拒否や不登校につながることもあるため、焦りすぎは禁物です。親の焦りは子どもに伝染してしまうもの。親はあまり深刻にならない、もしくはたとえ焦っていたとしても、焦る様子を子どもに見せないことも大切です。
大人でも、会社に行きたくないと思うことはあります。だからと言ってすぐに会社を辞めるわけではありません。さらに大人の場合、仕事が辛いときには、転職する、配置換えを希望するなど、他の選択肢を探すことができます。しかし子どもは学校や園に行くか休むかという選択肢しかなく、何かトラブルがあったっときはもちろん、何となく気分が乗らないときに「休みたいな」という考えに至るのも不思議ではありません。「子どもは絶対に学校に行くべきだ」という決めつけを持たず、子どもの置かれている状況を把握してあげましょう。行きたくないという気持ちを親が受け止めるだけでも気持ちが落ち着き、すんなりと学校に通えるようになる場合もあります。
さいごに
子どもが学校や園に行きたくないと言い出すのは、珍しいことではありません。子どもに登園拒否や不登校、行きしぶりの兆候が見られたら、説得や否定をせず、まずは気持ちを受け止めて入れてあげるようにしましょう。それだけでも、子どもは気持ちが楽になるはずです。深刻になり過ぎると子どもも辛くなってしまうため、焦り過ぎず冷静に学校に通える方法を模索することから始めましょう。
この記事の監修者
- 監修者名:竹内エリカ
- プロフィール:幼児教育者であり二児の母。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修了士課程修了。20年にわたり大学機関にて子どもの発達心理や行動科学について研究し、延べ20,000人もの親子と関わる。スポーツコーチングにも携わり、ダンス指導では生徒を日本一に導いた経験を持つ。育児関連商品・知育玩具などの監修をはじめ、発達支援では多動症・不登校の克服からギフテッドと呼ばれる子ども達のケアなど育児・教育の専門家として活動。著書「男の子の一生を決める0~6歳までの育て方」他、出版・監修は60冊以上。
- 参照URL:http://www.jakc.or.jp/cv