赤ちゃんの「指さし」は4種類!指先から伝わる赤ちゃんの気持ち
赤ちゃんの指さしには意味がある?
赤ちゃんが興味を持った物を一生懸命に指さす仕草はとてもかわいらしいですよね。
一方で、なにを伝えたいのかわからずお手上げ状態になったり、あまりに繰り返されるため、おざなりな対応をしてしまったりしたパパやママもいるのではないでしょうか?
実は赤ちゃんは指さしをすることで、大人の心に訴えかけ、自分の目的を達成しようとしているのです。指さしは赤ちゃんのコミュニケーション能力の発達において大切な役割を果たしています。
まずは、赤ちゃんが指さしを始めるまでの過程と、指さしの種類を紹介していきましょう。
赤ちゃんが指さしをするようになるまで
2~3か月の低月齢の赤ちゃんでも大人にあやされたら笑い、声をかければ喃語が返ってくることもあります。赤ちゃんは大人とコミュニケーションを繰り返すことで徐々に社会性が発達するのです。
生後9ヶ月頃になると、赤ちゃんは自分の手を伸ばした先のものを大人が一緒に見たり、取って渡してくれたりするうちに、物を介して大人とコミュニケーションをとれるようになってきます。それまで相手と自分しか存在しなかった赤ちゃんの世界に、他のものが存在していることに気づき始めるのです。
自分が手を伸ばした方向を大人が注目することに面白さを感じた赤ちゃんは、まずは手ざしで意思を示すようになり、その後、徐々に指先の運動機能が発達すると、人差し指での指さしができるようになります。
指さしは人間の赤ちゃんだけのコミュニケーションツール
赤ちゃんの指さしは、言葉を使用しない人間の赤ちゃん特有のコミュニケーション方法です。国籍に関係なく、どの国で生まれた赤ちゃんも1歳前後になると指さしをするようになります。
動物の中で指さしをするのは、人間だけです。知能の高いチンパンジーなど他の霊長類の赤ちゃんを含め、人間以外の動物の赤ちゃんは指さしをしないことが研究結果でわかっています。(※1)
赤ちゃんが伝えたいことを大人がくみ取り、共感や声掛けをすることで、赤ちゃんは「自分の気持ちが伝わった!」と達成感を味わい、より積極的にコミュニケーションをとるようになります。
指さしでのコミュニケーションが、言語でのコミュニケーションへと繋がるのです。
(※1)心理学ミュージアム - 日本心理学会|なぜ赤ちゃんは指さしするのか? | 企画展 受賞作品 子ども 特集企画 「他者とかかわる心の発達」 |(https://psychmuseum.jp/show_room/pointing/)
指さしの種類は4種類
赤ちゃんの指さしは、成長と共に意味合いが徐々に変化し、大きく4つの段階に分けられます。それぞれの指さしがどんな目的を持つのか、興味深い実験結果とあわせて紹介していきます。
STEP1「興味」の指さし
「興味」の指さしは、子どもが興味を持ったものを指さす段階です。「自発」の指さしとも言われ、11ヶ月頃の赤ちゃんに見られます。伝えたい相手の有無は関係ありません。図鑑や絵本を赤ちゃんが1人で見ているとき指さしをするのは、この「興味」の指さしです。
赤ちゃんが指さすものの名前を大人がその場で伝えると、言葉を覚えるきっかけになるでしょう。何を指さしているかよくわからない場合は、答えを推測するなどして何かしら反応するのがおすすめです。
わからない、知らないから尋ねてくるのではなく、確認の意味でも指さしをします。赤ちゃんの指さしに対して間違えた答えをし続けると、赤ちゃんはその大人に指さしをしなくなることが実験結果からわかっています。小さいながらも「この大人は正しい情報を教えてくれない!」と判断するのです。(※2)
赤ちゃんからの信頼を失ってしまわないよう気をつけたいですね。
(※2)心理学ミュージアム - 日本心理学会|なぜ赤ちゃんは指さしするのか? | 企画展 受賞作品 子ども 特集企画 「他者とかかわる心の発達」 |(https://psychmuseum.jp/show_room/pointing/)
STEP2「要求」の指さし
自分の欲しいものを相手に求める「要求」の指さしは、自我が芽生える1歳前後から見られることが多いです。
「あ~」「んっ!」など声を出しながら「これがほしい!」「あっちに行きたい!」と、物や方向を指さします。
言葉をストックしていく時期でもあるため、「バナナが食べたいんだね」など、簡単な言葉で子どもの気持ちを代弁しながら要求を満たしてあげるのがおすすめです。
STEP3「共感」の指さし
見つけたものを他者と共有しようとする「共感」の指さしは、1歳を過ぎた頃から見られるようになります。「見て~!」と言わんばかりに大人の顔を見ることが多く、「感動」の指さし、「叙述」の指さしとも言われます。大人が反応すると、どんどん別のものを指さし続けるのが特徴です。感動を共有したいのだと思うと、かわいらしいですね。
「共感」の指さしは、自分の気持ちを相手に伝えたい気持ちの表れで、コミュニケーション力の成長の証でもあります。「パトカー。かっこいいね!」「お花。いい香りだね。」など、赤ちゃんの気持ちを受け止め、名詞だけでなく形容詞も添えて代弁してあげると、赤ちゃんが安心できるだけでなく、気持ちを言葉で表す方法を学んでいきます。
逆に赤ちゃんが指さしをしても、大人が反応しなかったり、つまらなそうに対応したりすると、赤ちゃんは指さしをやめ、共感を求めるのを諦めてしまうことが実験からわかっています。(※3)
(※3)心理学ミュージアム - 日本心理学会|なぜ赤ちゃんは指さしするのか? | 企画展 受賞作品 子ども 特集企画 「他者とかかわる心の発達」 |(https://psychmuseum.jp/show_room/pointing/)
STEP4「応答」の指さし
相手の質問に答える指さしのことを「応答」の指さしといいます。物には名前があることを理解し、言葉への興味が高まってくる1歳半頃から見られることが多いです。
口や耳などの身体のパーツや、図鑑のページの中から質問された動物を指さし、別名「報告」の指さしともいいます。
大人の言葉への理解が必要なため、これまで紹介した3つのステップよりもさらに高度な双方向のコミュニケーションと言えるでしょう。
なぜ1歳半健診で「指さしはしますか?」を確認するの?
1歳半健診で確認する指さしは、相手の要求を理解し応える「応答」の指さしのことです。
1歳半を目安に、自分と物と相手という 三項関係 が理解できていることや、自分の興味関心を相手に伝えるために指さしをすることは、赤ちゃんの社会性の発達においてとても大切だと考えられています。(※4)
そのため4つの段階の中で特に重要視されるのが「応答」の指さしなのです。
大切なのは相互コミュニケーションが始まっているか
いざ健診で「指さしをしますか?」と聞かれても、我が子が普段「応答」の指さしをしているか、とっさには判断できませんよね。そんなときは「パパはどこかな?」と尋ねたら探す仕草をする、「ポイしてくれる?」と頼んだらゴミ箱にティッシュを捨ててくる、といった簡単な指示が通じるかが、社会性の発達の目安のひとつになるでしょう。
(※4)新潟県医師会|1歳6か月児健康診査の手引(https://www.hapiny.niigata.jp/download/h27_iltusairoltukagetu5.pdf)
指さしは個人差が大きい
1歳半健診の問診に指さしの有無があるのは、発達の目安の確認とお伝えしましたが、中には指さしをあまりしない子もいます。また、指さしの4ステップが入れ替わって表出することもあるそうです。
実際に、筆者の息子も1歳3ヶ月頃までほとんど指さしをしませんでした。
我が子が指さしをしないと心配になりますが、子どもの発達は個人差が大きいものです。
興味があるものを見つけたときに指をささなくても、大人と顔を見合わせて訴えかけたり、自ら持ってきてみせたり、言葉が未発達な子どもなりのコミュニケーションはさまざまです。
ちなみに我が子は、春になり散歩を積極的にするようになってから指さしをはじめました。「遠くの手が届かないものを伝えるのに指さしが便利だ!」と気づいたようです。
気になる場合は専門家に相談を
特に乳幼児期は、発達の個人差が大きな時期とはいえ、我が子の発達が気になることもあるでしょう。SNSなどで同じ月齢の子どもの様子が目に留まると、つい比較してしまいがちです。子どもの発達に気がかりがある場合は、かかりつけの小児科医や、自治体の保健所などが身近な専門機関に相談してみるのをおすすめします。専門知識に基づいた、子ども一人一人に合った適切なアドバイスを受けられるはずです。
まとめ
筆者の息子がまだ指さしをしなかった頃、指さしが始まればもっと気持ちがわかりそうなのにな、と少し寂しく思うこともありました。
その後いつのまにか指さしが増え、1歳半を迎えた今では、息子の指先から力強い意思がどんどん伝わってくるように。抱っこから身を乗り出しながら指さした先に、夜空に浮かぶ三日月を見つけたときは、親子で顔を見合わせて嬉しくなりました。
一言に「指さし」といっても、たくさんの意味を持っています。
指さしは、まだ言葉が出ない赤ちゃんが指先で大人と心を通わせようとしているのだと思うと、その指先を追いかけたくなってきませんか?
言語能力の発達とともに、指さしの頻度は減っていきます。我が子はなにを伝えたいのかな、と観察しながら今だけのコミュニケーションを一緒に楽しみましょう。