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「歩育」とは?得られる効果と”3つのポイント”を徹底解説

水城あづさ
2022/10/30 08:10
筆者の1歳半の息子は歩くのが大好き。保育園でも1歳クラスになるとお散歩がはじまりました。そんなとき、「歩育」というものがあると知り、家庭でも挑戦!…したもののあえなく断念。このことを保育園の園長先生に話してみると、納得のアドバイスをいただきました。本記事では、歩育で得られる効果と、家庭で歩育をする際のポイントを解説します。

「歩育」とはなんだろう?

そもそも歩育とはどのようなものでしょうか。


一般社団法人日本ウオーキング協会の公式サイトによると、歩育とは、「歩くことで社会の環境や自然と触れ合い、体験を通して子どもの心身を育む教育」のことです。(※1)


文部科学省の調査によると、3歳までの子どものうち約2割は積極的に身体を動かしていないことがわかっており、(※2)幼児期に運動習慣を取り入れることで、その後の体力や運動能力の基礎作りにつながるとされています。運動習慣というと、ボール遊びや遊具での遊びなどが思い浮かびますが、散歩も手軽な運動のひとつです。


(※1)

一般社団法人日本ウオーキング協会 JAPAN WALKING ASSOCIATION|歩いた子ども達の心と体を育む”歩育”|歩育コーチ|指導者養成講習会・セミナー|(http://www.walking.or.jp/leader/coach/hoiku/


(※2)

文部科学省|幼児期運動指針ガイドブック (9分4) (https://www.mext.go.jp/component/a_menu/sports/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/05/11/1319748_5_1.pdf

「歩育」で得られる効果

それではなぜ歩くことが子どもの発達によいのでしょうか?

散歩には、大きく分けて3つの効果があるとされています。

【効果1】運動能力向上!体力がつく

バランスをとっている画像

歩行は全身運動です。第二の心臓とも言われる足を使うことで血行が良くなり、身体を温める効果や食欲促進、安眠効果も期待できます。(※3)

また、散歩しながらジャンプしたり走ったりすることでバランス感覚が鍛えられ、運動機能の発達にも繋がります。

歩くだけで、子どもの運動能力が育まれるだけでなく、大人も子どもも体力をつけることができるのです。


(※3)

スポーツ庁 Web広報マガジン|プラス「10」分のウォーキングから始めるストレス対策

https://sports.go.jp/special/value-sports/plus-10-minutes-walking.html

【効果2】五感を刺激!脳の成長を促す

神経の画像

親子で同じ景色を見ながら歩いているつもりでも、子どもならではの発見に驚かされることも。大人にとっては何気ない当たり前の風景が子供にとっては発見にあふれているのです。


屋外には、家の中にはない刺激がたくさんあるため、五感全てが刺激されます。五感を使うと脳が刺激され、想像力や記憶力、発想力が育まれるとされています。

親子のコミュニケーションが増えることで語彙力の向上だけでなく、子どもは心の充実感を味わえるでしょう。家族以外の人と挨拶や会話を交わすことで社会性も育まれます。

【効果3】血行促進!セロトニンで心が安らぐ

子どもの画像

散歩をすると心が安らぐ。これには、セロトニンという脳内物質が大きく関わっています。「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンは、一定リズムの運動や定期的な適度な運動、太陽を浴びることで分泌され心の安定に欠かせません。


セロトニンは、体温調節中枢に深く関わっており、適度に分泌されることで血行が改善され、寝つきがよくなる効果も。逆にセロトニンが足りなくなると自律神経が乱れ、イライラしたり、やる気がでなくなったりしてしまうこともあります。(※4)


(※4)

スポーツ庁 Web広報マガジン|プラス「10」分のウォーキングから始めるストレス対策

https://sports.go.jp/special/value-sports/plus-10-minutes-walking.html

【体験談】1歳半で歩育に挑戦!

筆者も歩育の効果を知り、1歳半の息子と歩育に挑戦してみることにしました。

1歳半の我が子と歩育に挑戦してみたら…?

調べてみると、1歳半は1kmらいが目安とのこと。家の中でもよく動き回り、公園内では1時間でも2時間でもとことこと歩き続ける息子。体力には自信があります。


最初の目的地は、家のすぐ目の前の公園にしました。しかし結果は、1m進んだと思えば3m戻り、1m進んだと思えば側溝を覗き込むといった具合で、横断歩道をひとつ渡った公園にすらたどり着けませんでした。自由に歩き回ることと、手を繋いで歩くことの違いに驚きました。


1週間ほど続けてみましたが、結局一度も公園にはたどり着けず。

まだ早かったのかな?と思いつつ、この出来事を保育園で先生に話してみました。

園長先生のアドバイス「いちばん大切なのは好奇心」

園長先生のアドバイスは明快でした。

1歳児の歩育は、距離は気にしなくて大丈夫!一番大切なのは『好奇心』を大切にすること。

歩く距離は意識せず、目的地も決めず、子どもが何を見て、どんな反応をしているのか、反応を観察することをすすめられました。


「子どもの興味がなにに注がれているか観察して、保護者が楽しむこと」

このことを意識しながら再挑戦してみました。

再挑戦の結果!親子ともに散歩が楽しくなった

足の向くまま、気の向くまま、息子の様子を観察していると、次第に息子の興味や関心が目に留まるようになりました。図鑑では犬が好きだけれど、本物の犬は少し怖いこと、ヘリコプターの音がすると空を見上げ、指差して教えてくれること、どれも家の中では気づかなかったことばかりです。


好奇心が満たされると、前に進むようになり、気づけば最初の目的地の公園や、もっと遠いところまで行って帰ってこられるようになりました。

年齢×1kmはあくまで目安だった

著者がはじめての「歩育」に困惑してしまったのは、歩育について調べる中で、年齢×1kmという幼児の歩行距離の目安を知り、距離にこだわってしまったことがきっかけでした。離乳食の量や睡眠時間、おむつを替える回数など、特にはじめての子育てでは数値の目安があるとわかりやすく、安心できます。


しかし、園長先生のアドバイスをきっかけに、子どもの成長には個人差があるので、あくまで数値は目安となのだと気づきました。

実際に、文部科学省の発表している「幼児期運動指針」でも、年齢ごとの具体的な歩行距離は示されていません。(※5)

表の数値と我が子を比べるのではなく、昨日の姿と今日の姿を比べて成長や変化に気づくことが大切なのでしょう。


(※5)

文部科学省|幼児期運動指針

https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319771.htm

「歩育」をするときの3つのポイント

最後に、家庭で歩育をするときのポイントを3つ紹介します。

【ポイント1】「抱っこして!」への応え方

子どもの抱っこの要求には、「甘えたい気持ち」と「楽したい気持ち」2種類の意図があるとされています。

甘えたい気持ちには抱っこで応えるのがおすすめです。身体が触れ合うスキンシップや愛情表現は子どもの自己肯定感を高める効果があることがわかっています。(※6)


しかし、散歩中の抱っこは大人のからだへの負担も大きいですよね。そんなときは、気分転換のために手を繋いで歌ったり、「あれなんだろう!」と気分をそらす質問がおすすめです。「よーいどん!」のかけ声で競争してみたりすると、急に元気になって走り出す場合もあります。

上手に気分転換を交えながら子どもに歩くことを楽しんでもらえたらいいですね。


(※6)

ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト|4割の子どもにできていない「健全な愛着形成」 良い親子関係を作るコツとは? | ワールド | for WOMAN |(https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2020/06/4-2_1.php


【ポイント2】靴選びと同じくらい靴の履き方も大切

子どもの足はあっという間に大きくなるため、気がつけばサイズが合わなくなっていることも。すぐサイズアウトしてしまうのはもったいない!と少し大きめの靴を買いたくなる保護者も多いのではないでしょうか。


しかし、足が急速に発達する時期にサイズの合わない靴を履き続けていると、余計な力が入り足が変形してしまう恐れがあります。(※7)子どもの足にしっかり合った靴を選びたいですね。


(※7)

シューマート|知っておきたい"子供の足と靴"のこと|よみもの(https://www.shoemart.co.jp/feature/200128/

また、靴の履き方も大切なポイントです。

ベルトを締める前は、トントンと地面にかかとを軽く打ち付けると、かかとが正しい位置に密着しやすくなります。甲の両側を引き寄せながらベルトを止めると足が固定され歩きやすくなりますよ。


子どもが自分で靴を履けるようになると、左右が合っているか、ベルトを止めているかなど親の確認は最低限で済ませたくなりますが、ときには歩きやすい履き方を親子で復習してみるとよいかもしれません。

【ポイント3】散歩のときに便利なアイテム

散歩にでかける際、用意しておくと便利なものを確認しておきましょう。

帽子

帽子は紫外線対策にも防寒対策にも役立ちます。紫外線対策を考えるあまり日よけ部分が大きすぎると視界が狭まりますので気をつけましょう。帽子をすぐ外してしまう子どもにはゴム付きタイプがおすすめです。

ビニール袋の画像

ティッシュやハンカチ、ウェットティッシュはもちろん、ビニール袋もあるとゴミ袋代わりになるだけでなく、落ち葉や木の実、花、お気に入りの石ころなど散歩途中で見つけたものを入れるのに便利です。

水筒の画像

おやつや飲み物は、散歩途中の気分転換にぴったりです。著者の息子は、家の中でおやつを食べるときは「もっと!もっと!」が止まりませんが、散歩途中に食べるときは開放的な気分のせいか少しの量でも満足してくれることに最近気づきました。

飲み物は水筒もおすすめですが、小さめのパック飲料も便利です。

さいごに

「歩育」という言葉を聞くと、つい結果や効果を期待してしまいますが、まずは親子で散歩を楽しむことが大切です。


散歩は身体能力の向上効果やリラックス効果があるだけでなく、同じ景色を見て歩くことで親子のコミュニケーションが生まれやすくなります。


子どもが小さな手をつないで歩いてくれるのは、子育ての中で想像以上に短い期間かもしれません。


みなさんも子どもと手を繋いで、散歩に出かけてみませんか?

    この記事の著者
    水城あづさ(peekaboo)
    ライター
    第一子男児を子育て中のワーママ1年生。早稲田大学第二文学部表現・芸術系専修修了。結婚前は幼稚園や保育園、習い事教室の出張カメラマンをしていました。現在は夫の仕事の都合で、地元から800km離れた土地ではじめての育児と仕事に奮闘中です。最近の悩みは息子が砂場デビューして、いくら掃除しても家中の床がじゃりじゃりすること。
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