「寝る子は育つ」は科学的にも合っている!睡眠不足は脳や成長に悪影響
日本の子どもは遅寝で、睡眠不足、不眠傾向あり
国立成育医療研究センターが2021年2月19日~3月31日に子どもと保護者3,191人を対象にアンケート(コロナ×こどもアンケート第5回調査 報告書:https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/report/CxC5_repo_20210525.pdf)を実施しました。
「寝つけなかったり、夜中に何度も目が覚めたりする」と答えた子どもは24%もいました。およそ4人に1人に不眠傾向が出ている現状は大問題といえます。
下のグラフをご覧ください。世界17の国で、0~3歳児までの子どもを持つ親に対して就寝時間と総睡眠時間を調べたデータです。
諸外国と比べてみても、日本の子どもの睡眠時間は短く、11時間37分です。ニュージーランドやオーストラリア、イギリスの子どもは13時間以上寝ていて、就寝時間も夜8時前です。
子どもはどのくらいの睡眠をとればいいのでしょうか?
米国睡眠財団は、子どもが必要とする睡眠時間として、3歳から5歳は10~13時間、小学生は9~11時間、中高生は8~10時間を推奨しています。
日本小児保健協会が1980年・1990年・2000年に行った幼児期の睡眠習慣に関する調査によると、1歳半児・2歳児・3歳児・4歳児・5~6歳児のすべてで、22時以降に就寝する割合が増加していました。
厚生労働省の「21世紀出世児縦断調査」では、2001年に生まれた4万人の子どもの睡眠習慣について追跡調査を実施したところ、4歳半の50.1%が21時台、21.9%が22時台で就寝し、21時前に就寝する子どもは20%以下という結果でした。
睡眠不足がもたらす悪影響
睡眠不足は脳や成長に悪影響を及ぼします。詳しく見ていきましょう。
睡眠不足と脳の関係
5~18歳の健康な子どもたち290名の平日の睡眠時間と脳のMRI写真を比較した結果、睡眠時間の短い子どもほど脳の「海馬」の体積が小さいことがわかりました。(東北大学 瀧靖之教授研究成果 内容 ―健常小児における海馬体積と睡眠時間との相関―)
「海馬」は記憶や学習能力をつかさどる脳領域で、睡眠不足は脳の働きを低下させるだけではなく、脳自体を破壊したり、脳の発達を遅らせてしまいます。
また、レム睡眠(後述)の間に、脳は日中の記憶を整理して定着させていると言われていて、睡眠と学習には深い関係があるという科学的データもあります。加えて、成績が良い生徒は8時間の睡眠時間をとっており、睡眠時間が短いと成績が下がる傾向がありました。(ノルウェー2016年の大規模調査結果)
睡眠不足と成長の関係
昔から「寝る子は育つ」と言われるように、睡眠不足は子どもの成長にも悪影響を及ぼします。睡眠が90分周期で訪れるレム睡眠、浅いノンレム睡眠、深いノンレム睡眠に大別されることは良く知られていますね。深いノンレム睡眠時には成長ホルモンが分泌され、それによって、骨や肉体が作られ、子どもたちは健康に育つことができるのです。
他にも、集中力や情動面の問題や、多動・肥満のリスクにつながるなど悪影響が報告されています。睡眠不足が肥満に結び付くの??と思われたママ・パパもいらっしゃるでしょう。成長ホルモンは脂肪を分解する作用もあるので、成長ホルモンが足りないと肥満になってしまいます。睡眠中、食欲を抑える「レプチン」というホルモンが分泌され、睡眠が減ると食欲を高める「グレリン」の分泌が増えるからです。
幼少期の睡眠時間と、思春期の肥満に関連性があるとする興味深い研究をご紹介しましょう。富山大学大学院で平成元年に生まれた児童1万人を対象として追跡調査(3歳時の生活習慣と中学1年時の肥満)を行ったところ、3歳の時に睡眠時間が11時間だった子どもと、9時間未満の子どもの肥満率の違いが後者は1.6倍でした。特に、小学1年生から4年生にかけて充分に睡眠をとった子どもは、肥満発生リスクが最も少ないことがわかりました。
どうすれば、子どもが夜早く寝る?
では、子どもに早く寝て欲しいと願う親はどうすればよいのでしょうか?
幼児期に大量に分泌されるメラトニンというホルモンは、子どもの成長に大切な脳内物質です。その働きは、体温を下げて眠りを誘い、夜暗くなったら寝ることで多く分泌されます。
すなわち、夜暗くなると、脳の中では眠りを促すためのメラトニンが分泌され、朝がきて明るくなると分泌が止まり、目が覚め、体が活動的な状態へ変化するのです。このメラトニンは、明るい照明の下では分泌が抑えられてしまうので、就寝時はあたりを暗くしてあげましょう。蛍光灯や白色のLEDも同じような影響があります。日没後はできるだけ白熱灯色の照明の部屋で過ごすようにしましょう。
もう一つはブルーライトです。スマホやゲーム、パソコンなどから出るブルーライトを寝る前に浴びてしまうと、メラトニンの分泌を妨げ、体内時計を狂わせ、寝つきに影響が出てしまいます。
日本では子どもがスマホを見ながら寝るケースが少なくないようです。アメリカでは、子ども部屋にはスマホなどの電子機器を持ち込ませないよう、啓発活動がさかんに行われているといいます。
寝室にテレビがある子どもは、テレビがない子どもに比べて18~31分睡眠時間が短くなるというデータもあります。すなわち、寝室への電子機器の持ち込みやテレビの設置などは避けたほうがよいでしょう。
親の生活習慣も影響
その他、子どもが早く寝ないのは、親の就寝時間とも関係していることが考えられます。
OECD(経済協力開発機構)の2018年データによると、世界平均の睡眠時間が8時間25分に対して、日本人の大人は31か国の中で一番短い7時間22分でした。
ウイズ・コロナの今、子育て中の親は、家事とテレワークの両立などで、これよりもっと短くなっているかもしれませんね。
さいごに
世界の子どもたちに比べて、日本の子どもたちの睡眠が大変短く、就寝時間も遅いというのにはショックを覚えました。睡眠不足は脳や心身の発育に悪影響があることがわかっていて、肥満にも関係しているのですね。
皆さんのお宅では子ども部屋にスマホやゲーム機を持ち込んだり、テレビを置いたりしていませんか?
寝る前にスマホからの明るい光、ブルーライトを見ると、昼が続いているとからだが勘違いし、頭が興奮状態になり、寝つきが悪くなるので、スマホだけでなく、テレビやゲームはやめさせる方がいいですね。
乳児の眠りに対する親の認識として、「子どもがよく眠れている」と回答した割合はアメリカ・イギリス・オーストラリアでは74%、アジア全体で56%でした。
睡眠に問題があると答えた割合はアメリカ・イギリス・オーストラリアでは26%、アジア全体で52%でした。
しかし、この調査で日本の回答は、「よく眠れている」の割合が80%程度にのぼり、問題あると答えた割合はたった20%程度でした。どういうことでしょうか?日本では「子どもには睡眠が大切だ」という親の認識が低いように感じます。
子どもの睡眠に興味がある方は、別記事、「子どもと睡眠|「早寝・早起き」ではなく「早起き・早寝」の習慣を!」も、併せてお読みください。