アドラー心理学から学ぶ育児法!目からうろこの「勇気づけ」とは?
アドラー心理学とは?
アドラー心理学とは、フロイトやユングとともに心理学の三大巨頭とも呼ばれているアルフレッド・アドラーによって構築されました。「自己啓発の父」とも称されるアドラーの思想は、どのようなものなのでしょうか?
「共同体感覚」を重要視
アドラー心理学では「人は誰しも平等である」という考え方が基盤とされ「共同体感覚」という心のつながりを重視しています。共同体感覚とは、簡単にいうと「周囲の人たちを仲間として考える感覚」といえるでしょう。
共同体感覚を高めるためには、以下の3つの条件が求められるといいます。
- 自分のことを好きになること
- 他者を仲間だと認識すること
- 人の役に立っていることを実感すること
これらは人間が生きる上での幸せに条件ともいわれています。
劣等感に対する考え方
オーストリアの精神科医であったアドラーの幼少期には、運動音痴で馬車を避けきれずにひかれてしまったり、身体が弱く病気に悩まされたり、母親との関係が上手くいっていなかったりしたといいます。
またアドラーは成人してからも身長が150cmと小柄で、劣等感を感じる経験が多かったそうです。しかしアドラーはそんな劣等感に押しつぶされることなく、努力によって克服をしたのだとか。
人間だれしも、大なり小なり劣等感を抱えて生きているものです。劣等感というと悪いもののように感じられるかもしれませんが、劣等感があるからこそ人は成長していけるのだというのがアドラー心理学の考え方だといいます。
原因ではなく目的を重視
アドラー心理学の大きな特徴のひとつに「なぜそうなったのか?」という原因ではなく目的を重視する点が挙げられます。アドラー心理学では、原因があるから行動するのではなく、何らかの目的のために行動するのだと考えられているそうです。
例えば、子どもが泣いているとき「何が悲しいのだろう?」と原因を考える人も多いでしょう。しかし「悲しい」という感情もまた、何らかの目的を果たすために作り出されているというのがアドラー心理学の考え方です。
またアドラー心理学では、人間の行動の一番の目的は「所属」だとされています。人は共同体から外れて生きていくことはできないため、社会の一員としてそこにいてもいいと実感できる「所属感」が人にとって根源的な欲求なのかもしれません。
アドラー式子育てのポイント
アドラー心理学を基盤としたアドラー式子育てでは、どのようなポイントが重視されているのでしょうか?
共同体感覚を高めて自立へ導く
アドラー式子育てでは、子どもの共同体感覚を高めて自立へ導くことが目的とされています。ここでいう自立とは、精神的な自立のことを指し、自分自身を信頼し、建設的な人間関係を築きながら生きていけることをいいます。
子どもにとって、第一の社会は子ども自身を含めた「家族」です。自分の力を家族のために使うことで、自分は家族の一員だと実感でき、家族の中に自分の居場所はあると感じることができるでしょう。
親子関係に上下関係はない
親子関係では、親が上で子どもが下だというイメージがあるかもしれませんが、人はみな平等だという考えのアドラー式子育てでは、親も子も対等な存在とされています。そのため、親が子どもを褒めて評価したり、悪いことをしたからと罰したりしないのだそうです。
そんな対等な関係の中で、問題が起こったときに解決する方法として挙げられているのが「勇気づけ」だといいます。そのためアドラー心理学は「勇気づけの心理学」と呼ばれることもあるのだとか。
アドラー式子育てで重要な「勇気づけ」の方法
アドラー心理学のキーワードでもある「勇気づけ」とは、どのようなものなのでしょうか?子育てにおける実践法とあわせてご紹介します。
勇気づけとは?
アドラー心理学における「勇気づけ」とは、ありのままの相手を尊重し、気持ちに寄り添って共感することで、自分や他者に困難を乗り越える力を与えることをいいます。「褒める」ことと混同されることもありますが、両者には明確な違いがあるそうです。
- 「褒める」のは成功することが条件だが「勇気づけ」は失敗しても無条件で行われる
- 「褒める」のは人に対して「勇気づけ」は行動に対して
- 「褒める」のは上下関係「勇気づけ」は対等な関係
ただしほめ言葉であっても、相手を支配しよういう下心がないものは「勇気づけ」になるといいます。つまり「どんな言葉を使うか」よりも「どんな気持ちで伝えるか」がポイントだといえるでしょう。
子どもの行動を促す勇気づけの方法
子どもに何かしてほしいことがあるとき、どのような声かけをしていますか?「お片付けして」「急ぎなさい」などと子どもに命令する人も多いですが、アドラー式子育てでは子どもは対等な存在なので命令は望ましくないと考えられています。
大人同士でも仕事などで何かをお願いされるとき、命令されると嫌な気分になってしまいますよね。同様に、子どもにも自分がされて不快になる言動はしないことが大切です。
そのため、子どもに行動してもらいたいときは「おもちゃを片付けてくれない?」「お手伝いしてくれたらうれしいな」という風にお願いするといいでしょう。命令ではなくお願いという形にすることで、行動するかどうかを子ども自身が選択することができる点がポイントです。
子どもを褒めていたシーンでの勇気づけの方法
子どもが何かを上手にできたとき「すごいね」「えらいね」などと褒める人も多いでしょう。しかし褒められることに慣れすぎると、褒められないことに対して不安を抱えるようになる可能性があるといいます。
子どもの成長に伴い、褒められる機会はどんどん少なくなっていきますが、褒められることに慣れすぎていると、褒められない環境に適応できずに追い詰められてしまうことも。また「どうすれば褒められるか」を意識して行動するようになり、自分の意思で行動できなくなってしまう人も珍しくないそうです。
そうならないよう「褒める」のではなく気持ちを伝えることが勇気づけとして効果的だとされています。例えば子どもがお手伝いをしてくれたとき「○○ちゃんが手伝ってくれてうれしかったよ。ありがとう」などと伝えることで、子どもは家族の役に立てたという実感を得られ、その後も自分の意思で相手を喜ばせるための行動を選択できるかもしれません。
子どもを怒っていたシーンでの勇気づけの方法
例えば子どもが部屋の片づけをしないときなど「ちゃんと片付けなさい」と叱ることもあるでしょう。しかし命令によっていうことを聞かせるのではなく、自分の気持ちを伝えたうえでお願いするほうが効果的だとされています。
「部屋が散らかっていて、困っているの。○○ちゃんがおもちゃを片付けてくれるとうれしいんだけど、どうすればお部屋をきれいにできると思う?」と子どもにどう行動すればいいのか自分で考えてもらってはいかがでしょうか?
アドラー式子育ての注意点
アドラー式子育てを実践するうえで、注意したいポイントをご紹介します。
子どもの勇気をくじかない
子どもを感情的に叱ったり、嫌味を言ったりといった子どものやる気を奪う「勇気くじき」は控えるようにしましょう。もしママやパパが感情をコントロールできそうになければ、一旦子どもと距離をとり、心を落ち着かせる時間を作ってみてくださいね。
失敗経験を奪わない
親としては子どもの失敗する姿はできる限りみたくないものですが、まったく失敗のない人生を送ることは難しいですよね。失敗経験がないまま成長すると、親のサポートが難しい場面で失敗したとき、子どもが立ち直れなくなってしまうことも。
失敗経験は、子どもの成長に欠かせない大切な経験のひとつです。経験を重ねることで、上手くいかないことがあったときにどうすればいいのか自分で考えて行動する力を伸ばすことができるでしょう。
子どものサポートは、子どもが必要だと判断して求めてきたときだけにとどめ、子どもの意思を無視した手助けをするのは避けることをおすすめします。
子育てで完璧を目指さない
子育てをする中で、自分の理想通りの行動ができないことも少なくないでしょう。そんなときは、ママやパパ自身に勇気づけを行うといいですね。
例えば子どもを感情的に怒鳴ってしまったとき「忙しくて心に余裕がなかったんだな」とありのままの自分を受け止めたうえで「感情をコントロールするにはどうすればよいのだろう」と考えてみてはいかがでしょうか?
まとめ
子どもの自立心を育むアドラー式子育ては、子どもとの接し方に悩むママ・パパにとって心強い道しるべとなってくれるかもしれません。より詳しく知りたい場合は、アドラー式子育てが紹介されている本を読んでみてはいかがでしょうか?
上記のほかにもさまざまな本が発行されているので、気になるものをチェックしてみてくださいね。