口呼吸は直した方がいい?鼻呼吸のメリットと子どもの練習法
口呼吸は直したほうがいい?
子どもの口がぽかんと開いていて、口呼吸をしているのが気になる人も少なくありません。しかし無意識で行っている口呼吸をわざわざ直す必要があるのでしょうか?
口呼吸チェック
まずは子どもが鼻呼吸をしているのか口呼吸をしているのか、どうやって判断すればいいのか気になりますよね。子どもの様子を見ていて、無意識に口を開けていることが多いようなら、口呼吸が癖になっているかもしれません。
また鼻呼吸をしていると、唇が乾燥したり、いびきをかいたりすることがあるので、判断材料にしてみてはいかがでしょう?
口呼吸にはさまざまなデメリットがある
近年子どもに限らず、鼻呼吸ではなく口呼吸をしている人が増加している傾向があるといいます。その原因は、やわらかい食べ物が主流の食事や花粉症などのアレルギー疾患が増えたことなど、さまざまなものがものがあると言われています。
(参考)小久江 由佳子, 猪狩 和子, 小松 偉二, 真柳 秀昭 小児歯科学雑誌『小児の口呼吸に関する実態調査 保育園年長児の保護者に対するアンケート調査』(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspd1963/41/1/41_140/_article/-char/ja/)
そうして増加している口呼吸に、多くの医療機関が警鐘を鳴らしています。それでは、口呼吸には具体的にどのようなデメリットがあるのでしょうか?
口呼吸のデメリット
口呼吸を続けていると、下記のようなデメリットが起こる可能性があるといわれています。
免疫力の低下
鼻呼吸をしていると、鼻毛が空気中のゴミや細菌、ウイルスの侵入を防いでくれますが、口呼吸だとそのまま身体の中に入ってしまいます。そのため免疫力が低下し、風邪やインフルエンザなどの感染症、アレルギー性疾患などにかかりやすくなると言われています。
(参考)口呼吸について | 日本病巣疾患研究会(https://jfir.jp/mouth-breathing/)
歯並びが悪くなる
本来舌は上あごについているのが正しい状態ですが、口呼吸をしていると舌の位置が下がってきてしまうといいます。舌が正常な位置にないと、唇の締まりがなくなってしまい、歯並びが悪くなってしまう可能性も。
歯並びが悪くなると、虫歯や歯周病などのお口のトラブルのリスクも高まるため注意が必要です。
脳の酸素不足
口呼吸をしていると、脳までしっかりと酸素がいきわたりにくくなり、集中力の低下などにつながる可能性も考えられます。集中力が持続しないと、学力の低下も招きかねません。
また浅く早い呼吸である口呼吸は交感神経を刺激するといわれているため、ストレスの原因となることも。深くゆったりとした鼻呼吸は副交感神経を刺激し、精神安定につながるとされているため、心の健康のためにも鼻呼吸が望ましいといえるのではないでしょうか?
(参考)橋爪 祐二,日本耳鼻咽喉科学会会報/121 巻 (2018) 12 号『鼻呼吸障害の精神に与える影響』(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/121/12/121_1463/_article/-char/ja/)
口が乾燥することによる悪影響
鼻呼吸の場合、外気が乾燥していても鼻から入った空気は副鼻腔で加湿され、身体には湿った空気が入ります。一方口呼吸の場合は、乾燥した空気がそのまま身体の中に入るため、口内や喉などの乾燥につながってしまうかもしれません。
口内が乾燥すると、唾液による殺菌・浄化機能が低下してしまい、細菌の動きが活発になってしまうことも。その結果、虫歯や歯周病、口臭などのリスクが高まるといわれています。
顔の形が変わる
口呼吸を子どものころから続けていると、口の中に細菌やウイルスが多く侵入し、アデノイドが肥大してしまう可能性があります。アデノイドとは、鼻と喉の境部分にあるリンパ組織のことで、ウイルスや細菌から身体を守ろうと、免疫機能が過剰に働いて肥大してしまうのだとか。
そうしてアデノイドが肥大すると「アデノイド顔貌」という特徴的な顔つきになってしまうといいます。アデノイド顔貌の特徴には、主に以下のようなものがあります。
- 下顎が小さく、引っ込んでいる
- 下唇がぽってりと分厚い
- 顔が長い
口呼吸が癖になっていると、口周りの筋肉が衰えてしまい、下顎が発達しなくなる傾向があるといいます。呼吸の仕方が顔つきにまで影響を与えるというのは驚きですね。
(参考)アデノイド顔貌の症状,原因と治療の病院を探す | 病院検索・名医検索【ホスピタ】(https://www.hospita.jp/disease/1959/)
子どもの鼻呼吸の練習方法
口呼吸にはさまざまなデメリットがあることがわかりましたが、無意識で行っている呼吸法を変えるためにどうすればいいのか悩む人も多いでしょう。そんなときは、下記のような方法を試してみてはいかがでしょうか?
正しい姿勢を心がける
猫背など、姿勢が悪いと口が開きやすく、口呼吸につながりやすくなるといわれています。そのため、子どもの姿勢が悪いときにこまめに声かけしてあげてはいかがでしょうか?またママやパパがお手本として、正しい姿勢を心がけることも大切です。
(関連記事)背筋ピン!子どもを正しい姿勢に導く方法
運動不足や長時間のゲーム・テレビ・スマホなども姿勢が歪む原因となることがあるため、注意してくださいね。
食事を工夫する
子どもはやわらかく食べやすいものを好むことが多いですが、あまり噛まずに食べられるものばかりでは口周りの筋肉を鍛えることは難しいでしょう。子どもの発達にあわせて、食事のかたさを調節してあげましょう。
また離乳食期の赤ちゃんの場合、食べさせ方に一工夫するのもおすすめです。スプーンは口の中に入れるのではなく、下唇の上に置き、赤ちゃんが唇を使って食事を口の中に取り込めるようにすると良いトレーニングになるでしょう。
哺乳瓶でミルクを飲んでいる場合は、口周りの筋肉を使いやすいよう、母乳育児に近いタイプの哺乳瓶を使うといいですね。
口を使った遊びを取り入れる
口周りの筋肉を鍛えるため、風船を膨らませるなどといった口を使った遊びを取り入れてみてはいかがでしょうか?「忍者遊び」などとして、お風呂で口までお湯につけて鼻で呼吸する練習をするのもおすすめです。
また、風船遊びも口周りの筋肉を鍛えるのにぴったりの遊びでしょう。大きな風船を膨らませるためには、途中で息継ぎをすることが必要になります。このとき、口呼吸をしてしまうと風船がしぼんでしまうため、鼻呼吸を練習しやすそうですね。
「あいうべ体操」を取り入れる
「あいうべ体操」とは、福岡県のみらいクリニックの院長が考案した口周りの筋肉を鍛えるためのトレーニングです(あいうべ体操 | 福岡のみらいクリニック)。小学校や高齢者施設などで取り入れている施設もあり、日本だけでなく海外にも徐々に広がっているのだとか。
簡単な口の体操を毎食後10回ずつ、1日30回を目安に続けることで、口呼吸を鼻呼吸に変えることができるといいます。やり方もいたって簡単ですよ。
あいうべ体操のやり方
- 口をおおきく開けて「あー」の口を3~5秒程度維持する
- 口を横に大きく広げて「いー」の口を3~5秒程度維持する
- 口を強く前に押し出し「うー」の口を3~5秒程度維持する
- 舌を下顎に向かってまっすぐ突きだし「べー」の口を3~5秒程度維持する
単純な運動ですが、真剣にやるとすぐに疲れてしまうもの。初めから1日30回をこなすのは難しいので、まずは無理のないよう少ない回数からスタートするといいでしょう。食後にこだわらず、入浴中など子どもが集中できるタイミングで行うのがおすすめです。
筆者の娘も顎の発達が遅れているため、歯科医の指導であいうべ体操を毎日行っています。本当に効果があるのか半信半疑でしたが、1ヶ月続けただけで飛躍的に唇の力が伸びていて驚きました。
初めは1日3回から開始し、今は1日5回頑張っています。本当はもう少し回数を増やした方が効果があるそうですが、子どもの希望や集中力を踏まえた上で歯科医と相談し、徐々に回数を増やしています。
口呼吸防止テープを活用する
呼吸は眠っているときも絶えず行っているものですが、就寝中に意識的に口呼吸を鼻呼吸に変えるのは難しいですよね。そんなときにおすすめなのが、口呼吸防止テープです。その名の通り、口にテープを貼ることで口呼吸をしづらくして、鼻呼吸を促すことができるのだとか。
ただし小さな子どもに使う場合は、商品の使用上の注意をしっかりと確認し、安全に配慮するようにしましょう。
医師に相談する
子どもの口呼吸が気になるときは、耳鼻科で相談してみてもいいでしょう。アレルギー性鼻炎などでの鼻詰まりやアデノイド肥大などが原因となっている場合は、適切な治療を受けることで鼻呼吸がしやすくなることもあります。
また歯並びなどが気になる場合は、歯科に足を運んでもいいですね。歯科専用の唇を閉じる力を測る計測器があるところもあるので、子どもの口周りの筋肉がちゃんと発達しているのか調べることができるでしょう。
耳鼻科でも歯科でもとくに問題が見られない場合は、口呼吸が癖になってしまっている可能性があります。そんなときは、かかりつけの小児科に頼ってもいいですね。
まとめ
子どもの口呼吸は、直そうと思ってもすぐに鼻呼吸に変えるのは難しいものです。あまり厳しくしてしまうと、子どもにとって大きなストレスとなってしまうことも。子どもを追い詰めないためにも、長い目で見守ってあげることをおすすめします。
また口呼吸は大人にとっても百害あって一利なしといわれているので、子どもといっしょにママ・パパも口周りの筋肉を鍛えるトレーニングを行ってはいかがでしょう?ママやパパといっしょだと、子どもも楽しく続けやすいかもしれませんよ。