知育・幼児教育情報ならoriori

【海外教育】カナダの子育て・教育事情を徹底解説

大中千景
2021/07/16 09:07
この記事では、筆者がカナダのバンクーバーで働く現役の保育士に取材。その内容をもとに、カナダの教育・保育事情を詳しくご紹介します。カナダの子どもたちはどのような遊びをして、何を学ぶのか?がよくわかります。

カナダの保育園は大きくわけて2種類。その特徴は?

カナダの保育園は、Non profit(非営利)のものと、個人経営のものがあります。園のシステムは「Daycare(デイケア)」と「Preschool(プリスクール)」の2種類に分かれており、それぞれスケジュールが異なります。


Daycareは早いところは朝7時半から、夜は17時半~18時まで運営されており、働く親に重宝されています。

Preschoolは、午前のクラスと午後のクラス、2クラスに分かれており、午前のクラスはおよそ9時から12時、午後はおよそ13時から16時までとなっています(時間は園によって異なる)。

Preschool
Preschoolは幼稚園の前のプレスクールということで、教育の側面が強いです

利用者は、家族の都合やスケジュールに合わせて、どちらかのクラスを選択して、子どもを通わせるそうです。


Preschoolは、子どもたちにソーシャライズなスキルを習得させることを目的として通わせる親も多いそう。いわば、幼稚園に入る前の準備期間として利用している、というわけです。


保育園の子どもと先生の比率は、細かい条件によって異なります。さらに州によっても異なるそうです。参考までに、ブリティッシュコロンビア州のとある保育園の比率をご紹介しましょう。

  • 年齢0~18か月のクラス:先生1人につき、赤ちゃんを3人担当
  • 18か月~3歳児クラス:先生1人につき、子ども4人を担当
  • 3歳児~5歳児クラス:先生1人につき、子ども8人を担当

カナダの保育園の雰囲気は、オーナーの考え方や哲学に大きく反映しているそう。とある保育園では、犬が子どもたちと一緒に生活。子どもたちが動物と接することで、心癒され、リラックスできる、いわば「動物セラピー」的な効果を期待して、オーナーが導入したそう。園によっていろいろな個性がある、というわけですね。

カナダの主な3つの教育プログラム

カナダの主な教育プログラムは、以下の3つです。それぞれ解説していきましょう。

子どもたちを科学的に観察する「モンテッソーリ」

日本の幼児教育でも主流となりつつあるモンテッソーリ教育は、カナダでも多くの保育園で導入されています。医師であり、教育家の、マリア・モンテッソーリ博士考案の教育法。「自立していて、有能で、他人への思いやりと責任感があり生涯学び続ける人間を育てる」ことを目的とし、子どもたちを科学的に観察。オリジナルの教材を使用して教育を行います。

モンテッソーリ教育では、木製の「教具」が使用されることが特徴です。教具とは、子どもが何回も使用することによって、感性の発達を目指すアイテムです。一つひとつの教具には、「感覚教育」「算数教育」「文化教育」「言語教育」「日常生活の練習」と、それぞれ5つの目的が設定されています。

遊びを通してさまざまなことを学ぶ「Play-Based Learning」

もうひとつの教育プログラムは「Play-Based Learning(プレイベースドラーニング)」。これは、遊びを通じてさまざまなことを学ぼう、という考え方です。

Play-Based Learning
遊びながら学ぶというコンセプト下では、子どもたちも前向きに取り組むのではないでしょうか?

遊びを通して、言語や計算能力、また社会的スキルや学習意欲を養っていきます。

主流となりつつある「レッジョ・エミリア・アプローチ」

今、カナダで人気が高まっている教育プログラムが「レッジョ・エミリア・アプローチ」です。これは、イタリアにあるレッジョ・エミリア市発祥の教育プログラム。子どもたち一人ひとりの意思を尊重しつつ、子どもの探求心やコミュニケーション能力、表現力、探求心を養うのを目的としています。

レッジョ・エミリア
イタリアのレッジョ・エミリア。町をあげての芸術教育と幼児教育が行われています。

レッジョ・エミリア・アプローチには、体系的なメソッドというものはありません。代わりに、創始者であるローリス・マラグッツィによる「100の言葉」という詩が、レッジョ・エミリア・アプローチの理念の象徴として、広く知られています。

子どもには 百とおりある。

子どもには 

百のことば 百の手 百の考え 百の考え方 遊び方や話し方

百いつでも百の聞き方 驚き方 愛し方 歌ったり

理解するのに 百の喜び

発見するのに 百の世界

発明するのに 百の世界

夢見るのに 百の世界がある

子どもには 百のことばがある

…それからもっともっともっと…

けれど九十九は奪われる

学校や文化が 

頭とからだを ばらばらにする


そして子どもに言う

手を使わずに考えなさい

頭を使わずにやりなさい

話さずに聞きなさい

ふざけずに理解しなさい

愛したり驚いたりは 復活祭とクリスマスだけ


そして子どもに言う

目の前にある世界を発見しなさい

そして百のうち 九十九を奪ってしまう


そして子どもに言う

遊びと仕事

現実と空想

科学と想像

空と大地

道理と夢は

一緒にはならないものだと


つまり百なんかないと言う


子どもはいう

でも 百はある

レッジョ・エミリア・アプローチの大きな活動は「プロジェクト」。プロジェクトとは、長時間一つのテーマを掘り下げること。テーマは子ども同士で話し合って決定し、そのテーマに基づいて、工作や調査が行われます。また、子どもたちの活動の様子は写真や文字、動画として記録。子どもたちはそれを見て、自分たちの活動を振り返って、次に活かしていきます。この活動は「ドキュメンテーション」と言い、これもレッジョ・エミリア・アプローチには欠かせないものとなっています。


カナダでは最近、モンテッソーリとレッジョ・エミリア、双方の理論を取り入れた保育園も出てきているそうです。

子どもたちは園ごとのテーマに基づいて学習

モンテッソーリやPlay-Based Learningを取り入れている多くの保育園では、園ごとに毎月テーマを立てて、そのテーマに基づいた学習時間も設けています。例えば1月ならテーマは「冬」や「冬眠」など。テーマに沿った絵本の読み聞かせやお歌、お絵描き、ディスカッションなどを通じて、子どもの学びを深めていくのです。

カナダの保育園の1日のスケジュールはどんなもの?

カナダの保育園では、子どもたちはどのような1日を過ごしているのでしょうか?

とあるDaycare型保育園の、3~5歳児クラスのスケジュールをご紹介しましょう。

  • 7:30 開園
  • ~9:45 自由遊び
  • 10:00 おやつタイム
  • 10:30 サークルタイム(お歌、絵本の読み聞かせやディスカッションなど、月ごとのテーマに沿った学びの時間)
  • 11:00 外遊び
  • 12:00 ランチタイム
  • 12:50 お昼寝
  • 15:00 おやつタイム
  • 15:30 サークルタイム
  • 16:00 外遊び
  • 17:15 閉園

先生と子どもたち、保護者との関わり方は?

カナダの保育園では、いわゆる日本の保育園の「連絡ノート」のようなものはなく、迎えに来た保護者に保育士が、伝えたいことを口頭で直接伝えます。主には「その日の出来事」「心配される言動や行動」などです。


また、クラスルームにはビデオカメラが設置されている園も多く、親は携帯やパソコンから子どもの様子をチェックすることができるそうです。


先生の子どもへの接し方は、基本的に「自立心」「尊重」「自分の言葉で気持ちを伝えるよう指導」することで、子どもとの関わり方で重要とされているのが「Focus on the behavior rather than on the child」。

子どもではなく、行動に焦点を当てる
直訳すると「子どもではなく、行動に焦点を当てる」となります。

子どもが、もしいけないことをしたときは、子どもの性格を否定するのではなく、行為や言動にフォーカスして、それを正してあげることが大切、という意味です。


これは、カナダの政府の教育機関が定めた原理のひとつで、子どもの人権を尊重するためにも、どの園でも厳守されなければいけない考え方だそうです。

保育園でも、子ども同士の衝突は避けられません。子ども同士が喧嘩した時に「相手を傷つける言葉を使っていない」「手を出していない」この2点が確認できると、保育士は急いで仲裁に入ったりせずに、しばらくは様子を見守ります。もし、上記の2点が守られていない場合は、直ちに先生が仲裁に入り、子どもたちに指導するそうです。この時も、子どもたちに「どうするべきか」の答えを与えるのではなく、「どうすればいいと思う?」という質問を与え、子どもたち自身で考えさせるそうです。

子どものケンカ
ケンカや争いの収集を自分たちでする経験をたくさん積めば、社会スキルが身に付きますね!

もし、再び子どもたちが同じような喧嘩を起こした際も、保育士は子どもたちの様子を注意深く観察。友達を言葉や暴力で傷つけることなく問題を解決できたときは、たくさんほめてあげることが大切なんだとか。これは、保育士に求められる重要なスキルのひとつ。


うまく解決できたことを、しっかりと褒めてあげることが、子どもの自信に繋がる、と考えられているそうです。

カナダの幼稚園は、小学校と続きになっている

最後に、番外編として、カナダの幼稚園事情についても少し話を聞いたので、ご紹介しましょう。カナダの幼稚園は「kindergarten(キンダーガーテン)」と呼ばれています。カナダの幼稚園の最大の特徴は、小学校と同じ敷地内に建てられていること。さらに、幼稚園は基本的に1年のみ。(州によっては2年制のところも)。


ちなみにカナダでは、小学校、中学校という区別はなく、6歳クラスの「グレート1」から、17歳までの「グレート12」までが義務教育にあたります。つまり、日本でいうところの「幼稚園年長~高校」までが義務教育、というわけですね。


幼稚園延長にあたる「グレート1」は、他のグレートと同じスケジュールが組まれているので、日本の感覚では、「幼稚園年長」というよりも「小学校1年生」になる、という方がしっくりくるかもしれません。

さいごに

カナダの保育園の教育プログラムや哲学は、私たち保護者でも参考になるものがたくさんありました。子どもの自主性を重んじて、一人ひとりの個性を尊重しているカナダの保育園。もし皆さんが今回の記事を読んで、「参考にしたいな」と思う点があれば、お家でも導入してみたり、さらに詳しく調べてみたりしてくださいね。

参考

コメント
コメントまだありません
oriori
orioriの最新情報を受け取ろう!
SNSをフォローしてね!
oriori
twitterシェアfacebookシェアlineシェア