「聞く力」でコミュニケーション力アップ!話を聞ける子に育てるには
コミュニケーションの要”聞く力”とは?
聞く力などのコミュニケーション力は、幼少期だけでなく大人になっても必要なスキルです。文部科学省の文化審議会で行われた「望ましい国語力の具体的な目安」のなかで、聞く力向上で期待できる効果として、以下の通り発表しています。
【聞く力が向上することで身につく3つの効果】
- 話の要旨を的確に把握し、その内容を理解できる
- 話し手の気持ちや主張のほか、言外の思いや真意を感じ取ることができる
- 場面に応じて最後まで集中し、聞くことができる
参照元:第3望ましい国語力の具体的な目安|文部科学省
(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/attach/1418972.htm)
国語力のなかには、聞くこと以外にも「話す、聞く、読む、書く」があります。一度に習得は難しいため幼少期、就学期、成人期と段階に合わせた基礎的な力が身に付くことが望ましいでとされています。聞く力が身に見つくと、時代が求める国語力を伸ばすためのさまざまな効果が期待できますね。
聞く力で育まれる7つの能力
臨床心理士でもある田中教育研究所所員、河井英子さんによると、聞く力は次のような能力が育まれると言われています。ひとつずつ見ていきましょう。
集中力と根気が身につく
子どもは好奇心旺盛です。屋内外に括らず、身の回りには興味の惹かれるいくつもの刺激があります。あれもこれも、と落ち着きのないことになりがちですが、聞く力が身に付くことで、雑多な刺激にも気を散らすことなく、落ち着いて物事に取り組むことができるようになります。話をしっかり聞くことが習慣になれば、集中力が身に付き、粘り強さや根気が養われていきます。
想像力が育つ
聞いた内容は頭のなかでイメージ化され、処理していきます。ですが聞く力が低下すると想像力が弱くなり、イメージするだけの情報を得ていても、うまく表現出来ないケースが起こります。
聞くことは「聞く、頭で場面や状況を思い描く、心の中で感想が生まれる、相手の気持ちになり考える」など、一度に複数の事柄をこなしているのです。
思いやりの心、 共感する心が育つ
思いやりや共感は、経験のなかで少しずつゆっくり育っていくものです。聞くことで相手の心を理解し、認めていく。相手の話を聞くことは、心を育てる近道といえます。思いやりある、温かい心をもった人になってほしいと願うのは、皆さん同じだと思います。
コミュニケーション能力が育まれる
ゲームやSNSなどに代表されるコンテンツは想像力を豊かにし、好奇心を満たしてくれます。しかし一方で、一人でも成り立つため顔を合わせ行うコミュニケーションから離れてしまうことも危惧されます。
人の話をしっかり聞く力とは、円滑な人間関係を育てる基礎となり、コミュニケーション能力も大きく伸ばすことが可能です。
話す力が備わる
聞くことは言語能力を豊かにする基本のため、傾聴力が備わることは、話す力が備わることにも繋がります。赤ちゃんや子どもたちは、たくさんの音のなかから単語を聞き分け、理解力が備わり、はじめて言葉になります。土台となる「聞く力」があれば、話す力もおのずと備わる仕組みです。字を読むのが難しい幼児期では絵本の読み聞かせが有効で、小学生になったとき、授業を受ける際にも役立ちます。
作文力、読解力の向上する
ひとつ前の話す力にも効果があるのと同様に、文字の世界でも同じことがいえます。傾聴力は、言語能力を養っていくうえで最も基本的な力です。聞くことで想像力が育まれ、言葉の世界が豊かになります。文章を作る作文力だけでなく、読み取る力、読解力の基礎にもなっています。
学力が向上する
言葉は知識との関わりが深く、将来の学力にも関係してきます。聞く力は思考力を高め、理解力向上に対し深い関わりを持っているからです。学校で行うテストのなかには、問題を放送で流したり、先生の読み上げのみで回答していく「聞き取りテスト」があるほどです。集中して先生の話を聞くことは、授業内容を把握することに直結し、学力向上にも繋がるといえます。
近年聞く力が低迷している?その理由とは
近年、聞く力が低迷しているといわれています。その背景には以下の理由が挙げられています。
話すことや自己主張することを優先したため
近年自己主張、自己表現を大切にする傾向が強く、聞くことは後回しになりがちでした。しかし、その話すことや自己主張の言葉は、聞く力が元になっています。話すこと、聞くことのバランスが見直されています。
SNSの発展時代の変化
SNSが目覚ましく発展する現代では、ゲームやインターネットなどさまざまなコンテンツがあります。想像力を膨らませる魅力的なものですが、多くが一人で完結します。人との対話でしか学べない経験を削ぐことも危惧され、コミュニケーション離れのきっかけにもなり兼ねません。SNSは便利で今後も必要となるツールですが、年齢や環境に合った付き合い方が必要です。
子どもの聞く力を伸ばす方法とは
聞く力はコミュニケーション以外でも役立つ効果がいくつもあります。意識して身につけていきたい力ですが、堅苦しさや勉強のような雰囲気では子どもの興味も薄れていくものです。
ここでは、アメリカの臨床心理士学者であるカール・ロジャーズ博士が提唱する、積極的傾聴力「アクティブリスニング」を参考にご紹介していきます。
アクティブリスニングは、カウンセリングにも用いられる「人に寄り添う」手法です。確かな技術を使い、楽しく身につけていきたいですね。
参考:カール・ロジャーズに学ぶ「聴く姿勢」 – 立命館大学人間科学研究所
親が聞く姿勢を示すことが一番の近道
聞く力を育むためには、話し手に興味を持ち、安心して話せる環境作りから始まります。伝えたい内容をつかみ、共感する。とても簡単なことに思えますが、この姿勢こそがお子さんの「聞いてもらえる、聞くことの大切さ」の土台となるのです。
「聞く姿勢」を習慣化させる5つのポイント
聞く前の導入部として、話し手、聞き手の双方行ってほしい行動が5つあります。
- 視線を合わせる(アイコンタクト)
- うなずく(相槌)
- 笑顔(聞いてくれている安心感)
- 向き合う
- さいごまで(完了)
繰り返し行うことで習慣化し、お子さんのなかで「聞くスイッチ」が自然と身についていきます。子どもは自分の気持ちにとても素直なため、なかなか落ち着いて聞けない状況もあると思います。その場合は、先にお子さんの気持ちに寄り添い、聞き手に回るのも効果的です。
ゲームを取り入れる
誰でも一度は行ったことがあるごく身近な遊びのなかに、実は聞く力を伸ばす方法があります。ここでは4つの遊びを紹介します。ゲームとして生活に取り入れて、楽しく子どもの「聞く力」を伸ばしましょう。
【しりとり】
聞く姿勢や環境を作るのが難しい方には、しりとりがおすすめです。昔ながらの遊びですが、聞く力に合わせ、考える力も必要となります。
【クイズやなぞなぞ】
こちらも昔ながらの遊びですが、お子さんの聞く力により柔軟な対応ができる万能な遊びです。長文で聞くことが難しいお子さんには2択式の〇×クイズ、短い文章のなぞなぞ、上級編として少しとんちの効いたものまで、遊び方は無限大です。
【手遊び】
手遊びは、大人の動きを真似しようとするため聞く力必要です。こちらの動画は、手遊びだけでなく数を数える練習にもなる手遊びです。手をたたく速さを変えたり、数を増やしたり色んな方法で遊べそうですね。
【Q&Aなど質問ゲーム】
お子さんが話す内容に対し、簡単な質問を挟んでいく方法です。「遊んだ」に対し、相槌を打ちながら何をして遊んだの?など言葉の補足を促します。全てに対し質問を挟むのではなく、ある程度聞き終えて一つ質問を入れていくなど臨機応変に行いましょう。
「聞く力」をのばすおすすめの絵本
さいごに、親子で「聞く力」を育めるおすすめの絵本を紹介します。
くまのしんぶんきしゃ(作:こんの ひとみ、絵:いもと ようこ)
「話をきくことの大切さ、面白さ」をテーマにした絵本です。
くまの子くんちゃんは、自分の話ばかりで人の話は聞きません。ある日入院先で出会ったバクのおばあさんとの出会いをきっかけに、話を聞くことの大切さだけでなく、コミュニケーションを通じ思いやる優しさも育んでくれる絵本です。
さいごに
聞く力は人との関わり合いを円滑に進めていくだけでなく、子どもの中にある沢山の能力を引き出す土台にもなります。まずはその方法を、子どもの心に寄り添いながら大人である私たちが示していきましょう。上手くいかないと焦る気持ちもありますが「成人するまでに身につけるもの」と捉えてみるのも大切です。沢山の経験を通じ、子どもの性格や成長に合わせ、焦らずゆっくり楽しみながら育んでいきたいですね。
参考
- 生活・学習習慣の育成研究委員会|聞く話す実践(https://www.saga-ed.jp/kenkyu/kenkyu_chousa/h18/seigaku/zissen/kikuhanasu/kikuhanasu.html)