フォニックス(Phonics)を徹底解説!英語の早期習得に最適なフォニックスのルールと発音学習方法
フォニックスとは?
フォニックス(Phonics)とは、そもそもどのようなものなのでしょうか?
発音とつづりの法則を学ぶ音声学習法
日本では、子どもに日本語を教えるときに50音を使いますよね。それと同じように、アメリカやイギリスなどの英語圏の国では「フォニックス」が用いられているといいます。
日本ではアルファベットを学ぶとき、「A(エー)」「B(ビー)」「C(シー)」というように、アルファベット読みを教わります。しかしフォニックスでは「A(ェア)」「B(ブ)」「C(ク)」という風に、英語の音読みを学びます。(※便宜上カタカナ表記にしていますが、実際の発音とは多少異なります)
こうしてアルファベットごとの発音を身に付けることで、初めて目にした単語を正しく読んだり、知らない単語を発音だけ聞いて書くことができたりするようになります。
フォニックスで身に付けられる技能
英語のつづりは、8割近くがフォニックスのルールに沿っているといいます。そのため、フォニックスを学ぶことで「聞く」「話す」「書く」「読む」という英語を学ぶ上で求められるすべての技能が向上することが期待されます。
フォニックスにはさまざまなルールがありますが、発音の基本は1音ずつスペルの通り音をつなげていくこと。それだけで英語らしい本格的な発音になるというのだから驚きですね。
アルファベット読みしか身に付けていないと、新しい単語に出会ったときスペルだけで発音を推測できないため、読み方を暗記しなくてはなりません。フォニックスを学んでいたら、ルールに沿って正しい発音を導き出すことができるケースが多く、効率的に学習を進められるでしょう。
日本でのフォニックスの現状
フォニックスは日本ではあまり広まっていませんが、少しずつ導入する学校が増えているといいます。日本では、母音は「あいうえお」の5つだけですが、英語では数え方によっては20個以上の母音があるのだとか。
また日本では「ん」などの例外はありますが、基本的に子音だけで発音されることはなく、「母音だけ」あるいは「子音+母音」という組み合わせで発音されます。一方英語では子音だけで発音されることも多いもの。この日本語にはない音の聞き分けや発音は、幼児期のほうが身に付けやすいといわれています。
また幼児期は文法などを理解するのはまだ難しいため、フォニックスを通して音を楽しみながら英語を学ぶ方が効果的かもしれませんね。
フォニックスのルールを徹底解説
フォニックスには、26文字のアルファベットの音読みだけでなく、さまざまなルールがあります。代表的なものを具体的に解説していきます。なお、以下発音を便宜上カタカナで表記していますが、実際の発音と異なる場合があります。
またフォニックスにはさまざまな流派があり、分類などが異なるケースも珍しくない点も頭に入れておいてくださいね。
1字母音・1字子音
先程ご紹介したように、フォニックスではアルファベットをローマ字読みではなく音読みにします。英語のアルファベット26文字のうち、母音は「a」「e」「i」「o」「u」の5文字で、残りの「b」「c」など21文字が子音となります。こうした一つの文字が一つの音を指すものを「1字母音」あるいは「1字子音」と呼ぶそうです。
2文字母音
2つの母音を組み合わせることで新しい音を作るものを「2文字母音」といいます。2文字母音には「oo」「oo」「ou」「ow」「oi」「oy」「au」「aw」の8種類があります。「oo」は「ウー」と発音されることもあれば「ウ」と発音されることもあるため、2種類としてカウントされています。
また「oo」のように一つの組み合わせで2種類の読み方があるものが存在する一方「ou」「ow」がともに「アウ」と発音するように、つづりが違っても同じ読み方をするものもあります。
具体例を挙げるなら「zoo」の場合すべて音読みすると「z(ズ)+o(オ)+o(オ)」ですが実際は「z(ズ)+oo(ウー)」で「ズー」と発音されます。
礼儀正しい母音
母音2文字の組み合わせのうち、1文字目をアルファベット読みして2文字目を発音しないものが「礼儀正しい母音」と呼ばれています。例えば「ea」は音読みすると「e(エ)+a(ェア)」で「エア」となりますが、実際は「e」がアルファベット読みされて「a」が発音されないため「イー」という発音になります。
礼儀正しい母音には「ai」「ay」「ea」「ee」「ey」「ie」「oa」「ow」「ue」「ui」の10種類があります。
「r」のついた母音
日本語の発音として存在しない「r」の音ですが、母音とセットになると母音の音を変化させるといいます。例えば「car」の場合、一文字ずつ音読みすると「c(ク)+a(ェア)+r(ル)」になりますが、実際は「ar」が組み合わさって「アー」という発音になるため「c(ク)+ar(アー)」とカラスの鳴き声のような発音になります。
「r」のついた母音には「ar」「or」「ir」「air」「ear」「wor」があります。
連続子音
子音が2つ、あるいは3つ組み合わさり、それぞれの音を残しつつ混ざりあった独特な発音になるものを「連続子音」といいます。イメージとしては「1文字目の子音を発音した直後に2文字目の子音を発音する」「2つの子音をまとめて1.5にして発音する」という感じでしょうか?
日本語の場合、子音には母音がセットになっているため、連続子音の発音に苦戦する人が多いです。とくに子音と子音のあいだに母音を入れてしまうケースが多く、ネイティブに通じにくい発音になってしまう傾向があるのだとか。
連続子音には「bl」「cr」「sc」「tw」「ld」「ft」「ng」「spr」「str」「rst」などがあります。
2文字子音
子音2文字の組み合わせで新しい1つの音になるものを「2文字子音」といいます。例えば「sh」の場合、音読みすると「s(ス)+h(ハ)」という組み合わせになりますが、実際は日本語で静かにしてほしいときにいう「シー」に近い発音になるそうです。「sh」の発音は「s」と区別がつきづらいため、苦戦する人も多いといいます。
2文字子音には「sh」のほかに「ch」「ph」「wh」「th」「th」「ck」「ng」があります。このうち「th」はサ行とタ行のあいだのような音に聞こえるものと、ザ行とダ行のあいだのような音に聞こえるものがあるため、2種類としてカウントされています。
サイレント e
英語では「cute」などの「母音+子音+e」という組み合わせの場合、初めの母音をアルファベット読みし、最後の「e」を発音しないというルールがあります。つまり「cute」の例で考えると「u」は音読みでは「ア」ですがアルファベット読みの「ユー」に変わるため、「c(ク)+u(ユー)+t(トゥ)+e」で「キュート」という発音になるのです。
このルールは「サイレントe」あるいは「マジックe」と呼ばれ、ご紹介した例を含め「a+子音+e」「e+子音+e」「i+子音+e」「o⁺子音+e」「u+子音+e」の5つの組み合わせがあります。
サイト・ワード
英単語の8割程度がフォニックスのルールに沿った発音になっていますが、ルールに当てはまらない発音をする「the」や「no」などの単語もあります。それらの単語や頻出単語はひっくるめて「サイト・ワード」と呼ばれ、丸暗記するのが望ましいといわれています。
ちなみにサイト・ワードには「ドルチワードリスト」と「フライワードリスト」の2種類があり、どちらを採用するかは英語圏でも各々の教育現場の判断にゆだねられているそうです。名詞を含まないドルチワードリストの単語数は315語で、年中から学年別に分けられているといいます。
一方フライワードリストは名詞を含むため単語数が1000語と多く、100単語ごとにレベル分けされているのだとか。サイトワードを丸覚えすることで、一般的な本や新聞などのおよそ9割を読めるとされており、フォニックスとともに英語圏の幼稚園や小学校で学ばれています。
フォニックスを学ぶメリット
フォニックスを学ぶことは、子どもにどのようなメリットをもたらしてくれるのでしょうか?
習っていない単語を自分の力で読めるようになる
フォニックスで発音とつづりの関係を学ぶことにより、知らない単語でもスペルを見て正しい発音を推測できるようになります。ただし、フォニックスのルールに当てはまらない単語もあるので、必ずしも正確な発音ができるわけではありません。
耳で聞いた単語を正しいスペルで書けるようになる
日本人が日本語の文章を聞いてひらがなで書き起こせるように、知らない単語であっても、発音を耳にすることで正しいスペルを予想することもできるようになるでしょう。
ただしこちらもフォニックスのルールに当てはまらないものなど、一部は正確なスペルで書き起こせないこともあります。
リスニング能力が向上する
発音の仕方を学ぶフォニックスを通して、正しい発音ができるようになるかもしれません。また、人は自身が発音できる音は聞き取れるけれど、発音できない音は上手く聞き取れない傾向があるといいます。そのため、正しい発音を身に付けることはリスニング能力の向上にもつながると言われています。
また日本人にとって違いを区別することが難しい「L」と「R」の発音などは、子どものことから聞き分ける力を身に付けることが大切だといわれています。
言語を学ぶのに最も適した時期は9歳頃までだとされているため、そのころまでに正しい発音を学ぶのが理想なのだとか。
日本語は1500ヘルツ程度、英語は2000~12000ヘルツと使用される音の周波数も大きく異なるとされています。英語特有の周波数を聞き取れるようになるためにも、幼少期からのフォニックス学習は大切なのかもしれません。
ルールを元に効率的に学習できる
フォニックスによって英語の読み書き能力の基礎を作ることで、効率的に英語を上達させることができそうですね。フォニックスのルールを知らないと、英単語一つひとつの発音を暗記しなくてはならないですが、ルールを学ぶとある程度予想できるので暗記する単語を減らせるはずです。
またフォニックスはもともと英語圏の子どもたちを対象に考えられたものなので、ステップを踏んで学習すればしっかりと身に付けられます。努力が結果につながる「やればできる」という経験の積み重ねは、子どものやる気の維持にも役立つことでしょう。
自己肯定感を高める
知らない単語であっても、フォニックスのルールを使って読めたり書けたりすることは、子どもに大きな喜びと達成感を与えてくれるのではないでしょうか?そうした達成感は子どもの自信になり、自己肯定感を高めることにもつながるでしょう。
フォニックスの教え方
子どもにフォニックスを学んでほしいと思っていても、どうやって教えればいいのか悩んでしまいますよね。そんなときは、下記の教え方を参考にしてみてはいかがでしょうか?
英語に触れる機会を作る
子どもにいきなりフォニックスを教えようとしても、興味を持ってもらえなければ効果的に学ぶことは難しいですよね。そのため、英語の歌を歌ったり、英語の絵本を読んだり、「hello!」などの簡単な英語の会話を楽しんでみたりと英語に触れる機会を積極的に作ってみてはいかがでしょうか?
動画を活用する
YouTubeなどの動画サイトには、フォニックスを扱った動画が多数配信されています。子どもが楽しんで視聴できるものを探してみてはいかがでしょうか?日本語で解説されているものもあるので、ママやパパが英語に不慣れな場合も重宝しますよ。
アプリを使う
スマホやタブレットから利用できるアプリには、フォニックスを含め、英語を楽しく学べるものも多いです。ゲーム感覚で使えるアプリもあるので、ちょっとした隙間時間に遊びながらフォニックス学習を進められるのがうれしいですね。
3歳以上の子どもを対象にした「Pinkfong 楽しいABCフォニックス」は、26文字のアルファベットと単語を童謡アニメーションで学べるため、小さな子どもでも理解しやすいでしょう。ほかにもアルファベットをなぞり書きする練習機能やミニゲームもついています。
無料アプリですが有料コンテンツもあるので、子どもが興味を持って取り組んでくれているようなら購入を検討してもいいですね。
また「ABC Spelling-Spell&Phonics」は完全無料で利用できるアプリで、広告もないため安心して子どもに使わせることができるでしょう。10種類以上のスペルゲームを通して、アルファベットの音や単語の発音、スペリングを学べますよ。
フォニックス教材を利用する
市販のフォニックス教材を使って学習を進める家庭も少なくありませんが、購入前にチェックしておきたいポイントはママやパパが教材を使いこなせるかどうかです。フォニックス教材はネイティブの子ども向けに作られているものも多く、英語に不慣れなママやパパにとっては難しすぎることも。
自分自身の英語力を考慮し、活用しやすいものを選ぶことをおすすめします。また子どもの年齢や好みに合わせた教材を探すことも、意識したい点のひとつです。
また5歳頃までは、説明も英語で行われるネイティブ方式のフォニックス教材が選ばれることが多いです。一方、6歳以降は日本語とともに説明されるタイプのほうが理解しやすいかもしれません。以下、おすすめのフォニックス教材をいくつかご紹介します。
おすすめフォニックス教材
Letter Factory
アメリカの知育教材会社から販売されているこちらのDVDは、おもしろいアルファベットのキャラクターたちといっしょに楽しくフォニックス学習を進められます。子どもの食いつきが良く、何度見ても楽しめると世界中で人気なのだとか。
続編DVDもあるので、子どもが興味を持ったら買い足してもいいですね。ただしこちらは海外から輸入されるDVDなので、日本の一般的なDVDプレイヤーでは再生できないことがあります。リージョンフリーのプレイヤーが必要になるため、注意してくださいね。
アルファベットチャンツ【松香フォニックス】
78個の単語を使ってフォニックス学習ができるこちらのCD付き教材なら、リズムに合わせて楽しく発音を練習することができます。収録されているユニークなアルファベット体操を通して、説明が難しい口の形や息の出し方がわかりやすく解説されています。
幼児から中学生まで、幅広い年代が対象となっているため、きょうだいや親子でいっしょにフォニックスを学びたいときにもおすすめです。
リトルフォックス
韓国生まれのオンライン教材「リトルフォックス」では、約4000本ものアニメや約350曲もの歌を使って効果的に英語を学べるといいます。9つのレベルに分けられていて、幼児から大人まで自分に合った学習が進められるでしょう。
一部のコンテンツは無料で利用できますが、有料会員限定で内容を理解できているかチェックするクイズなどといったうれしい機能が多数あるので、子どもが気に入ったようなら利用してみてもいいですね。
アプリから利用できるので、スマホやタブレットを使ってどこでも手軽に利用することができます。また一つのIDで最大4人まで登録できるので、家族やきょうだいの個別学習にも便利です。
まとめ
フォニックスのルールは種類が多く、すべてを習得するには時間がかかります。ネイティブの子どもたちでも、毎日学校の授業を受けながら身に付けていくものなので、なかなか効果が出ないからと焦らないようにしてくださいね。
学習を続けるためには、子ども自身が楽しむことが一番です。学習を無理強いはせず、子どものペースで進めることをおすすめします。またフォニックスは、英語が不得意なママ・パパの苦手意識払拭にも一役買ってくれるかもしれませんよ。