頑張れる子の育て方!親は子どもの課題にどこまで介入するべき?
”頑張れる子”とはどんな子なの?
近年、「成功者している人の共通点として”グリット(GRIT)”がある」といった理論がビジネスマンの中で話題になっています。GRITとは、才能など先天的に生まれながら備わった能力とは異なった能力で、世の中では「やり抜く力」と定義されています。
そんな「やり抜く力」は、子どもにとっても非常に大切です。特に子どもは成長途中ですので、まだまだ出来ないことも多く、たくさんの問題にぶつかります。例えば「お箸を使う」ということでも使ったことない子どもにとっては、乗り越えなければならない問題です。また、「お菓子が4つあって3人で分けなければならない」といった能力以外の部分で発生する問題もあります。
そんな都度発生する問題に対して「自分でしっかり向き合い、考え、対応する」といったことが出来る子どもが「頑張れる子」と言えるのではないでしょうか。つまり、敢えて「頑張る子」を定義するのであれば、”何か問題が起きたときでも、自分で問いを立て、解決策を生み出す力を持つ子ども”が本稿で伝える「頑張れる子」です。
小学校の学習指導要領も2021年春から改訂されたことなどからも、これからは自主的に考え対応していく能力がより重視される時代になっていくといわれています。そんな時代を生きていく子どもを育てる親にとって、1歩引いて見守る力は大切なことかもしれません。
親が課題に介入すると子どもの意欲は低下する!?
2021年1月に「ChildDevelopment」に掲載された研究(Children Persist Less When Adults Take Over)によると、親が子どもの課題に介入していくほど、自分で解決しようとする意欲が長く続かないことが分かったといいます。同研究を簡単に確認してみましょう。
研究内で行われた実験内容
対象は4歳と5歳となっており、実験内容は以下です。
- 対象の子どもたちにブロックパズルを組み立てる方法を教える
- その後、新しいパズルを渡して組み立てるよう指示する
- 1つのグループは、大人がパズルの組み立てを物理的に手伝った
- ほかのグループでは、大人が口頭でパズルの組み立てを手伝った
- 課題に対する子どもの意欲がどのように変化するかをモニタリングした
つまり、「物理的に手伝うグループ」と「口頭で手伝うグループ」とで分けて、意欲がどの程度変化したかを見たということですね。さて、結果はどのようなものになったでしょうか?
すべての子どもが自分でやり遂げようとする意欲が低下した
子どもの課題として与えたブロックパズルの組み立てを、親が物理的・間接的に手伝った場合には、介入されたすべての子どもが自分でやり遂げようとする意欲が低下したといいます。親が手出ししたり口出ししたりすることは、子どもの意欲を失わせる要因になるようです。
同研究には続きがあり、『親の手助けの度合いが子どもの意欲をどのように変化させるのか』についても評価が行われています。結果は、親がより多くの手助けを行なった子どもの方が、次の課題でも早い段階で自分で解決することを諦めることが分かりました。このことから、親が安易に子どもの課題に介入してしまうと、後から子どもの意欲を復活させることが難しくなることが分かっています。
子どもの「課題を克服したい」という意欲を尊重することが大切
上記の結果を受け、親と子が子ども時代のさまざまな障害を克服するのを支援するプログラム「Targeted Parenting Institute」の創設者であるRobyn Koslowitz博士は「子どもたちは物事を理解して課題を成功させる意欲を元々持っているため、尊重することが大切だ」と話します。
しかしそれと同時に、子どもたちは両親を喜ばせたいという意欲も持っているといいます。そのため、親がパズルに手を出した場合は「パズルを完成させるプロセスよりも結果の方がより重要だ」というメッセージを受け取るのだそうです。すると子どもの中には、結果を重視して自分より課題を早く解決する能力を持った大人に任せてしまい、本来持っていた意欲が薄れてしまうのだといいます。
このことから、子どもの意欲を尊重するためには、親の介入は出来るだけ抑えながら1歩引いて見守ることが大切だといわれています。
ヘリコプターペアレントになってしまう4つの理由
では、ここからは、子どもの課題に対して過度に干渉したくなってしまう両親の気持ちに目を向けていきましょう。アメリカでは、子どもに対して過度に干渉しがちな両親を「ヘリコプターペアレント」と呼ぶそうです。
日本でも同じ名前で呼ばれたり「カーリング育児」と表現されたりすることがあります。どうして子どもに対して過干渉になってしまうのか、その理由について考えていきましょう。
介入しなかったことで悲惨な結果になることへの「恐れ」
まず考えられるのが、親が介入しなかったことで起こりうる、悲惨な結果に対する「恐れ」だといいます。たとえば、子どもが入りたいと願ったスポーツチームに能力不足から選ばれない、希望する学校の面接で失敗してしまうなど、親が助けることで回避できそうな問題についてはとくに介入しやすいのだそう。しかし専門家は、子どもにとってはこれらの失敗も人生における素晴らしい学びであり、親が防ごうとする必要はないと話します。
経済や雇用など社会全般に対する「不安感」
世界情勢や社会全体の経済・雇用の状況などに不安がある場合に、過干渉になる可能性が高まります。こうした、社会的な不安があると親の中に「自分が子どもを心配し保護することで、子どもがけがをしたり失望したりすることを防げる」という信念が働くため、その思いが一層高まるのだそうです。
子どもに幸せになってほしいという願いを持つことは決して悪いことではありませんが、その思いがコントロールになっていないか、気を配ることが大切でしょう。
子ども時代に感じた不足感に対する「願望」
子ども時代に親からの愛情をあまり感じられず、日常的に無視されていると感じた経験のある大人は、自分の子どもでその穴埋めをしようとする可能性があるといいます。過度に干渉することは、自分が成長する上で感じていた不足感を満たそうとするが故の行動であるのだと、専門家は話します。
ほかの親や仲間からの「圧力」
身近な友人家族や親類家族が子どもに過度に干渉している場合は、自分の子どもに対しても同様の反応を引き起こす可能性が高いといいます。
これは、子どもの生活に過度に没頭する身近な人の様子を見ていると「同じように介入していない自分たちは悪い親である」と感じてしまいやすいことが原因になるのだそうです。罪悪感が過干渉へとつながる引き金になりやすいことを指摘しています。
必見!過干渉にならずに上手にサポートする”5つの方法”
子どもにとって周囲の大人の適切なサポートは、脳の機能を発達させるためにとても重要だといいます。そのため、過干渉にならない程度にサポートするさじ加減は難しい判断となるでしょう。
ここでは、「子育てベスト100-最先端の新常識×子どもに一番大事なことが1冊で全部丸わかり/加藤紀子著」を参考に、過干渉にならずに子どもをサポートする5つの方法を紹介していきます。
ポイント1:ルーティンワークを決めておく
何をいつ行うのか、ルーティンワークを親子であらかじめ決めておくことは効果的です。とくに宿題や家庭学習など「やらなければいけないこと」をルーティン化していくことは、親が干渉する必要性を軽減することにつながるでしょう。
ポイント2:やり方は子どもに選ばせる
ルーティンが決まっていたとしても、日によっては子どもが別のことをやりたい場合もあります。こうした場合には、今何をやりたいかなどの意思決定を子どもに任せることも大切です。子どもがすぐに決められないときでも、子どもの決定を待ち、大人の都合を優先しないよう心がけましょう。
ポイント3:邪魔をせずに手を貸さない
子どもが決めたことを始めたら、見守ることが基本だといいます。命にかかわるようなケガや誰かを傷つけてしまいそうなとき以外は、邪魔をせずに手を貸さないことも大切です。大人の都合で邪魔をしたり過剰に手を貸したりすることは、子どもの達成感を奪ってしまう可能性があるため注意しましょう。
ポイント4:3つの分類で片づける
片づけを行なう場合には、3つの分類にしておくと、子どもでも簡単に片づけできるといいます。どのような分類にするかは、親子で相談して決めると良いでしょう。
また、片づけが苦手な子どもの場合は、親が一緒に片づけることで環境を整えてあげると効果的です。机をきれいにしておくだけでも、子どもの疲労が軽減するため、集中力が持続しやすいでしょう。
ポイント5:子どもを勇気づける
子どもが「助けてほしい」と思う場面では、勇気づけるような声かけが効果的です。子どもに「どうしたらいいと思う?」と尋ねていくことで、自分の課題を自分で解決する勇気づけが可能だといいます。子どもの「できた」という達成感へとつながるよう、サポートしていきましょう。
さいごに
子どもに幸せになってほしいという願いは、多くの親が抱く気持ちだと思います。しかし、大切だからといって多くのことを親が先回りをしてしまうと、結果として子どもを不幸せにしてしまう可能性が高まることが分かりました。ある専門家は、今の時代は何を与えるかではなく、何をしないかを考えることが親の愛情だと話します。さまざまな考え方がありますが、子どもの成長を妨げないサポートについて知っておくことは大切かもしれませんね。
参考
- 河合隼雄『私が語り伝えたかったこと』(河出文庫)