「字のない絵本」おすすめ6選!想像力豊かな子どもに育てたい
「字のない絵本」とは?
子どもの知育のために絵本の読み聞かせをしているという御家庭は多いと思います。そんな絵本の中には「文字のない絵本」というものがあります。
字がない?どうやって読むの?という声が聞こえてきそうですが、「字のない絵本」は読み聞かせるというより、子どもと一緒に絵を見つめて自由に感じ取ります。
読む人が自分の感性で感じるままにストーリーを作ることができるので、読み手によってストーリーや言葉が違ってくるところも、字のない絵本のおもしろさです。
慣れてきたら、子どもたちが自分のストーリーを作ることもできますよ。さあ、皆さんも子どもたちと一緒に字のない絵本を開いて、想像の世界に行って贅沢な時間を過ごしましょう。
それでは以降で、筆者おすすめの「字のない絵本」を6冊ご紹介しましょう。
『旅の絵本』 安藤光雅
最初にご紹介するのは、筆者が大好きな絵本で、5~6歳から大人まで楽しめる『旅の絵本』です。子育て中、何十回開いたか分からないほどです。
コロナ禍で旅行に行く楽しみが減っている今だからこそ、是非、皆さんに読んで欲しい絵本の古典とも言えます。旅費は想像力です!
世界で一番人気がある絵本作家、安野光雅さんは94歳まで現役で続けられておりました(2020年12月に94歳で亡くなりました)。彼らしい繊細なタッチの絵がとても魅力的です。40年間で8冊のシリーズで、世界中を巡ることができます。
ここでご紹介するのは、第1冊目の中部ヨーロッパ編です。
海から手漕ぎボートでシカが一頭いる陸地に渡りついた青い服の旅人。旅人は、海辺の小屋の住人から馬を譲り受けます。初めは人家の少ない森や田園をぬけ、次第に賑やかな街並みへと移動していきます。
ページをめくるたびに新たな発見があります。鏡の裏側の世界といったページがあったり、スターや事件の一場面、ゴッホやスーラやミレーなどの名画の一場面や、窓際にいるベートーベンや、ハーメルンの笛吹、はだかの王様、ブレーメンの音楽隊、大きなかぶ、ドン・キホーテとサンチョ・パンサ、赤ずきんとオオカミ、イソップのよくばり犬など、物語の一場面が描かれ、絵本に親しんだ子どもほど、まるで宝探しのような歓声を上げます。
各ページには多くの働く人が描かれ、何をしているのだろう?と想像力をかきたてられます。
この絵本は知識があればあるほど面白く楽しめると言いましたが、ページを進めながら、大人が歴史的背景や絵画や音楽のこと、地理的背景などを教えてあげると、子どもたちはとても勉強にもなります。
皆さんも、シェークスピアの『ベニスの商人』に出てくるナイフと秤を持った男の姿を探してみてくださいね。
この本のシリーズは見飽きることがありません。1977年に中部ヨーロッパ編が出版され、イギリス編、アメリカ編、中国編など世界各地をめぐり、2013年版ではついに日本の旅へとつながり計8冊にもなりました。
待望の日本編では、お花見や田植え、お祭り、紅葉など、季節の移り変わりとともに、電気が普及する前のなつかしい日本の風景が描かれています。
また、登場するモチーフとしては「金太郎」、「七人の侍」、「さるかに合戦」があります。是非、手に取ってみてくださいね。
『アンジュール―ある犬の物語』 ガブリエル・バンサン
ベルギーの絵本作家、ガブリエル・バンサンによる白と黒の鉛筆画の世界です。線の1本1本が生き生きと描かれ、躍動感にあふれています。
飼い主に車から投げ捨てられてしまった犬、アンジュールは、飼い主を探してあちこちをさすらいます。
車を追いかける姿、遠吠えをする姿、そして、犬が飛び出したことにより起きてしまった自動車事故。その様を振り返りながら去っていく姿。そして、一人ぼっちの少年に出会った時の犬の嬉しそうな姿。
その全てが、犬の表情や動きの違いだけで表されています。こちらをふと振り返った時に読者に訴えかけるようにじっと見つめる姿は、読む人の心に響きます。
一つひとつの絵をじっくりと見つめ、犬の気持ちに思いを馳せながら読みたい本です。切なさと愛おしさが胸いっぱいに広がりますよ。
『なみ』 スージー・リー
韓国の絵本作家、スージー・リーが描く、波と少女の交流が、青と黒の2色のみで表現されています。女の子のはしゃぐ声や、海の香りまで伝わってきそうな絵本です。五感がすみずみまで刺激されますよ。
『木のうた』 イエラ・マリ
イエラ・マリ 作・絵です。四季の移り変わりを一本の木で表現していて、春夏秋冬を1ページ1ページ丁寧に描いています。
読んだ人の口コミの中には「絵本を読んでいるのに、美術館へ行ったような気分になれます」というコメントもあります。
文字が一つもないからこそ、葉のこすれる音や鳥のさえずり、吹き抜ける風まで聞こえてきそうな絵本です。
赤ちゃんから大人まで楽しめます。あるお母さんが、小さい時この絵本が大好きだったと両親からきいていて、今では生後3カ月の子どもと楽しんでいるそうです。
『ぞうのボタン』 うえののりこ
作者のうえののりこさんは、ロングセラー絵本「ねずみくんのチョッキ」のねずみくんシリーズでご存じの読者も多いでしょう。
ぞうさんのボタンを外すと、その中から動物が現れます。さらにボタンを外すとまた別の動物が、、、、どんどんボタンを外していくと、最後には、、、、?
まるで、マトリョーシカのように中から続々と動物が現れる楽しいお話です。
『えんにち』 五十嵐豊子
コロナ禍で夏祭りも中止されたところも多かったですね。せめて、本の中で昔懐かしい縁日を楽しみましょう。
五十嵐豊子作・絵のこの本は、屋台を組み立てるところから始まります。兄弟が縁日に出かけ、おめん、綿菓子、金魚すくい、、、にくぎ付けになってしまいます。
さいごに
絵本って赤ちゃんから大人まで楽しめる不思議な力をもっていると思いませんか?
子どもたちは同じ本を繰り返し、繰り返し読むのが好きですよね。絵本の中の言葉に再び巡り合えたうれしさに、次の言葉を先取りしたりもします。
絵だけで物語に惹き込まれてしまう「字のない絵本」は、一冊は持っていたい絵本です。読者の皆さんはどの本を手に取って読みたくなりましたか?
実は絵のない絵本を読んでいると、心地よく疲れる自分に気づきます。きっと、頭の中で想像力が渦巻いているからかもしれません。
字のない絵本に向き合う子どもたちも、同じように少しだけ心地よい疲れを感じながら、場面、場面を想像しているのでしょうか?
幼いころの安野光雅さんは、故郷の島根県津和野で、「山の向こうには何があるのか」と、まだ見ぬ世界に想いを馳せ、様々に想像を膨らませていたそうです。
筆者が子育て中、何度も何度も「旅の絵本」を開いたと言いましたが、楽しみ方のコツをお伝えしましょう。
絵本の古典ともいえるブレーメンの音楽隊やイソップ物語など、子どもと一緒に楽しんおくと、「旅の絵本」の面白みが倍増します。
絵本の時間はおやつの後や寝る前、という風に一日の中で時間を決めておく方がいいかもしれませんね。ゲームやスマホから離れて、ゆっくり、じっくり自分と向き合う時間も大切ではないでしょうか。