【海外教育】メキシコの子育て・教育事情を徹底解説
メキシコ合衆国の基礎知識
日本の5.3倍面積の国土に、1億2758人(2019年)の人が暮らしています。1960年には3800万人だったので、驚くほどの伸びです。
内訳は、スペイン系などヨーロッパ系が15%、ヨーロッパ系と先住民の混血が60%、先住民は25%です。
言語はスペイン語と68の先住民諸言語が使われ、国民の約9割がカトリック教徒です。
メキシコの保育園事情
メキシコの保育園には私立の保育園と、イムスが経営する保育園の2種類があります。 IMSS(イムス)とはメキシコの一般企業に勤めている人のほとんどが加入している社会保険制度です。
IMSSに加入していると、本人とその家族が指定の国立病院で診察してもらったときに診察や薬が無料で受けられたり、イムス系保育園は保育費が無料です。
園児が体調不良で早退したり、休園した場合、必ずイムスのクリニックの医師の復園可能証明書を提出しなければならないなど、大変厳しいです。
産休(42日)・育休(42日)中の月給は100%イムスから全額支払われ、多くのママは産後43日目から復職します。
私立幼稚園は有料ですが、生後43日後から6歳まで続けて預かってくれます。近隣の私立小学校との提携をしている私立幼稚園では、小学校の「お受験」対策までしてもらえ、乳児クラスから宿題が出るそうです。
メキシコでは待機児童問題は皆無です。メキシコの家庭は家族間が密な関係で、祖父母や家族の協力も得られやすく、子育てが楽に行われているようです。
さらには比較的人件費が安いため、困ったときにはベビーシッターサービスも依頼しやすい環境です。
メキシコの教育制度
教育の管轄はメキシコ教育省(Secretaria de Educacion Publica:SEP)が行い、基礎教育、後期中等教育、高等教育からなります。基礎教育と後期中等教育(3~18歳)が義務教育です。
また、公立の小学校と中学校は午前、昼間、夜間の3部制を採っています。基本的にスペイン語で教育が行われますが、ナワトル語やマヤ語などの少数言語も併用している学校もあります。
メキシコには公立小学校と私立小学校に共通する標準カリキュラムがあり、国立教育評価研究所が教育水準をモニターし、教師陣による指導の質を管理しています。
学校年度が開始される8月までに満3歳になった子どもが、義務教育の第1学年に入学しますが、前後4ヶ月の猶予が認められており、早い子どもは2歳8ヶ月から学校に行きます。
公立校では授業料・教科書代ともに無料ですが、私立校では国定教科書は無償、補助教材は有料です。
学校の授業だけで学習内容を消化しきれないため、家庭での学習が必須で、教員の質も課題になっています。
2013年に実施された教育改革では、教職員のキャリア制度・教職員に対する評価試験等が導入され、教育の体制強化及び質の向上が図られています。
2013年の法改正により、全国平均の就学率は、年々高まってはいますが、親の経済的問題や設備・教員の補充などにかかわる制約から十分な教育を受けられずに中途退学する子どもが多いのが実情です。
一般的に、成績評価に関してはたいへん厳しく、小・中学校でも基礎科目の習得に問題があると落第があります。
外国人子弟に対しての特別な学費負担はありませんが、特別な言語特別指導はありません。
メキシコが抱える教育問題
残念ながら、メキシコはPISA試験において、数学的リテラシー・読解力・科学的リテラシーの全ての項目でOECD加盟国中、最下位でした。
しかし、タブレットの配布は小学校5年生、6年生を対象に2013年から着々と進められています。
今後は教育カリキュラムや教員養成カリキュラムの見直しなど、教育の質を向上させることが課題と言えそうです。
さいごに
メキシコは貧困率が40%とも70%ともいわれるほど厳しい経済状況の中にいますが、国民の幸福度は相対的に高いと言われます。(10ポイント中8.3ポイント)
メキシコ人は貧しくても、家族や周囲の人間との関係に最も価値を置いていることが、幸福度の高い理由ではないでしょうか?
記事でお伝えしたように、メキシコの教育はPISAなどの国際評価が大変低いのですが、2013年から小学5年生、6年生にタブレットを配布するなど、日本より進んでいる面もあります。
保育の環境として「子どもを社会のみんなで育てる」意識が高いことなど、私たちが学ぶ点も多くありましたね。