情報に踊らされない子育てをするには?ネット情報の判別のポイント
ネット情報の特徴
総務省が令和元年版白書「インターネット上での情報流通の特徴と言われているもの」 を公表しています。その中で言われているサイバーカスケードとは、一体どのようなことをいうのでしょうか?
米国の法学者サンスティーン(2001)は、”インターネットは同じ思考や主義を持つ者同士をつなげやすい”という特徴を指摘しました。
「カスケード」とは、滝のことで、人々がインターネット上のある一つの意見に流されていくことを言います。「集団極性化」とか「サイバーカスケード」などと呼ばれています。
このような人間の傾向とネットメディアの特性の相互作用による現象として、「エコーチェンバー」と「フィルターバブル」があります。
フィルターバブルとは
ネットの検索機能はユーザーに合わせてカスタマイズされています。検索結果、所在地、過去の閲覧履歴などに基づいてユーザーが好む結果が表示されています。
つまり、純粋な検索順位とは表示結果が異なっている可能性があり、インターネット上で私たちが受け取る情報は非常に偏りがちとなっています。
このように、自分自身が作り上げた泡(バブル)に囲まれ、それ以外の情報から切り離された状態を「フィルターバブル」と言います。
米国のインターネット活動家であり、バイラルメディア“Upworthy”の最高経営責任者でもあるパリサー(2012)は、フィルターバブルで生じる、3つの問題を指摘しています。
1.孤立する
”インターネットにおけるフィルターバブルの中には自分しかおらず、情報の共有が体験の共有を生む時代において、フィルターバブルは我々を引き裂く遠心力となる”といった問題点を指摘しています。人がつながっているように見えるインターネットは、フィルターバブルによって実は孤立を加速させているという考え方ができます。
2.フィルターバブルは目に見えない
パーソナライズされた検索エンジンによって表示された結果は、なぜそれが選ばれたのかその根拠が明確に示されることがありません。
フィルターバブルの内側にいると、表示された情報がどれほど偏っているのか、あるいは客観的真実であるのか、分かりません。
3.自分が選んだ情報ではない
フィルターバブルの内側にいることはユーザー自身が選んだわけではありません。
この避けがたい状態が進むと、自分と違った立場の人の意見や、違った視点を持つ情報に触れる機会が少なくなってしまいます。
エコーチェンバー現象
「エコーチェンバー」とは共鳴室のことで、閉じた小部屋で音が響き渡り反響するように設計されています。
ソーシャルメディアを利用する時、自分と似たような興味や関心をもつユーザーをフォローしたり、友だちになっているため、結果的に自分と似た意見ばかり目にするという状況が生まれます。
そして、エコーチェンバー現象により、真実ではないことが真実に見えてしまう危険性があります。言い換えれば、SNS内では同じ言説だけが耳に入って来るようになり、それが真実であり正しいことだと信じ込んでしまいがちなのです。この状態がエコーチェンバー現象です。
エコーチェンバー現象から脱し、多様性を受け入れるためには、ネットだけでなく、本や新聞、テレビ、講演などで様々な意見を聞くことが大切になってきます。
教育言説って?
教育言説とは、人々を幻惑する力を持つ認識や価値判断の枠組みとなる論述を意味します。言い換えれば、聖性が付与されて人々を幻惑させる力を持ちます。その理由は“言説は権力性をも合わせ持つ”からです。
たとえば、
「これからの時代は○○する力が大切である」
「いじめの根絶」
「個性の尊重」
「ゆとり教育が学力低下につながった」
などなど、枚挙にいとまがありません。
”問いなおすこと”の重要性
フーコーの「ディスクール」とは、なぜ「言われたこと」「書かれたこと」がそれでなければならないのか、なぜそれ以外ではなかったのかを問います。すなわち言説を問い直すことです。
たとえば、お受験に関しての記事を読むとき、記事の前提になっていること、すなわち、なぜ、幼稚園受験や小学校受験を当然のことして語っているのか、その語りを成立させた社会的・物理的・歴史的要因は何なのかを問いなおすことの重要性に気づきましょう。
「情報の客観・主観」を見分けるポイント
幅広く情報を見ることを日頃から意識することが、情報収集をするときには大切です。
検索結果をトップ以外もみること、他の検索ワードでも検索してみること、信頼置ける機関の記事や論文をみつけること、本や有力新聞などからも情報収集できるのであれば、それも参考にするなどしてみましょう。
記事を読むとき、それが客観的事実か、主観的な体験談なのかを見極めることも重要です。それができないと、情報に振り回されることになります。
客観的と主観的を見極める時のチェックポイントは、以下です。
- データの出典・引用が適切になされているかどうか
- 客観的な事実、科学的データに基づいているかどうか
- 専門知識がある人によって書かれているかどうか
ネットには同じ趣向の人を繋げようとする仕組み、フィルターバブルが存在することもお伝えしました。
FacebookなどのSNSでは、何かに「いいね」すると、それを「いいね」する人たちが好む書き込みやコミュニティーを勧められたり、誘導されたりします。
このようなSNSの仕組みによって、その人は何の意図をしていなくても、気がつけばとても偏った意見を持つ人に囲まれ、おかしな情報でも、真実だと信じこんでしまいます。一度偏った方向にいくと、修正される機会がほとんどなく、エコーチェンバー現象でどんどん極端になっていくので注意が必要です。
閉じた関係性の中で繰り返されるコミュニケーションの中では、自分の周りにある言説だけが真実であるような錯覚を覚えてしまいます。
その結果、それ以外の言説があることに気づかず、特定の考えに凝り固まってしまう危険性があることを、この記事ではお伝えしました。
そうならないために、意識的に様々な言説に触れるようにしましょう。自分とは違う言説に耳を傾けることで、違う視点や立場、考えなどについて理解を深めることができるのではないでしょうか。
別記事でクリティカルシンキング(批判的思考)をする方法を具体例と共に説明していますので、是非参考にしてください。