【海外教育】アルゼンチンの子育て・教育事情を徹底解説
アルゼンチンってどんな国?
アルゼンチン共和国は南アメリカ南部に位置し、東と南は大西洋に面しています。ラテンアメリカではブラジルに次いで2番目に領土が大きく、日本の7.5倍の広さを持ちます。
首都はブエノスアイレスです。人口は約4400万人 (2019)で、欧州系(スペイン、イタリア)が97%を占め、先住民系はわずか3%です。カトリック教徒がほとんどで、スペイン語が使われています。
アルゼンチンの子育て環境
アルゼンチンでは、3カ月間の有給の産休制度があります。通常、出産前に45日間、出産後に45日間ですが、希望によっては出産間近まで働いて、出産後3カ月近く休むことも多いようです。授乳のための休憩なども法律で認められています。
アルゼンチンの子ども達はとても大事にされていることが、次のような例からうかがえます。
- スーパーマーケットには妊婦や赤ちゃん優先のレーンがある
- 公共交通機関では高齢者よりも幼児や子連れママに席を譲る習慣がある
- 遊び場付きのカフェやレストランがある
特に、(3)はうらやましいですね。アルゼンチンのレストランやカフェでは幼稚園教員免許を持つ女性が遊び相手をしてくれ、大人がゆっくりくつろいで飲食を楽しむことができます。基本、無料です。
アルゼンチンの教育制度
アルゼンチンは教育水準の高い国で、「南米の優等生」と称されています。
国民全体の識字率は98%と高く、特に若者の識字率は99.7%です。大学の進学率も首都、ブエノスアイレスでは約37%となっています。
アルゼンチンの教育は、就学前教育(educacion inicial)、初等教育(educacion primaria)、中等教育(educacion secundaria)、高等教育(educacion superior)で構成されていて、連邦教育審議会(Consejo Federal de Educacion)が管轄しています。
学校制度は1・7・5制をとり、義務教育期間は、5歳~17歳の13年間です。
アルゼンチンの学校年度は3月に始まり12月に終了します。1学期は3月~5月、2学期は6月~8月、3学期が9~12月初旬で、そのあと、長い、長い夏休みが3か月間あります。
教室での言語はスペイン語で、小学校、中等学校まで外国語一言語は必修となっています。
義務教育課程では、規定の課目以外に各学校の特性によって経済・IT・芸術・技術指導などの自由科目が設けられています。
就学前教育
生後45日~3歳未満児向けの保育園と、3歳~5歳児向けの幼稚園があり、空きがあれば誰でもいつでも入園が可能です。待機児童問題はありません。
小学校
アルゼンチンの公立小学校のほとんどは、午前コースと午後コースに分けられた半日制で、
午前コースは8時~12時、午後コースは13時~17時の4時間です。4時間の中で15分休憩が2回あります。
1クラスあたり20人前後が定員で、プルリンガル校(多言語教育校)の人気が高いです。公立学校の学費は無料で、どんな社会階層の子どもでも入学でき、教育が平等や社会正義の象徴であることが、白い制服からもうかがえます。
貧困地区からの通う子ども達もいることから公立学校を避ける親もいますが、逆にあらゆる階層の子どもたちと共に学ぶことを選ぶ意識が高い親も多いです。
社会性や深い思考、寛容性など非認知能力を伸ばすために、私立に通わせる経済的余裕がある家庭でも、あえて公立を選ぶのです。
しかし、教員の賃上げストライキが度々おこなわれ、その都度、学校が休校になる点は困りものです。
一方、私立の小学校は学費が高い(月額8万円)ですが、午前も午後も授業があったり、休校も少なく、いろいろな学校設備も充実していて、安定した学校運営がなされています。
しかし、一部の富裕層やエリート階層の子弟しかクラスにいないため、社会格差が大変大きいアルゼンチンの現実を知らずに子どもたちが育つことや、子ども同士、親同士のライバル意識などが問題になることがあります。
その他、学費の安い私立の宗教系小学校もあるのですが、授業内容が宗教色の強かったり、家族ぐるみで学校の宗教行事への参加が求められることもあります。
アルゼンチンでは小学生でも落第し、留年する生徒が少なくありません。学期末テストで合格点に達しなかった子どもを対象に、新学期前の12月と2月に補習があり、再テストでも無理だった場合は留年になります。
まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大を理由に、2020年5月に9回目の債務不履行に陥った南米、アルゼンチンですが、子育て環境や教育水準がとても高いことをお伝えしました。
アルゼンチンには、日本のような電車やバスでのベビーカー移動の不自由さはなさそうですね。子育て中のママや、乳幼児への社会的配慮はうらやましいほどです。
アルゼンチンの学校のクラスの中にはさまざまな理由から年齢の異なる子どもも複数いて、多様性に富み、日本の小学校のようにみんなが同年齢ではありません。
このように、他国の子育て事情や教育制度を知ると、日本のことがより鮮明に浮き彫りになるような気がする筆者です。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。