【海外教育】多民族国家、マレーシアの子育て事情・教育環境を知ろう!
マレーシアってどんな国?
マレーシアは東南アジアに位置する連邦立憲君主制国家で、美しい島々や世界最古の熱帯雨林がある国です。
一年中暖かく、とても過ごしやすい気候で、物価も日本の約3分の1と安く、非常に暮らしやすい国です。比較的簡単に取れる10年のビザがあることから、移住する人も多いです。
マレーシアは日本の約0.9倍の国土に、31,949,777人(2019)が暮らしていて、内訳はマレー系(約69%)、中国系(約23%)、インド系(約7%)などです。
そのため、大都市ではマレー語、中国語、タミール語、英語が飛び交っています。宗教はイスラム教(61%)、仏教(20%)、儒教・道教(1.0%)、ヒンドゥー教(6.0%)、キリスト教(9.0%)です。
マレーシアの子育て事情
以下のグラフが示すように、マレーシアの人口は増加傾向にありますが、日本や韓国、シンガポールなどと同様、マレーシアも高齢化の傾向にあります。
一方で、出生率も減少し、14歳未満のマレーシア人の子どもの数は765万人から755万人に減少しています。
しかし、人口における24歳以下の若年層が占める割合は、4割以上あり、若い人たちが多い国といえます。
マレーシアに住む外国人は315万人で、人口の9.6%を占めています。(2019年の日本での外国人の割合は2.09%)マレーシアには日本の5倍近い外国人が暮らしているのですね。
そのため、子どもたちは幼稚園の時から、英語、マレー語、中国語など多言語に触れる機会が多く、小学校に入ると3言語を学ぶ学校もあるようです。
このような多文化社会で、マレーシアの子ども達は幼い時から自然と異文化に触れる環境で育つので、異質なものを排除することがなく、いじめも少ないと言います。
マレーシア独特の「産褥(さんじょく)アマ」さん
マレーシアの出産休暇は60日間です。その間は有給ですが、日本のような1歳までの育児休業制度はありません。
共働きが多いマレーシアでは、充実した保育園や職場の理解が進み、60日間の休暇だけで仕事に復帰する母親が多くいます。「産褥アマ」さんの存在が働く女性を支えています。
産褥アマさんは、住み込みで新生児と母親の世話や家事一般をしてくれる産褥期の専門家です。
マレーシアの教育
マレーシアの学年暦は1月〜11月で、就学前教育は通常4~5歳児が幼稚園に通いますが、通園するかどうかは任意です。
義務教育は6~12歳の6年間で、それぞれの民族を中心とした国民学校があります。マレー語や中国語、インド系のタミール語で教育が行われますが、マレー語は必修教科です。その理由は、後で「マレー系優遇制度」の章でご説明しましょう。
学校制度は、6・5・2・3制で、2学期制をとっています。公立学校は、中等教育までの11年間は無償です。
1学期と2学期の間には2週間の夏休み、そして2学期が終わると4週間の冬休みがあります。
マレーシアの初等教育の就学率は、ほぼ100%で、Standard(スタンダード)1~Standard6と呼ばれます。中間試験があり、飛び級することも可能です。
Standard6の過程が終了し、卒業時に国家統一試験、Primary School Achievement Test (UPSR)を受けなくてはなりません。
基準点を満たせば、卒業資格が得られます。もし基準点を満たさなかった場合は、もう一年別の学習機関で卒業資格が得られるように勉強します。
マレーシアの公立校は、マレー語や中国語で教えられる学校が多く、教育の質もあまり高くないため、多くの子どもが私立学校に通っています。
マレーシアの私立学校には、地域の私立学校、宗教学校、インターナショナルスクールなどがあります。
私立学校は公立学校よりも設備などが良く、英語教育に力を入れている学校もあるため
マレーシア国民であっても、英語を教授言語とする私立校に行く子どもが多くいます。
たとえば、マレーシアのインターナショナルスクールは、英国式カリキュラムやオーストラリア式・アメリカ式・日本式、台湾式、フランス式、ドイツ式カリキュラムを採用しています。
そして、国際バカロレア(IB)と呼ばれる世界共通のカリキュラムを採用している学校もあります。「IBディプロマ」と呼ばれる最終的な大学受験資格を取得すれば、世界各国にある有名大学の受験資格を得ることができます。
いずれのインターナショナルスクールも広大な敷地に設立されていることが多く、ゴルフ場などのスポーツ施設が充実している学校もたくさんあります。
マレーシアはインターナショナルスクールの授業料が比較的安いことで知られていますが、
学校によってさまざまです。たとえば、入学金が10万円〜70万、年間授業料は35万円~200万円と幅があります。
一般的に立地条件が良く、設備や教育内容が充実している学校ほど、学費が高い傾向にあります。
このように、私立学校に通うと学費がかかりますが、子どもの将来を考えて私立に通わせる親も多く、妊娠と同時に予約を入れる親がいるほど人気です。
マレー系優遇制度、「ブミプトラ政策」って?
「ブミプトラ政策」の正式名称はNew Economic Policy (NEC)「新経済政策」です。ブミプトラ(bumiputera) とは、「土地の子」という意味で、1969年の人種暴動(農業が主のマレー人と、商業が中心の華人の経済格差による)後、マレー人と少数民族を優遇する経済政策がとられました。
具体的には、国公立大学入学の民族比率の適用(2003年に表向きは終了)や、奨学金取得、公務員就職への優遇、住宅購入価格の割引や住宅ローンの低金利といった施策がありました。
NECは1990年には終了しましたが、完全に廃止するのは難しいのが現状で、現在まで続いています。
マレー系への優遇政策は、初等教育にも影響していて、公立学校ではマレー語が必須です。
また、これまで英語で教えていた理数系科目をマレー語で教えています。
初等教育では、2016年までに移行が完了し、中等教育では2021年に完全移行を予定しています。
2020年現在のブミプトラ政策の状況はどうなっているでしょうか?ブミプトラ政策は緩和されつつありますが、本来の目的ではある民族間による経済格差やマレー人の経済的地位向上が達成された状況には至っていません。
まとめ
以上、マレーシアの子育て事情や教育事情を中心に見ていました。
民族間の経済状況などが絡み合って、なかなか複雑であることがわかりました。
国公立の大学入学において、入学定員のマレー人の割合が高く設定されているということは、同じ学力でもマレー系と非マレー系(中国系、インド系、その他)では難易度が大きく異なるということですね。非マレー系から不公平であるという声が大きく上がり、2003年には表向きは終了しています。
多民族国家、マレーシアの人たちは英語がとても堪能な人が多いです。シンガポールに続いてアジアで2位という高水準です。
マレーシアでも新型コロナウイルス拡大を受けて、3月16日から4か月間休校が続きました。
7月16日に再開したものの、10月12日~12月まで再び休校になり、10月13日からオンライン授業に切り替えられています。