
子どもに挨拶を教える?禁じる?子どもの防犯対策について
あいさつ禁止マンションのこと
2016年11月4日付の神戸新聞夕刊に、以下のような投稿が載りました。「理解に苦しんでいます」という管理組合の理事さんからのものです。

子育ての一環で、私たちは日頃から挨拶は大切だと思っています。でも、子どもを持つお母さんたちに聞くと、そうとも言えない現状があるようです。
知らない人にあいさつしない、されても返さない声をかけられたら逃げるように教えている… 皆さんのご家庭では、どうでしょうか?
最近の子どもを狙った異常者の犯罪傾向を見ると、子どもを守るためには「挨拶禁止」も仕方がないのでしょうか?
比較的新しく、マンション内の人間関係が希薄だとマンション内の人でも「知らない人」の確率が高くなります。
挨拶は常識で、他人との関係構築にも役立つという考えが多数派でしょう。学校や職場などで挨拶をするのが広く社会的常識と捉えられていて、他人とのコミュニケーションや関係性の構築に役立つからです。
たしかに、マンション内の近所同士の付き合い自体が不要だと考える人もいるでしょう。
しかし、防犯上の観点からすると、相手に対するチェックも含め、挨拶するほうが望ましいと、筆者は考えます。
一方で、子どもを犯罪から守りたい親心を無視できない事情もあるので、この投稿記事のように、挨拶をすることがかえって子ども側にリスクがあることを心配してしまうのです。
この背景には、都市化に伴うマンションの増加と、それに伴う近所付き合いの減少があると思います。
コロナウイルス蔓延の中で見えてきたことは、人口が都市部に集中しすぎていることです。特に、東京都は異常です。
都会では、マンションの管理組合や自治会の活動にも消極的な世帯の割合が一般的に高く、同じマンション内でもコミュニティの形成がかなり難しくなっているのが現状です。
同じマンション内でも近所はおろか、隣りの住人の家族構成さえ分からず、むしろそれを当然と考えて関心すらもたなくなっています。
子どもの防犯対策

諸外国では子どもをどう守っているのか見てみましょう。実は、先進国の中で、日本ほど子どもたちが一人で外に出ている国はありません。
筆者の経験からですが、アメリカでは、子どもが車の免許を取る年齢(16歳)までは、親が車で必ず送り迎えをすることが常識です。もちろん、集団登校という習慣はありません。
大人になってからも、パーティーなどで夜遅くなり、知人に家まで送ってもらったときは、ドアを開けて中に入ったかまでドライバーが確認してくれます。
また、基本的に小学生の間は、子どもだけの留守番はさせず、必ず大人の付き添いが必要で、ベビーシッターを頼みます。学校の送り迎えや友人宅への行き来はもちろん、公園でも子どもだけ遊ぶことはNGです。
今、日本でやるべきことは、子どもを親、自らが守るということです。「あいさつ禁止」では、問題は解決しません。
親が不安であれば、子どもを守るために親が子どものガードになることを考える方が、ずっと健全で安全ではないでしょうか。
ちょっと付き添えば防げた事故はたくさんあります。マンションの出入口まででもいいし、交通量が多い道路だけでも付き添いましょう。
人通りの少ない道を過ぎるまで一緒に歩きましょう。こうした、ほんの少しの配慮が、車が多い社会、犯罪が多い社会では、事故や事件の抑制力になるのはまちがいありません。
挨拶は防犯上有効ではないか?
マンション内で会った人に、あいさつするな、声をかけられたら逃げろ、などと誰も子どもたちに教えたくなんかありませんよね。
しかし、大型のマンションだと、知らない人ばかりです。マンション内で会った人も、普段ご近所付き合いがあるお隣さんや友達の親以外は、知らない人です。
ほとんどのマンションの住民は、普通にあいさつをしてくれている人でしょう。しかし、不審な目的でマンション内をうろうろしている人が混じっていないという保証はどこにもありません。
根本的な解決は、犯罪を減らすことです。セキュリティーを強くすればするほど、それを破る策を考えるのが犯罪者の心理ではないでしょうか。
犯罪の手口を巧みにさせてしまう恐れがあります。コロナ禍を経験している私たちは少し利口になりました。何が一番大切か、何を一番守らなければならないか、何に一番時間を使わなければならないかが見えてきたと思います。
記事内で紹介したような「あいさつ禁止」では、子どもの身は守れても、子どもの心の成長を守りきることができないのではないかと思います。
きれいごとかもしれませんが、子どもが他者を信用する気持ちを育むこと、身近なご近所はいざという時大切なことを大人が率先してその姿を示すようにしたいものです。
大人同士はこれまで以上にきちんとあいさつを交わし合い、子どもにとってのマンション内の「知らない人」を減らしていく努力も重要です。
「あいさつ」が防犯上有効であることに変わりなく、おかしな人がマンション内に入り込まない防波堤になることを大人はしっかり理解しなければなりません。
子どもにとっても、マンションの人と顔見知りになれば「知らない人」がいなくなって問題はないのです。
さいごに
筆者の住む田舎では、今朝も子どもたちが「こんにちは(おはようではなく)!!!」と声をかけて登校していきました。
年上の子どもが率先して挨拶をするので、下の子どももつられて挨拶をしています。まだ、田舎は健全だな、という感を強くした筆者です。これからは、田園回帰が加速する時代になるのではないでしょうか。
これまでは、地方における課題は人口流出で、東京は一極集中でした。しかし、アフターコロナにおいては、オンラインを使った活動を行うことでより仕事の幅が広がっています。
首都圏の大手企業も、今回の新型コロナウイルスや地震・風水害などの自然災害発生が発生した時でも事業を継続できるよう、地方人材を求め始めています。
現在は日本中、たとえ限界集落であってもネット回線がしっかりと整備されているため、オンライン環境が整っています。
そして地方部は車社会であるため、電車で通勤することもなく、土地も広いのでオフィス空間も住空間もたっぷりあります。
物価も安く、自然が身近にあり、通勤時間が少ないので首都圏に比べて、仕事に費やす時間が短く、人と人との交流が温かいのが田舎暮らしのメリットです。
子どもの防犯対策の話が、地方移住に飛んでしまいましたが、健全な心で暮らすためのアフターコロナ時代の知恵としてお読みください。
感染症や豪雨災害、地震のたびに公共交通機関がネックとなる首都圏で今後も生活し続けるのかを、真剣に考えなければならない時がきているのではないでしょうか。