「ありがとう」って言えてる?“感謝の気持ち”を子どもに教える方法
子どもに“感謝”を教える工夫
感謝は無理強いするものではありませんよね。日々の生活の中で、少しだけ親が意識することで、子どもたちは感謝する心を育んでいきます。具体的にお伝えしましょう。
1.子どもに物を買い与えすぎないようにしましょう
世の中は物であふれていますが、次から次へ物を与えるのではなく、おもちゃが壊れたら修理をしたり、既に持っているもので工夫ができないか、親子で考えましょう。
親の思いどおりにするために、モノで子どもを釣ることは慎むことが大切です。
2.感謝の気持ちを伝える体験をさせましょう
周りの人々に「感謝の気持ち」を伝える機会を作りましょう。コロナ禍でなかなか会えない祖父母にオンラインで感謝を伝えたり、お礼のはがきを書いたりするのもいいですね。
言葉で直接「ありがとう」と言えない場合には、書くことでも感謝を伝えられることを教えましょう。
ポジティブ心理学では、感謝の手紙を書くことで、手紙を受け取る側だけでなく、送る側の幸福感も高まることがわかっています。
3.大人が手本を示そう
スーパーのレジ係の人や郵便配達の人などに大人が「ありがとう」の一言をかけたりすると、日常の何気ない場面で、子どもたちは大人たちを見ていて、同じような動作や行動をします。
もし、子どもが「ありがとう」を言えない時は、「ありがとうは?」と無理強いするのではなく、親が一緒に言いましょう。
4.家の手伝いをさせましょう
食事の前にテーブルをふいたり、洗濯物をたたんだり、庭の水まきや植物やペットの世話などを積極的にさせましょう。
そうすることで、子どもたちは日々の生活を快適に保つためには、いろいろな小さな活動があることを体験でき、感謝の気持ちに繋がっていきます。
そして、子どもがしてくれたことに対して、親も積極的に「ありがとう」を伝えましょう。
「ママ助かったよ。ありがとうね」
日常のどんな些細なことでもよいので、幼少期から子どもに感謝の言葉を受け取ると、自分から「ありがとう」を発することができるようになります。
まずは、パパやママから子どもたちに心からの感謝の気持ちを示してあげましょう。そして、子どもたちが手伝いをするときの様子をじっくり観察して、「~ちゃんは、OOが得意なんだね!」と声掛けすると、こどもの自己肯定感も高まります。
“感謝のスキル”を教えるのが近道!
筑波大学の相川充教授(社会心理学)らの研究では、子どもに感謝のスキルを教えると、感謝の心が育ってくることを報告しています。
学校や家庭では目に見えない感謝の心を教えることが推奨されるが、目に見える感謝のスキルを教えるほうがいい
では、子どもに感謝のスキルを教え、感謝の心を育てるにはどうすればいいでしょうか?
お手伝いなどをしてくれた時、「ありがとう」「助かったよ」と感謝されると、子どもは自分が役に立てたことに喜びを感じます。次のような言葉がけをしてみてはどうでしょうか。
~ちゃんがOOしてくれたので、ママ嬉しかったよ。ありがとう!
~ちゃんがお利口にしてくれていたから、パパのテレワークの仕事がはかどったよ。ありがとう!
~ちゃんが水まきしてくれたから、お花さんたち「ありがとう!」って言ってるよ。
感謝するとどんな良いことがある?「感謝の効能」の研究結果
東邦大学医学部の有田秀穂名誉教授(生理学)によると、感謝されることで生まれる温かい気持ちは、オキシトシンの分泌によるものだそうです。オキシトシンは愛情ホルモンともいわれますよね。このホルモンは気持ちをポジティブにしてくれる効果もあります。
ペンシルバニア大学のセリグマン教授は、感謝することで幸福感がアップすることを科学的に実証したのでご紹介します。
感謝と幸福感の研究
セリグマンらは、「感謝の訪問」というおもしろい研究を行いました。その研究は次のようなステップで実施されました。
- 以前、大変お世話になったにもかかわらず、きちんと感謝の言葉を伝えていない人に感謝の訪問をする80人を選びました。
- その人に向けて感謝の手紙を書かせました。
- 郵送するのではなく、その人の所まで行って、目の前で手紙を読ませました。
- もう一方のグループの70人には、若い頃の思い出を毎日1つずつ書いてもらい、2つのグループの幸福感を比べました。
感謝の訪問をしたグループは、もう1つのグループに比べて、その後1か月たったあとでも幸福感が高い状態のままだったと言います。
この研究から、感謝するということは相手だけでなく、自分自身をも幸せにするという効能があると結論付けました。
参考:Seligman M.E.P. et al. 「American Psychologist 2005;60:410-421」
参考:Positive Psychology Progress Empirical Validation of Interventions
感謝とリラックスの研究
その他にも、オックスフォード大学のマククレィティ博士とチルダー医師の研究では、欲求不満なことを思い浮かべた時には心拍数が乱れ、心で誰かに感謝をすると心臓の動きが穏やかになることを報告しています。
また、心で感謝をしたときの脳波を調べたところ、リラックスしている状態を表すアルファ波が検出されたということです。
心で誰かに感謝すると緊張状態がほぐれてリラックスできるのですね。
参考:The Appreciative Heart: The Psychophysiology of Positive Emotions and Optimal Functioning
人は幸福だから感謝をするのではなく、他人に感謝をする行動により幸福感が生まれます。
カリフォルニア大学デービス校のポジティブ心理学者、ロバート・エモンズ教授は「感謝の心をもっていると、妬み、憤り、後悔や落ち込みといった、私たちを幸福から遠ざける有害な感情を抱かなくなる」といっています。
感謝の気持ちを培うことで、自己肯定感や共感力、また楽観性のレベルが増し、より幸せで満足した生活を送ることができるようになると報告しています。
さいごに
小さなころから感謝の気持ちを持てる子に育てることは、非常に大切なことが判っていただけましたか。
『Making Grateful Kids: The Science of Building Character』によると、感謝の気持ちを持てる子どもは、学校でも良い成績を残し、鬱になる可能性が低く、趣味や課外活動などにも積極的に参加する傾向があるといいます。
家族間で「ありがとう」ということに、ためらいや照れがあるという読者もいらっしゃるでしょう。でも、最初の「ありがとう」を言ってみると、案外、よいスタートを切れるものです。さあ、今日から始めましょう!!
この記事が皆さんの子育てや家族の幸福の一助になればうれしく思います。