自己肯定感が高まる「旅育(たびいく)」とは?
旅育とは?
「旅育(たびいく)」とは、子どもが普段生活している場所・日常生活から離れて旅行をすることで、家族と一緒に様々な経験・体験をし、子どもの心・体・頭を育んでいくものです。「楽しむだけ」というよりは「知育・教育の観点」も取り入れて企画し、旅行をします。
家族旅行/祖父母旅行/国内・海外旅行など子連れ旅のスタイルはいろいろありますね。
時間・空間はもちろん、食べ物や出会う人など全てが、日常とは違うものに接し、子どもたちはどんな体験をするのでしょうか?
旅先ではすべてが順調にいくとは限りません。
乗り物の便が極端に少なかったり、言葉が違ったり、食べ物の形状・味が違ったり、時差で眠かったり、気候自体が真反対だったり、子どもたちは戸惑いながらも何とか乗り越えます。
親が心配する以上に、その新鮮さに好奇心のアンテナがフル回転します。子連れ旅行の効果は間違いなくあると、筆者は確信します。科学的根拠はあるのでしょうか?
旅育の科学的根拠
観光マーケティングを専門とする東洋大学の森下晶美教授は、「旅育」を「旅は人間性の成長を促すとする考え方で、旅によって得られる知識や興味・価値観の広がり、共感力を人の成長に役立てようとするもの」と定義しています。
旅が子どもにもたらす影響
東洋大学の森下晶美先生が、2010年に行った「家族旅行と志向・性格に関するインターネット・アンケートの結果」を見てみましょう。
アンケートは、18歳~25歳の1700名を対象に志向・性格に関連する質問を5段階で自己評価をしてもらいました。子どもの頃の旅行経験と成人後の志向・性格との関連性のデータを集めるためです。結果、適応力、自主性、コミュニケーション力、社会性、思いやり・精神の安定性の5つの点において、自分自身を肯定的にとらえている割合が高いという結果がでました。
家族旅行経験がなかった層では自分自身を肯定的にとらえている割合が30%前後でしたが、「家族旅行が特に多い」、「海外家族旅行の経験あり」は55%前後で、差が20%ありました。この差はどこから来るのでしょうか?
旅で体験した様々なことが、その後に好奇心、感じる力、視野、地域を見る目、学ぶ意欲、関心を広げ、興味や学習意欲をあげたことが、まず考えられます。また、人との交流によって、価値観の違いを受け入れ、思いやり・協調性・家族の絆が強まった結果ではないでしょうか。
最後に、行動力、創造性、批判的思考、問題解決能力なども伸長させる基礎となったことが考えられます。
参考:森下晶美「成長期の家族旅行経験と個 人の志向・性格との関連性について」、 観光学研究第10号、東洋大学国際地域学部、2011年、「旅育”の現状と定義を考える」 日本国際観光学会論文集(第20号)2013年
さいごに
幼いときから体感をもって学ぶことの大切さを、森下先生の研究から知りました。そして、子どもの頃に家族旅行経験の多い人は、成人後もコミュニケーション力や社会性、思いやりなどの点で自己肯定感が高いという研究結果は、注目に値しますね。子連れ旅行は準備も大変で、親も疲れてしまいますが、子どもの力を信じて、決して子ども扱いをせず、手伝える範囲で手伝わせてみましょう。そういう経験があれば、AI社会が進んでいっても、生きる力の源である自己肯定感をもって生きていける子どもになると思うのです。
一つ注意点として、旅育という概念はとかく商業ベースで利用されがちなので、なるべく旅は手作りで計画して欲しいと思います。業者が計画したプランに、ドッカと乗るのではなく、計画段階から子どもも巻き込んで、「どうする?こうする?」からが旅の始まりです!!