どうして人間の赤ちゃんは歩き始めるまで1年もかかってしまうのか?
赤ちゃんが1年で歩き始めないからといって異常があるとは限らない
まず、赤ちゃんが1年で歩き始めないからといって異常があるとは限らないということを知っておきましょう。
人の赤ちゃんのほとんどが約1年で歩き始めることは確かですが、平均して1年であって生まれてから1年間で必ず歩くわけではありません。
中には1歳6か月で歩き始める子もいますし、逆に10か月程度で歩き始める子もいます。
もちろん歩き始める時期も大事ですが、それよりも歩き始めるまでの運動発達の過程の方が大事です。
人の赤ちゃんは1年間で必ず歩き始めるわけではなく、それまでにさまざまな運動を経験することで歩くことができるようになるということを理解しましょう。
どうして赤ちゃんによって歩き始めの時期が違うのか?
では、どうして赤ちゃんによって歩き始めの時期が違うのでしょうか。
その理由について簡単にまとめていきたいと思います。
生まれつき脳に障がいがある場合は歩き始めが遅くなりやすい
例えば、脳性まひなどの出産前後の何かしらの影響により脳に障がいが残った場合は、多くの赤ちゃんが、歩き始めが遅くなってしまったり、歩くことが難しくなったりします。
これは本来の脳からの指令が身体の筋肉にうまく伝わらず、重力下で身体を動かすことが難しくなってしまうからです。
また発達障がいの子どもたちも歩き始めが遅くなりやすい傾向がありますが、こちらの方はまだ詳しく解明されていません。
今のところ有力な考えとして、発達障害の子どもたちは身体のイメージが自己認識しにくいため運動発達が遅れてしまうのではないかと考えられています。
さまざまな姿勢や動作を多く経験していないため
生まれつき脳に障がいがなかったとしても、寝返りやうつぶせなどの姿勢や動作の経験不足によっても歩き始めが遅くなることがあります。
例えば、うつぶせを経験していないと手で身体を支える経験が不足してしまいやすいです。
また、ずっと床に座ったままの姿勢で過ごすとハイハイをしないで成長することもあります。
このように、さまざまな姿勢や動作の経験が不足することで歩き始めが遅くなることもあるので注意が必要です。
周囲の大人との関わりが極端に少ないことによる影響
赤ちゃんは生まれてからしばらくは言葉でコミュニケーションをとることができないので、大人としてもどのように関わっていけばよいのか難しいですよね。
でも、赤ちゃんは周囲の大人との関わりを通して環境に適応していきます。
つまり周囲の大人との関わりは赤ちゃんの発達に必要で、コミュニケーションが不足すると発達が遅れてしまうリスクがあるということです。
そのため、積極的に赤ちゃんに話しかけたり遊んだりすることは赤ちゃんの自分で動きたい!という意欲につながっていきます。
赤ちゃんの性格が影響することもある
赤ちゃんはみんな好奇心旺盛で活発に動きまわりますが、大人にそれぞれ性格があるように赤ちゃんにもそれぞれ性格があります。
あまり泣かない子もいればよく泣く子もいたりなど、それぞれのペースで成長していくので歩き始める時期にも差がある場合があります。
こういった個人の性格の差が歩き始めの時期に影響することがあるということも知っておきましょう。
※これらの考え方は全ての人に当てはまるわけではありません。
どうして人は2足歩行を行う必要性があるのか?
そもそも、人はなぜ二足歩行を行う必要があるのでしょうか?
1.人の脳は他の動物より発達しており頭が大きく重たいため
どうして人の赤ちゃんは一年もかけて2足歩行を行う必要性があるのでしょうか。
それは、他の動物の脳と人の脳の発達の違いが関係しています。
人の脳は他の動物の脳より大きく重いです。
大きくて重い分人の脳はより発達しており、ものごとを深く考え複雑な上肢の操作も行なうことができ、他の動物よりも高度な生活を行うことができます。
ただ脳が大きくて重い分、それを支えるだけの身体構造でなくてはなりません。
例えば、他の動物の脳が人間の脳と同じぐらいの大きさと重さだったとしたら、4足歩行では支えることが困難です。
発達した脳の大きさや重さを支えるためには、2足歩行を行い身体全体で頭を支える必要があるのです。
実際私たちもずっと四つ這い移動をしていると首が痛くなってしまいますよね。
このように人が2足歩行を行う背景には、脳が他の動物より発達しており2足歩行でないとその大きさと重さを支えることができないからという理由があります。
2.手を自由に使えるようにするため
手を自由に使うためにも2足歩行が必要です。
動物のように4足歩行を行えば、当然手も移動をするたびに身体を支えなくてはなりません。
ただ、4足歩行を行っている動物たちの中でも発達上人に近い動物であるサルやチンパンジー・ゴリラといった動物は、2足歩行でも移動を行う場合があります。
こういった動物たちは人の手ほど複雑な動作を行うことは難しいですが、木に登ったり木の実を食べたりといった活動をすることが可能です。
そのため、サルやチンパンジーの手は移動手段としても使うことができますし、人の手のような機能としても使える身体構造になっています。
一方人の場合は歩くときに手を使って歩くことはほとんどありません。
人は明確に手と足の機能が分かれており、手は複雑で巧緻的な活動を行うための機能をもっています。
字を書いたり道具を使ったりなど、手を自由に使うためにも2足歩行は必要なのです。
3.視覚的な情報を捉えやすくするため
視覚的に情報を捉えやすくするためにも立って歩くほうが有利です。
目は一般的に視覚として物体を脳で認識するために重要な機能をもっています。
動物の場合も同様な機能がありますが、人と違って動物の場合は顔の横側に目が位置していることが多いです。
一方、人の目は顔の前方に位置しているのでより視覚的な情報を得やすい構造になっています。
このように人の目が前方を向いているのは、他の動物よりも聴覚優位ではなく視覚の方が優位であるためです。
他の動物たちは、外敵から身を守るために視覚だけではなく聴覚も発達しています。
人は外敵から身を守る手段が多くあるのでそれほど聴覚が発達しない代わりに、視覚機能で情報を捉えやすくしているのです。
視覚からの情報を得ることでより脳が発達しやすいので、人は立ったり歩いたりするということですね。
※これらの考えは全ての人に当てはまるわけではありません。
赤ちゃんはできるだけ早く歩けるようになった方が良いのか?
家族としては、歩き始めが遅いとできるだけ早く歩けるようになってほしいと思われるのではないでしょうか。
でも大事なことは早く歩けるようになることよりも、生まれたときから赤ちゃんと多くコミュニケーションをとることです。
赤ちゃんは親が遊んだり、話しかけたりすることで自然と成長していきます。
歩き始めが遅いからといって必ずしも問題があるとは限らないので、まずは親も赤ちゃんの時にしか経験できない子育てを楽しみ、子どもと向き合っていけるようにしていきましょう。
さいごに
人の赤ちゃんは他の動物と違って1年という長い期間をかけてようやく歩いて移動することができるようになります。
歩き始めるまでの間はどうしても手がかかりますし、赤ちゃん自身も一人では生きていくことが困難です。
生活が不規則になり子育てが大変な時期ですが、歩き始めるまでの期間の間に赤ちゃんはさまざまな経験を通して成長していく時期でもあります。
寝返りやうつぶせといった姿勢・動作は運動発達だけではなく、情緒面の発達なども含めたすべての発達に関わるものです。
大切なことは歩けるようになるまでの運動発達の過程を大事にすること、そして赤ちゃんと一緒に親として互いに成長していくこと。
まずは赤ちゃんと積極的に遊び、しっかりとコミュニケーションをとるようにしていきましょう。
参考文献
- 正常発達 第1版 脳性まひ治療への応用
- 正常発達 第2版 脳性まひの治療アイデア
- 乳児の発達 ~写真でみる0歳児~