子どもの吃音とは？吃音症の症状や原因、治療法をご紹介

ライター　村田美子

2021/06/28 02:06

言葉がつまったり、同じ音を繰り返したりする吃音は2～4歳ごろから出始めます。7割は言葉の発達に伴って2～3年後には消えます。親の育て方が原因ではありません。この記事では、吃音の症状や原因の解説から、治療法や家庭にできる子どもへのサポートに焦点を当ててご紹介します。

吃音とは？
吃音の症状と原因は？
子どもの吃音の治療法は？
家庭ではどんなサポートができるの？
さいごに

吃音とは？

言葉がスムーズに話せない発話障害のことで、吃音の9割はこの発達性吃音です。

2語文以上の発話を始める2～4歳ごろから約8％の子どもに出始め、言葉の能力の発達に伴って7割（男児では約60％が、女児では約70％）は2～3年後には自然に消えると言われています。

しかし、小学校に上がる年齢になっても残る子どもがいます。自然治癒する子どもの大半が発症後1年以内に吃音が消失する一方で、発症後４年経過時に吃音が残っていた場合、吃音が治癒する可能性は極めて低いとされています。

幼児期の吃音は症状の波が大きく、一時的に症状が落ち着き、治ったと勘違いしてしまう場合も少なくありません。

ただし、なかには症状がひどくなり、医療機関で治療を受けなければならなくなるケースもあるので、吃音に気づいたらできるだけ早く専門家に相談して、治癒の可能性を少しでも高めて行くことが大切です。

吃音の症状と原因は？

子どもの吃音、発達性吃音の原因については、いまだ解明されていません。遺伝的なものや体質、そして環境的要因が重なって発症するのではと言われています。

まず、吃音の種類、3つを見てみましょう。

吃音症の種類

・連発型：同じ音を繰り返す……「な、な、な、なつやすみ」など繰り返し

・伸発型：最初の音を伸ばす……「ぼーーくね」など引き延ばし

・難発型：最初の言葉を出すときにつまり、音が出せない詰まり

参考までに、大人の吃音についてお伝えすると、1％ぐらいが抱えているとされます。この青年期以降に発症する獲得性吃音は、脳卒中や脳損傷など脳の病気やストレスが原因で起こります。

吃音は親の育て方が原因とされていた従来の考え方は誤りであることを覚えておきましょう。

子どもの吃音の治療法は？

国立障害者リハビリテーションセンターの研究チームが2020年中に国内初の吃音治療ガイドラインを作成すると発表しました。

ガイドラインには幼児期における有効な治療法が二つ明記されています。

① リッカム・プログラム

オーストラリアで開発されたもので、会話をしながら流ちょうに話せたときに子どもを誉めます。褒められたことが嬉しくて、子どもはその行動を増やすようになり、結果的にうまく話せるようになると言います。

流暢に話せたときに褒めたら、その行動が強化される、というオペラント条件付けを利用して、システム化したものです。

5回流暢に話せたら１回どもった時に指摘したりするのですが、その指摘も褒め方も非常に難しいので、専門家と必ず行ってください。このリッカム・プログラムは３～６歳が対象です。

② DCMに基づく治療

DCMはDemand-Capacity Model　（要求能力モデル）という吃音の発症モデルに基づくもので、子どもの急速な言語能力の発達に伴って生じる親のコミュニケーション水準と、子のコミュニケーション能力とのアンバランスさを解消することで、吃音の治癒を促していきます。

アメリカではDCM治療法が主流で、1990年にC. Woodruff Starkweatherが始めました。DCMでは、「吃音は子どもの流暢性に対する周囲の社会的要求が、子どもの流暢に話す能力（認知的、言語的、運動的、情動的）を上回った結果起こる」という仮説に基づいて、要求を減らし、流暢性を促進し、吃音を軽減する環境を作る治療法です。

次に、アメリカの医療雑誌に2015年に発表された研究結果を見てみましょう。

対象は３～６歳、吃音頻度３％以上、発吃から6か月以上の子どもです。そのうち、99名をリッカム・プログラムで治療し、100名をDCMで治療しました。

治療開始後、3か月の時点では、リッカム・プログラムの方が、有意に吃音頻度が下がり、

18ヵ月の時点では、リッカム・プログラムの吃音頻度は1.2%、DCMは1.5%と、わずかにリッカム・プログラムの方が良いものの、有意な差ではありませんでした。

そして、18か月後の吃音が治った子どもの割合は、リッカム・プログラムは76.5%、DCMは71.4%でした。

参考：Direct Versus Indirect Treatment for Preschool Children Who Stutter: The RESTART Randomized Trial, 2015

家庭ではどんなサポートができるの？

言葉の発達段階にある子どもは、大人のように流暢に、じょうずに話せない場合も多いので、神経質にならずに大らかな気持ちで様子を見守ってあげましょう。

繰り返しますが、昔言われたような「愛情不足」や「親の育て方のせいで発症する」ものではないということを知っておきましょう。

性急に癖を直させようと叱ったり、しつこく、発話のたびに指摘するのではなく、さりげなく興味や関心を他に移してあげて、自然と治るものとゆったりと構えて見守ってあげてください。

周囲があまり神経質になりすぎると、子どもが話すことに不安や恐怖を覚え、ストレスを感じ、症状が悪化する危険があります。

発達性吃音は一過性で起きていることもあるので、周りが心配しすぎず、子どもがリラックスして話せる環境をまず作ってあげましょう。たとえ、どもっても途中で遮ったりせず、こどもの話す内容に焦点を当てて、最後まで聞いてあげましょう。

日々の、こうした言語コミュニケーションが、子どもの吃音の解消につながります。

サポートのポイントをご紹介

ここで、サポートのポイントをまとめてみましょう。

・つっかえるかどうかではなく、子どもが話す内容に焦点を当てましょう

・うなずいたりしながら、話しやすい雰囲気を作りましょう。「聞いているよ」「時間はあるよ」というメッセージを伝えましょう

・ゆっくり、間をとりながら子どもに話しかけましょう

・あるがままの子どもをみて、肯定的な言葉で伝えましょう

さいごに

育て方のせいで吃音になることはないと知って、ほっとした読者もおられるでしょう。

幼児期の吃音は、ときに吃音になったり、上手に言える時もあったりするので判断がつきにくいもののようです。5歳ごろになっても改善しないようなら思い切って専門家に相談してみましょう。8歳以上になると、幼児期に比べ、改善しにくくなるとされています。

重症化する前に言語聴覚士などに相談するといいですね。各都道府県の言語聴覚士会ホームページを見てみましょう。

言語聴覚士がいる施設を調べることができ、地域の保健センターに紹介してもらったりして、言語聴覚士に相談してください。

2020年中に、記事内でご紹介した国立障害者リハビリテーションセンターが「吃音に関するガイドライン」を作成します。小児科や耳鼻咽喉科の医師らが言語聴覚士と協力するときの指針となり、社会全体で最新の治療や知識を共有できるようになります。

同研究チームは医療機関向けだけでなく、家庭や保育園・幼稚園向けの参考資料も作成してくれ、吃音の基礎知識やサポート方法などが紹介されるので、心強いですね。

オンライン吃音相談もあるようですので、参考までに載せておきます。

https://www.online-stuttering.com/サービス概要/単発相談/就学前のお子さん/

吃音に限らず、周りの大人が焦らず、ゆったりした気持ちで子どもの発達の経過を見守ることも、子どもの成長を支えるうえで大切なことです。

この記事の著者

【ライター・コラムニスト】神戸市外国語大学を卒業後、京都府立高校で英語教師として勤務。その後、40歳で米国ジュニアタ大学に留学し、平和学を専攻。続いてオハイオ州立大学　教育学部　修士取得、博士課程、単位取得。帰国後、関西外国語大学にて教授。時事、カルチャー、政治経済、幼児教育～社会人教育まで多岐にわたる分野で記事執筆。20年間インドのアウトカーストの子どもたちの教育支援を行っている。 2018年、インド支援の一環として出版社、Murata Publisherを立ち上げる。著書に東洋経済新報社より「クリティカルシンキング　基礎編」「クリティカルシンキング　実践編」「誰も知らなかったインド人の秘密」、Murata Publisherより電子本39冊出版。

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