日本の子ども達の幸福度・格差を世界と比較！ユニセフのレポートから分かる日本の現状とは？

ライター　村田美子

2021/05/05 05:05

皆さんはユニセフと聞いて、何を思い浮かべるでしょうか？ユニセフは190の国と地域で保健、栄養、水と衛生、教育などに取り組んでいる国連機関です。また、ユニセフはイタリアのイノチェンティ研究所で研究を行っています。この記事ではユニセフのレポートに書かれているレポート11「先進諸国における子どもの幸福度の国際比較」と、レポート13「子どもたちのための公平性：先進諸国における子どもたちの幸福度の格差に関する順位表」を読み解き、日本の子どもたちが置かれた状態を客観的に知るチャンスにしたいと思います。

各国の通信簿「イノチェンティレポートカード」とは？
子どもの幸福度はどのようにして測る？
日本の子どもの幸福度の結果は？
子どもの格差の状況
日本は所得格差で下位という結果
さいごに

各国の通信簿「イノチェンティレポートカード」とは？

ユニセフ・イノチェンティ研究所は、毎年「レポートカード」を発行し、いわゆる各国の通信簿を発行しています。

（リンク）ユニセフ・イノチェンティ研究所レポートカード

所得データを使った生活水準の比較だけではなく、学力・健康・交友関係・家族関係などのデータを分析して子どもの置かれている状況を包括的に捉えています。

まず、先進国に住む子どもたちの幸福度に関する2013年のレポートを詳しく見ていきましょう。

子どもの幸福度はどのようにして測る？

ユネスコと日本の国立社会保障・人口問題研究所が共同で『イノチェンティレポートカード11 先進国における子どもの幸福度—日本との比較特別編集版』を発表しました。

子どもの幸福度や貧困を、所得だけでなく生活必需品の有無、健康、教育、日常生活上のリスクといった分野でより直接的、多角的に測っています。まず、こちらをご覧ください。

子どもの幸福度に関する総合順位表『イノチェンティレポートカード 11先進国における子どもの幸福度―日本との比較特別編集版』

子どもの幸福度を構成する内容と使用した指標には、以下のようなものがあります。

・物質的豊かさ、物質的剝奪（子どもの年齢と知識水準に適した本（教科書は除く）・自転車、ローラースケートなど屋外レジャー用品・知育玩具、積み木、盤ゲーム、コンピューター・ゲームなど屋内ゲームがあるかどうか、修学旅行や学校行事の参加費・宿題をするのに十分な広さと照明がある静かな場所・インターネットへの接続・新品の衣服・誕生日などのお祝い）

・健康と安全、出生時の健康（乳児死亡率・低出生体重児出生率・予防医療予防接種率・子どもの健康子どもと若者の死亡率）

・教育（就学前教育就学率・高等教育就学率・ニート率・学習到達度 PISAテストの平均点）

・日常生活上のリスク、健康行動（肥満児の割合・毎日朝食をとる割合）、リスク行動（10代の出生率・飲酒する割合・暴力いじめを受けたことのある子どもの割合）

・住居と環境（１人あたりの部屋数・住居に関する問題）、環境面の安全（殺人発生率・大気汚染）

日本の子どもの幸福度の結果は？

日本は、31カ国中、総合順位は6位で、オランダと北欧4カ国（フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン）に次ぐものでした。

教育に関してはなんと1位！！でも、手放しで喜ぶわけにはいきません。他の上位5カ国は、全ての分野で成績がよいのですが、日本は「物質的豊かさ」では21位で、「健康と安全」では16位と、ばらつきがありました。なぜアンバランスなのか、詳しく見ていきましょう。

物質的豊かさの指標で日本が低かった原因は子どもの貧困と関係があります。貧困状態にある子どもの割合を示す「相対的貧困率」が14.9%で、下から数えて10番目という結果です。すなわち、格差が大きいということです。

日本の子どもの剝奪率は7.8%で18位でした。「インターネットへの接続」が日本の子どもたちに最も欠如している品目でした。このことは、新型コロナウイルス蔓延で、休校になっている学校が多い中、家庭でネットに接続が難しいという現状に繋がっています。

健康と安全に関して、日本は最下位！なぜ？

子どもの死亡率や予防接種率では上位でしたが、低出生体重児出生率（2,500グラム未満で生まれる乳児の割合）が最下位でした。

その理由としては、低体重の女性の増加、若い女性の喫煙の増加、妊娠中に厳格な食事管理を行う傾向、所得格差の拡大などが挙げられています。

日常生活上のリスクとして、日本では、いじめを受けたことがあると答えた13〜15歳の子どもは27.4%で、30カ国中12位でした。

住居と環境分野では、子どもがおかれた社会環境における暴力の水準の指標として用いられた、年間の殺人発生数(10万人あたり)では、日本は31カ国中2番目に低いという結果になりました。

子どもの格差の状況

イノチェンティレポートカード13は、欧州連合（EU）、経済協力開発機構（OECD）に加盟する41カ国を対象に順位付けしました。

底辺に置かれた子どもたちが、平均的な子どもたちから取り残されている状況を「底辺の格差」と呼び、所得、学習到達度、主観的な健康状態、生活満足度に関してそれぞれ分析を行っています。

首都大学東京子ども・若者貧困研究センター長の阿部彩氏が次のように述べています。

日本の子どもの格差の状況について「日本は比較的平等だから、それほど酷い貧困状態の子どもは少ないのだろう、と思っていらっしゃる方には、本レポートは驚きとなるでしょう。従来の「何人（何%）の子どもが貧困なのか」ではなく、「貧困とされる子どもたちがどれほど深刻な状況にあるのか」（貧困の深さ）に着目する本報告書は意義深いものです。

出典：阿部彩氏談

日本は所得格差で下位という結果

日本は41カ国中で下から8番目でした。所得分布の下から10%にあたる子どもの世帯所得は中央値にあたる子どもの約40%で、格差が非常に大きいことを示しています。

アメリカも所得格差の順位表において下位3分の1に入っているものの、健康関連の4つの指標全てで改善を見せました。

学習到達度に関していうと、日本は37カ国中で下から11番目でした。エストニア、アイルランド、ラトビア、ポーランドの4カ国は学習到達度の格差を是正し、最低限の習熟度レベルを下回る子どもたちの割合が低くなりました。

子どもたち自身は、自分たちの状況、生活の満足度をどのように評価しているのでしょうか？　0～10のスケールで評価してもらったところ、平均スコアは8でした。

しかし、分布の下にいる子どもたちは、平均的な子どもたちから大きく取り残されているのが現状です。

また、どの国も13歳～15歳の女子は、同年齢の男子よりも低い生活満足度を示しています。

ユニセフ・イノチェンティ研究所のサラ・クック所長は次のように述べています。

報告書が明らかにしたのは、いずれの国においても、子どもの幸福度は、個人の置かれた状況や経済発展の水準によって必然的に決まるものではなく、政策の選択により決定付けられるものだということです。

出典：サラ・クック所長談

さいごに

首都大学東京子ども・若者貧困研究センター長の阿部彩氏は、「レポートの結果で日本の成績がよかった分野も、将来的には悪化する可能性もあり、そのような注意喚起として調査結果をとらえてほしい」と述べています。

新型コロナウイルス蔓延の影響で、まさに今、その悪化の時が来ているのではないでしょうか。子どもの貧困・格差問題、低体重問題、ネット接続率の低さが大変気になるところです。

この記事の著者

【ライター・コラムニスト】神戸市外国語大学を卒業後、京都府立高校で英語教師として勤務。その後、40歳で米国ジュニアタ大学に留学し、平和学を専攻。続いてオハイオ州立大学　教育学部　修士取得、博士課程、単位取得。帰国後、関西外国語大学にて教授。時事、カルチャー、政治経済、幼児教育～社会人教育まで多岐にわたる分野で記事執筆。20年間インドのアウトカーストの子どもたちの教育支援を行っている。 2018年、インド支援の一環として出版社、Murata Publisherを立ち上げる。著書に東洋経済新報社より「クリティカルシンキング　基礎編」「クリティカルシンキング　実践編」「誰も知らなかったインド人の秘密」、Murata Publisherより電子本39冊出版。

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