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中国の幼児教育を徹底解剖!なぜ学力テストPISA世界第1位を取れたのか?

ライター 村田 美子
2020/11/11 23:11
中国が、2018年に学力調査PISAで世界一になったことをご存じですか?中国といえば、近年の目覚ましい経済発展や長年の一人っ子政策を止めたことで知られていますが、最近の教育事情はどうなのでしょうか?この記事では、保育園が少ない中国での就学前教育に焦点を当てます。

PISAとは?

PISAは“Programme for International Student Assessment”の略語でOECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に3年ごとに実施される15歳児の学習到達度調査のことです。主に読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーなどを測定します。
2009年は読解力、2012年は数学的リテラシー、2015年は科学的リテラシーが、そして2018年は読解力がメインに調査されました。
国立教育政策研究所のまとめた「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」によると、中国の2009年以降の調査結果は以下の通りです。
上海は全ての項目で2009年、2012年、2018年の調査で1位を獲得しました。教育レベルの高い上海を選んで調査しているという批判を受け、2015年の調査では、上海のほか3地域(北京・江蘇・広東)が調査対象に加わりました。結果、2015年の順位は下がりましたが、2018年の調査結果では、1位になりました。
このように、目覚ましい経済発展だけでなく、教育でも中国は世界の注目を集めています。

中国の教育の概要・特色

まず、中国で行われてきた教育の歴史を見てみると、1978年以降、教育が重要な政策的課題として位置づけられました。
政策的には2010年に策定された2020年までの教育発展計画「国家中長期教育改革・発展計画綱要」と、2017年1月に公表された「国家教育事業発展13次5カ年計画」(2016-2020)に基づいた教育施策が展開されています。
現在では、義務教育が中国全土に普及し、地域間格差の是正や教育機会の公平化が最重要課題になっています。特に、創造性を重視し、それを中心に据えた「資質教育」が推し進められています。
中国の教育制度は日本と同様の6-3-3-4年制ですが、多くの親は教育を将来への投資と考え、受験戦争は日本よりも激しいと言われています。
また、テクノロジーを活用した教育サービスを提供する企業も現れ、多くの子どもたちが利用しています。中国がPISAで世界一になった要因の一つとして、このような教育産業が考えられるのではないでしょうか。

中国の保育園

次に0歳から5歳までの教育事情を見てみましょう。中国では 0~3 歳の保育機関として1950 年代から 1990 年代までは保育園がほとんどでした。しかし、現在ではそれが大幅に減少しています。以前はほとんどの国有・国営企業に保育所が設置されていましたが、企業の民営化によって、多くの保育所が切り離されたことが理由です。
中国では共働き世帯が多く、保育園が少ないため、祖父母の力を借りて共同育児(co-parenting)をしたり、3歳まで祖父母が孫を育てるのが一般的です。
2017年に中国・上海で実施された「祖父母の育児参加に関する調査」では、1歳児をもつ母親522名を対象にアンケートが行われました。その結果、祖父母が全面的に孫の面倒を見る家庭が26%、祖父母と親が共同育児をしている家庭が62%、親だけで子育てしている家庭は12%でした。
参考:孫 怡(立命館大学グローバルイノベーション研究機構 専門研究員)2019年
「中国都市部における祖父母との共同育児の現状と影響」

中国の幼稚園

中国では3歳~5歳の就学前教育は義務ではなく、入園率は75.0%(2015年)です。中国では共働きが一般的であるため、保育時間は長く、寄宿制(土・日曜日のみ帰宅)もあります。将来的には、0歳から5歳までの総合的な保育・教育機関になると思われます。
近年、経済成長の目覚しい中国では、首都を中心に幼児教育が注目され、勉強中心の幼稚園で、言語、数理演繹、科学、美的感覚などが教えられています。
1980年の一人っ子政策以後、中国の幼稚園は以下のような問題を抱えています。
両親が共働きで、祖父母に溺愛されて育つ子どもも多く、社会性や生活習慣が身についていなかったり、わがままだったりするため、幼稚園の先生は大変なのが現状のようです。
また、中国の幼稚園は知育や習いごとが中心で、子どもたちは無心に遊ぶ時間が少なく、創造性や、社会性が養われる要素が少ないと言えます。
一方、中国の農村部に行くと、幼稚園に行っていない子どもも多く、中国全土としては、地方と都会の教育格差が問題となっています。

中国の義務教育

中国では、大体、日本と同じような小学校6年、初級中学校3年、計9年間の義務教育制度が敷かれています。地域によっては、小学校5年間、初級中学4年間のところもあります。
1995年から週5日制となり、土・日は休日です。しかし、上海や北京など都市部では受験競争が激しいため、補習などで子どもたちは疲弊しているのが現状です。
義務教育の無償化は、農村部から段階的に進められ、2008年9月には全面無償化の方針が打ち出され、現在に至っています。
英語教育は小学校3年生から、都市部ではそれよりも早くから行われています。以前は外国人が入学できる学校は少数でしたが、現在は受け入れる学校が複数校あります。中国人児童生徒とは別の国際部で授業を受けることになり、学費も払わなければなりません。

日本・中国の育児意識を比較してみよう

少し古いデータですが、矢野経済研究所が2010年に3~6歳の未就学児を持つ日本人の母親489人と北京・上海の母親150人にインターネットによる調査を行いました。
その結果が興味深いのでご紹介します。
まず、「育児で関心の高いこと」を尋ねたところ、以下のようになりました。

日本人の母親の回答

1位「生活習慣(早寝早起きなど)」(53.4%)
2位「あいさつ・礼儀」(46.2%)
3位「栄養管理(好き嫌いをなくす)」(33.1%)

中国人の母親の回答

1位「学力向上」(67.3%)
2位「体力向上」(61.3%)
3位「習い事」(46.0%)
このように、生活習慣を重要視する日本人の母親と、教育に重きを置く中国人の母親の姿が明らかになりました。
将来的な教育スタンスについても、日中で違いが鮮明な部分を下の図で確認してみましょう。
将来的な教育スタンス
将来的な教育スタンス(出典:矢野経済研究所)
日・中で差が出たのは以下の項目です。
「生活レベルを落としてでも教育へは惜しみなく費やす」(日本10.6%、中国70.7%)、
「子どもが勉強するためには親の介入は不可欠」(日本25.4%、中国57.3%)、
「子どもの自主性を重んじ、親としては教育(筆者は「進路」と解釈)に介入しない(日本7.6%、中国47.3%)
「お金に余裕はないが、公立学校を中心になんとか大学まで出てほしい」(日本45.0%、中国26.0%)

さいごに

1980年代、中国では小学校教育もままならないような状態でした。1980年代後半から行われた教育改革は経済発展を推進する人材育成を目的としていました。結果、2009年には99%の子どもたちが義務教育を受けることができるまでになりました。
2016年現在、幼稚園の55.2%は私立です。逆に義務教育は公立が92.4%を占め、小学校の就学率は、99.92%で、です。(文科省調べ)また、2008年9月から、都市部も含めて全面無償化の方針が打ち出され、実施されています。
現在、中国の教育は質の向上に重点が置かれ、子どもの創造性や主体性、実践能力などの養成を重視する傾向にあります。とはいえ、「教育は投資」という中国人の親の意識は根強いものがあり、英才教育を提供する企業も多くあります。今後の中国の教育を注視していきたいと思います。
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