オーストラリアの教育の特徴ご紹介！オーストラリアの幼稚園ではグローバル体験ができる！

ライター　村田美子

2023/06/12 05:06

広大なオーストラリアは、国全体にヨーロッパやアジアなど、様々な文化が広っています。1970年代に白豪主義を止めたオーストラリアは、世界に先駆けて多文化主義の国になりました。そのため、幼児教育からグローバルな環境で過ごすことができます。この記事では、就学前の教育に焦点を当てて、義務教育に関しても詳しくお伝えしましょう。

オーストラリアの就学前教育
オーストラリアの幼児園の特徴
オーストラリアの義務教育
多文化主義って？
オーストラリアの外国語教育LOTEって？
さいごに

オーストラリアの就学前教育

オーストラリアはニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、クイーンズランド州、西オーストラリア州、タスマニア州の5州で構成されます。教育は州の管轄で、州ごとに制度が違います。

たとえば、クイーンズランド州では、2017年からプライマリースクール（小学校）に入学する前年にプレップと呼ばれる準備教育を受けることが義務付けられました。

プレップは、デイケアやプリスクール（保育園や幼稚園）などを通じて、受けることが可能です。入学要件や授業料は学校や所属する州や地域によっても大きく変わってきます。

プレイグループ

プレイグループは少人数の幼児教育システムで、0歳から5歳までの子どもが集まって一緒に遊び、社会性を養うことを目的としています。

プレイグループは教会やコミュニティーセンターなどで開かれていて、親や祖父母などが子どもといっしょに参加します。日本人向けのものもあり、参加するには利用料金を払いますが、安価です。

ファミリーデイケア

保育資格がある人が自宅で5人くらいまでの子どもを預かってくれる家庭保育です。1人で4人くらいを見ていることが多いです。部屋の広さや安全確認など厳しい基準があり、市役所の担当者が面接を行い、ファミリーデイケアとしてふさわしいと判断した場合に登録し、子どもを預かってほしい人との間でマッチングをします。ファミリーデイケアでは生後6週間から12歳までの子どもを預かってくれます。

デイケア（保育園）

日本の保育園のような感じで、0歳児（生後6か月）～5歳児を7～18時まで預かってくれ、1クラスは20人前後です。

デイケアの1日の費用は、立地条件や地域によってさまざまで、一日1万円近く払わなければならないデイケアもあり、日本と比べ非常に高額です。

デイケアとプリスクールが併設されているところもあり、7時～18時の間で9時～15時はプリスクールとして、7時～9時と15時～18時まではデイケアとして機能するというところもあります。

Family Benefitという政府からの援助で約半額になることが多いですが、オーストラリアの永住権保持者であることや、働いている母親（勉強している母親も）ことが条件です。

プリスクール（幼稚園）

日本の幼稚園のような感じで、3～5歳の子どもを9時～15時までしっかりしたカリキュラムのもとで指導してくれます。1クラス20人前後とデイケアと同じですが、費用はデイケアより格段に安いです。

オーストラリアの幼児園の特徴

質が高く、グローバルな環境のもとで伸び伸びと創造性を養えることがオーストラリアの幼稚園の特徴です。オーストラリアについてもう少し詳しく見てみましょう。

オーストラリアは人口の約1/4が海外からの移民である多民族国家で、ヨーロッパ・北米・南米・アジア・中東など、様々な言語や文化、慣習を持つ子どもたちが幼稚園に通っています。

幼いころからグローバルな環境にどっぷり浸かると、アイデンティティや価値観の形成にも大きな影響を与えることは明らかですね。

オーストラリアにはEarly Years Learning Frameworkという枠組みがあり、5歳までの子どもの学びや小学校入学への準備に関する原理・原則を示しています。

「遊びを中心とした学び」が特に重要視されていて、社会性や感情面での発達、コミュニケーションや言語スキルの発達のプログラムが実践されています。

引用：Australian Children’s Education and quality Authority（ACECQA）

オーストラリアの義務教育

義務教育は、5（6）歳から15歳までです。初等教育は6～11歳まで、中等教育は12～17歳までの6年間です。

タスマニア州は5歳から、その他の州は6歳からが義務教育で、タスマニア州以外の州には1年生になる前に「プレップ」と呼ばれる準備期間があります。

オーストラリアの小学校のほとんどは公立です。学区制が敷かれているので、子どもたちは普通、近隣の公立小学校に通うことになります。

私立の小学校は、キリスト教やイスラム教などの宗教的な背景があるものが多く、その他、モンテソリーやコミュニティスクールなど、オルタナティブ教育を行っている小学校もあります。

オーストラリアの小学校は1月末～2月に始まり、12月に終わります。ほとんどが4学期制で、各学期は10週間ぐらいで、学期と学期の間に2～3週間の休暇があります。夏休みは12月下旬から1月末までの約5週間あります。

多文化主義って？

なぜ、オーストラリアには様々な文化を持つ人たちが住んでいるのでしょうか？かつてオーストラリアは白豪主義を採用していましたよね。それは有色人種の移住を制限し、先住民に対しては絶滅か同化政策を進めるものでした。

オーストラリアは白豪主義から一変、1970 年代に多文化主義を導入しました。背景には経済的理由がありました。一文化社会ではなく多文化社会を維持し、その利点を経済的に最大限にすることが目的でした。

多文化主義とは、①移民・難民などの定住を支援し、社会参加を支援すること、②移民・難民の文化・言語を尊重し支援すること、③多言語テレビ・ラジオ局（SBS）、多文化・多言語教育の導入を全国一律に実施することを目的としていました。

1995年にオーストラリアの学校におけるアジア言語・文化教育に関する国家計画としてNALSAS（National Asian Languages and Studies in Australian Schools　アジア言語特別教育プログラム）が採用され、日本語，中国語，インドネシア語，韓国語が多くの小学校や中学校で学ばれています。

次の章で、オーストラリアの外国語教育、LOTEについて詳しくご紹介します。

オーストラリアの外国語教育LOTEって？

オーストラリアでは外国語学習のことをLOTE学習と呼び、様々な言語が学習されています。LOTE（Languages Other Than English　英語以外の外国語）を略したものです。

外国語教育：LOTE（Languages other than English）

LOTE（Languages other than English）とは、日本語に訳すと「英語以外の言語」です。

外交・経済の発展を目的の1つとして、以下のような外国語が推奨されました。

アラビア語

中国語

フランス語

ドイツ語

ギリシャ語

インドネシア/マレー語

イタリア語

日本語

スペイン語

特に、日本語は多くの小学生や中学生が学んでいます。国際交流基金が行っている外国での日本語教育の実施状況の調査「2015年度日本語教育機関調査」によると、オーストラリアの日本語学習者数は約36万人です。学習者数は、209,123人で、全体の58.5%、中等教育で138,345人で、全体の38.7%を占めています。

LOTE学習として小学校がめざしているのは、

(1) 文化的多様性の認識，尊重および受容　

(2) 母語以外の言語の習得　

(3) 全般的な言語能力の向上　

(4) 中等学校への準備　

(5) 地域への貢献とLOTEを尊重する気持ち　

(6) カリキュラムの統合による効果　

(7) 生徒の興味，関心を増す、などが挙げられます。

さいごに

幼稚園からさまざまな文化背景を持った子どもたちと触れ合うことができるオーストラリアの幼児教育、小学校教育についてお話ししました。小学校から日本人の子どもがオーストラリアに留学することも、それほど難しいことではありません。親子留学もあります。興味がある方は、留学を斡旋している業者があるようですのでご参照ください。

この記事の著者

【ライター・コラムニスト】神戸市外国語大学を卒業後、京都府立高校で英語教師として勤務。その後、40歳で米国ジュニアタ大学に留学し、平和学を専攻。続いてオハイオ州立大学　教育学部　修士取得、博士課程、単位取得。帰国後、関西外国語大学にて教授。時事、カルチャー、政治経済、幼児教育～社会人教育まで多岐にわたる分野で記事執筆。20年間インドのアウトカーストの子どもたちの教育支援を行っている。 2018年、インド支援の一環として出版社、Murata Publisherを立ち上げる。著書に東洋経済新報社より「クリティカルシンキング　基礎編」「クリティカルシンキング　実践編」「誰も知らなかったインド人の秘密」、Murata Publisherより電子本39冊出版。

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