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インドの教育の概要と特色。「就学前教育」から「インドの受験事情」もご紹介。

ライター 村田 美子
2022/03/14 09:03
インド人は英語を流暢に話す人が多いですよね。それは幼稚園の時から英語に親しんでいるからです。インドの経済的に恵まれた家庭では、教育条件が良い幼稚園~高校一貫性の私立学校へ子どもを通わせます。日本で「インドの教育はすごい!」と評されるのは都市部の私立施設での様子です。

はじめに

インドに関する教育記事を書くにあたって、筆者は20年以上インドの貧困層の子ども支援をしているので、複雑な心境になっています。インドのどのカーストの、どの経済状況にある子どもに焦点を当てるかで、状況が全く変わってくるからです。
大多数の貧困層に焦点を当てればNGO主体のスラムの学校や公立学校についての記事になるし、中産階級に焦点を当てれば私立学校になります。さらに、上流階級になれば、寄宿学校でイギリスなどでの海外留学を視野に入れた教育になります。
この記事の読者が、日本に住んでいる0~6歳の子どもを育てているパパやママということを考えて、中産階級の教育事情についてお伝えすることにします。大国インドの象の鼻の一部を触ることになることを予めご了承ください。

インドの就学前教育

インドでは就学前教育は3歳からが対象となりますが義務ではありません。公立の幼稚園はわずかで、ほとんどが私立幼稚園です。費用は月額500~20,000インドルピー(7500円~30000円)と幅があります。
このような幼稚園はプリスクールとかプレイスクールと呼ばれ、英語やヒンディ語の読み書きの基礎を教えたり、歌やダンス、お絵描き、園外の社会見学など、多様なアクティビティが行われています。
授業は午前中のみですが、希望すればデイケア(延長保育)を受けられます。基本的には英語が使われますが、幼い子どもに対してはヒンディ語も多く使われます。
インドの私立の教育施設は校舎や学校内の設備が充実していて、教師の質も高く、レベルの高い教育内容が行われています。そのような私立の学校(小学校~高校)に行くためには、幼稚園から入学しなければならないため、受験競争が幼稚園から始まります。
幼稚園~高校までの一貫教育である私立校のなかにはキリスト教系の学校もあります。ウダイプル(ラジャスターン州にある中都市)に住む筆者の友人の子どもは3人全員がキリスト教系の幼稚園に入り、高校卒業時にはネイティブ並みの英語力を身に着けていて、驚いた経験があります。
先ほど、公立幼稚園はわずかだと言いましたが、就学前教育を州レベルで導入し始めているところも出てきました。インド北部のパンジャブ州政府は、2017年に公立の小学校12000校で、就学前教育を始めました。
とはいえ、公立の小学校自体、図書館はもちろん机も椅子もないような状態です。このように、インドの公立と私立の学校の教育環境には天と地ほどの差があります。

インドの教育の概要と特色

インドの教育制度は州政府の管轄下にあり、州が地域の学校の教育に責任を負っています。2002年の改憲により、5~13歳の義務教育が国民の権利として定められ、2009年に無償義務教育権法が制定され、2010年4月1日に発効しました。このように義務教育の歴史はわずか10年たらずで、決して長くありません。
インドの教育制度は基本的に5・3・2・2制です。その年の3月31日までに満5歳になる子どもは、その年の4月1日に小学校に入学すると決まっています。日本より1年早いですね。
詳しく言うと、5(5~10歳)・3(10~13歳)・2(13~15歳)・2年(15~17歳)で、義務教育は8年生(13歳)までの8年間です。
中等学校(10年生、15歳)修了後、修了共通試験があり、それに合格した人は上級中等学校に進んで、2年間の教育を受けます。
12学年を終了した後、17歳で修了共通試験を受け、その結果よって希望する大学に進学しますが、トップレベルの大学では別途、入学試験を行うところもあります。大学進学率は10%ぐらいです。

受験競争が熾烈なインドの私立学校

都市部の私立学校では、幼稚園から12年生までの一貫教育を行う学校が多く、英語で教育が行われています。インドの中間層以上の家庭の子どものほとんどは私立幼稚園に通います。
私立校への入学戦争は熾烈を極めており、3歳のNurseryと5歳のGrade1の入学が親にとって正に戦争となります。
有名校のほとんどはオンラインで事前に申し込めますが、この申し込みはポイント制になっていて、親族の中にこの学校の卒業生はいるか、在学中の兄弟はいるか、何ヶ国語(州の言語含む)話せるか、学校までの距離は何㎞か、等の質問項目の回答の獲得ポイントが高い順に入学許可がおります。外国人には少々不利ですね。
インドの私立学校では、コミュニケーション能力を育てるディベートや朗読コンテスト、スポーツ競技会や文化活動のプレゼンなど、充実した教育活動など、ハイレベルな教育が行われています。

インド内の格差について

筆者は20年間インドのGovernment School(公立小学校)やNGOが運営するスラムの子どものための学校の支援を続けていますが、その惨状は言葉では表せないほどひどいものです。同じ国にあるとは思えないほどの差があります。
理由は大変複雑で、カースト制度も絡んでいます。独立以来、公教育の重要性が叫ばれてきたにもかかわらず、政府関係者の子弟は公立にはいかないため、改善は口先だけのものになってきたのです。
公立校はGovernment School(政府立校)と呼ばれ、学費は無償で、制服や給食、学用品等も支給されます。授業は全てヒンディ語か州の言語(インドには800以上もローカルな言語があります)で行われています。大抵、午前と午後の二部制になっていて、先生二人が100人ぐらいの生徒を教えています。
筆者が支援している学校は、つい最近トイレが設置されましたが、教室は二つ、職員室も音楽室も体育館もありません。机や椅子がないため、生徒は床に座って授業を受けています。これまで世界中の学校を見てきましたが、図書館がない学校はインドが初めてでした。
スラムの子どもたちの学校はさらに悪い状態で、多くは青空学校です。

さいごに

ユニセフによると、世界中には2018年の時点で小学校学齢期の子どもたちの8%、5900万人が学校に行っていません。それは12人に1人を意味します。そのうち、半数以上にあたる3,200万人がサハラ以南のアフリカ地域の子どもたちで、1,300万人がインドなど南アジア地域の子どもたちです。
インドでは学校に行かない子どもがつい最近まで大勢いました。2002年に義務教育化が始まり、今では初等教育の就学率は100%に達したと報告されていますが、中退者も多く、中等教育へ進学するものは少ないのが現状です。このように、貧困層は、経済的な制約によって学校選択の余地が限られ、入学以前の段階で子どもの将来が決まってしまうという厳しい現実があります。
その一方で、一旦、私立幼稚園に入学できれば、小学校、中学校、さらに高等教育へ進めるために、中間層の親は必死になって有名幼稚園に子どもを入れようとするのです。
ハイレベルで世界中の注目が集まるインドの教育制度ですが、それは中間層・富裕層が通わせる私立校に関することだと解かっていただけましたか?
評判の良い私立学校に入学できても、インドの子どもたちは大学受験までの圧力に耐えて勉強しなければなりません。そのため、多くの子どもたちが精神的ストレスを感じているのが現状です。
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