日本初のチャータースクール!「大阪市立水都国際中学校・高等学校」をご紹介
チャータースクールって?
「チャーター」とは、契約のことです。
学校を設立したいと考える保護者・教育者などが公と契約を結んで、教育活動を行います。
官邸の資料はアメリカのチャータースクールを以下のように定義しています。
親や教員,地域団体などが,州や学区の認可(チャーター)を受けて設ける初等中等学校で,公費によって運営。 州や学区の法令・規則の適用が免除されるため,独自の理念・方針に基づく教育を提供。
つまり、チャータースクールは公費で運営されている全入で無償の私立学校ということですね。
そのため、成果が上がらないと、契約を取り消されてしまいます。
私立なので、多くの法令・規則の適用が免除され、独自の理念・方針に基づく教育ができます。
チャータースクール設立の背景
アメリカの公立学校は、従来、地域(学校区)の責任とされ、財源が地方税であるため、経済的に豊かな人が多い地域と、そうでない地域の教育の質の差が大変大きい現状がありました。
1983年、連邦報告書『危機に立つ国家(A Nation at Risk)』が発表され、アメリカの教育レベルの低下が危機的な状況にあることが明らかになりました。
その時期、都市の公立学校の多くは薬物・暴力・ドロップアウトなどの問題を抱え、学校が荒れ、それを嫌った保護者の多くがホームスクーリングなどを始めた時期と重なります。
保護者が多様な教育サービスの中から子どもに最適な教育を選択する需要が盛り上がり、チャータースクールが誕生しました。
1991年,ミネソタ州でチャータースクールの設置を認める法律が成立し、その後、全米に広がっていき、2016年の段階で、36州及びワシントンDCで、 6855校、 280万人の生徒(全米の公立学校生徒数の6%)がチャータースクールで学んでいます。
日本での取り組み
日本でも、2013年、第二次安倍内閣が成長戦略の柱として、「国家戦略特別区域法」を制定しました。
この法律により、日本でも公立学校の運営を民間に委託する「公設民営学校」が可能になりました。
公設民営とは、国や地方公共団体が施設を設置し、その運営を民間に委託することです。
従来「公」が行ってきた業務について、「民」のノウハウや実績を活かし、効率的な管理・運営を行うことをねらいとしています。
今までも公設民営学校はありましたが、私立校として設立され、その運営費は原則、学校法人が負担してきました。
しかし、国家戦略特別区内には公立の公設民営学校が設立できるようになり、地方公共団体により運営費が補助されます。
参考:公立学校運営の民間への開放 ― 公設民営学校の解禁 ―|立法と調査2014.3 No.305参議院事務局企画調整室
日本初のチャータースクール、水都国際中学校・高等学校について
日本初の公設民営による公立の中高一貫教育校が、大阪市で2019年4月に開校しました。
大阪市立水都国際中学校・高等学校は、大阪市教育委員会によって設立され、運営は学校法人大阪YMCAに委託されています。
水都国際中学校・高等学校は、学習指導要領に基づく学習に、課題探求型授業を加え、将来国際的な舞台で英語を駆使して活躍する人材を育てることを目標にしています。
現在、国際バカロレア(IB)初等教育プログラム/中等教育プログラム/ディプロマ・プログラムの候補校で、IB認定校として申請中です。
「国際バカロレア(International Baccalaureate)」(略称IB)に関しては、別記事「グローバルな世界で活躍する子どもに!「国際バカロレア」の最新情報」をご参照ください。
もう少し詳しく大阪市立水都国際中学校・高等学校に関する情報をお伝えしましょう。
大阪市立水都国際中学校・高等学校は、大阪市住之江区に開校した日本で初めての公設民営の中高一貫教育校です。
公立学校の水準を維持しつつ、学校法人、大阪YМCAが持つ世界的なネットワークや、130年以上の青少年教育の実績・ノウハウを生かした教育が行われます。
「英語教育」、「国際理解教育」、「課題探究型授業」を3つの教育の柱とし、心、知性、身体のバランスの取れた全人教育を理念の核としています。
知性、主体性、寛容性、異文化理解、探究心、深い思考力を養い、地球的な視野に立ち、地域社会と国際社会の平和と発展に貢献する人を育成することを目標としています。
水都国際中学校では、標準時数と比較して計140 時間(週4 時間)多く設定しています。
外国語、グローバルスタディーズ(国際理解)、コミュニティ&アクションなどのクラスがあります。コミュニティ&アクションが斬新ですね。
定員は80名で、2022年度から高等学校160名(内部進学80名、外部入学80名)になります。 高校1年では、全員が必履修科目を中心に共通履修し、高校2年から、生徒の個々の興味、関心、進路目標等に応じて、3つのコース別に履修します。
高校卒業時には、CEFR B2 レベル(TOEFL・iBT 72-94、英検準1級等)以上の英語運用能力の習得をめざします。
① グローバルコミュニケーションコース
地球市民として地域、国際社会で活躍するための実践的なコミュニケーション能力や英語運用能力を育成するコースです。
相手の意見を理解し、自分の意見を英語で論理的に述べるトレーニングを行います。
文系科目を中心に、国際バカロレアコースのDP授業が一部選択できます。
国内大学文系学部を中心に海外大学にも進学可能な英語運用能力の育成をめざします。
② グローバルサイエンスコース
自然科学分野において、国際的な舞台で科学的能力や知見を発揮して活躍できる人材を育成するコースです。
STEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics) 教育について、英語で授業を行うことで、科学的に分析・データ処理できる力、科学的事象や内容を理解し論じられるだけの論理的思考力・英語運用能力を育成します。
理系科目を中心に、国際バカロレアコースのDP授業が一部選択できます。
国内大学理系学部を中心に海外大学にも進学可能な英語運用能力の育成をめざします。
③ 国際バカロレアコース(2020年度開設予定)
英語及び日本語でDP授業を行い、国際バカロレア・ディプロマ資格の取得をめざすコースです。
英語、数学、理科は英語で授業を行い、他の科目は日本語で行います。
自らの考え・文化等について高い語学力を駆使して世界に発信でき、また交渉力を発揮して、ビジネスを含めた 国際舞台でリーダーシップを発揮できる人材を育成します。
国際バカロレア・ディプロマ資格を生かし、世界中の大学への進学をめざします。 参考:https://osaka-city-ib.jp
さいごに
以上、アメリカで生まれたチャータースクールの特徴や、2019年に日本で開校された 「大阪市立水都国際中学校・高等学校」に関して、その詳細をご説明しました。
大阪市立水都国際中学校・高等学校では、第一線で活躍中の民間企業人による授業も計画されています。
記事を書きながら、日本の教育がどんどん国際基準へと進化していることを実感しています。
読者の皆さんのお子さんの多くは、まだ幼児期だと思いますが、今から情報のアンテナを伸ばし、経済的負担の少ない公立の私立学校について考えてみてはいかがでしょうか?