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世界のボーディング・スクールについて知ろう

ライター 村田 美子
2021/05/12 01:05
ボーディングスクール(全寮制の学校)といえば、英国のイートン校を思い浮かべますが、実は世界中にあって、18歳までの生徒が語学や音楽、演劇、芸術、話術、社会やスポーツなどを学んでいます。いずれも名門校で、スイスには3歳からのボーディング・スクールもあります。この記事では、ボーディング・スクールの歴史や概要などについてお伝えしましょう。気になるスイスの幼児~小学生向けのプログラムもご紹介します。

ボーディング・スクール(Boarding School)とは

ボーディング(boarding)とは「寄宿生活」という意味で、18歳まで親元を離れ、寮生活をすることで勉強だけでなく心身を鍛えて、自立心や礼儀・規律・コミュニケーション能力を伸ばします。通常、授業は少人数(5~6名)で行われます。

ボーディング・スクールの歴史

ボーディング・スクールは15世紀から16世紀にかけて、英国で創設されました。英国最古のボーディング・スクールは1440年創設のイートン校です。
18世紀末にはアメリカやオーストラリアにも広がり、アメリカ最古のボーディング・スクールは1778年創設のフィリップス・アカデミーです。
19世紀末にはドイツでヘルマン・リーツが「田園教育舎」と呼ばれる多くの寄宿学校を創りました。

スイスのボーディング・スクールは幼児から参加できる!

19世紀の終わり頃、スイスでも寄宿学校が創られ、スイス最古のボーディング・スクールであるル・ロゼは1880年に、他の国より少し遅れての創設です。
スイスのボーディング・スクールは世界各国の子ども・生徒・学生・教師により構成され、国際色が豊かなことや幼児期から参加できることで知られています。
もう一つの特徴が、英国方式とアメリカ方式の両方を採用する点です。これは多様なカリキュラムを柔軟に導入できるという利点に繋がります。
なぜなら、イギリスではイギリス方式だけ、アメリカではアメリカ方式しか原則として選択肢が無いからです。
次に、 スイスの低年齢向けの寄宿学校、「プレフルーリ」と「ラ・ガレン」を詳しく見てみましょう。

プレフルーリ(Pré Fleuri)

スイスアルプスを望むヴィラールにあるインターナショナルスクールで、12ヶ国から低学年の生徒が集まるボーディング・スクールで、3歳から受け入れを行っています。
3歳から寄宿舎なんて無理!!というママ、ご安心ください。3歳はサマースクール、5歳以上は、通常のクラスで、学習言語として、英語かフランス語を選択します。
サマースクールやウインタースクールは保護者が学校の近くに宿泊すればデイキャンプ生(通学生)としてキャンプに参加することもできます。
プレフルーリでは季節に応じていろいろなスポーツを楽しめるほか、大自然の中で他国の生徒と触れ合いながら語学や音楽などを習得できるのが特徴です。
建物はスイス伝統のシャレーになっており、机やベッドに至るまで子どもサイズに合わせて造られています。
生徒一人一人と対話しながら理解を深めることを重視し、それぞれの個性を尊重しています。アットホームな雰囲気で、職員対生徒の比率が3:1に抑えられ、低年齢の子ども達の成長を見守るための手厚い配慮がなされています。

ラ・ガレン(La Garenne Ecole Internationale)

4歳から参加できるラ・ガレンも、標高1,300mのスイスアルプスの中にあります。2016年9月には、10歳以上の生徒向けの寮が完成しました。
また、2019年度からは、MYP(国際バカロレアのミドルイヤープログラム)のYear10がスタートし、最終的にIB(国際バカロレア)取得を目指すシニアスクールがスタートしました。
親元を離れた生活が快適になるよう子どもたちとのコミュニケーションに力を入れ、児童生徒2人に対し、スタッフが1人の割合で配置されています。
カリキュラムは、IPC(英国のナショナルカリキュラムをベースに作られた初等教育プログラム)に基づいて行われ、授業では主に英語が使われます。
フランス語とのバイリンガル教育を目指していますので、特に寮生活ではフランス語の使用や日本語能力の保持、向上にもとても協力的です。
2週間の体験留学、サマースクール、ウィンターキャンプが開催されますので、興味がある方はホームページをご覧ください。

英国のボーディング・スクール

英国のパブリックスクールはボーディング・スクールの典型で、歴史があるのが特徴です。卒業後、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学へ進学することから、エリート・知識階級を養成する教育機関として考えられています。
・イートン・カレッジ(1440年創設)
・ラグビー・スクール(1567年創設)
・ハロウ・スクール(1572年創設)
その他、異色のボーディング・スクールとして、アート&デザイン専科のロンドン国際芸術高校(ISCA)などがあります。
英国全土に公立・私立合わせて525のボーディング・スクールがあり、世界中から2.7万人(2016年)の留学生が、イングランド、北アイルランド、スコットランド、ウェールズの生徒と一緒にイギリスのボーディング・スクールで勉強しています。
生徒全員が寮に入らなければならないわけではなく、「Day pupil(通学生)」と呼ばれる通学生もいます。寮生と通学生が一緒に勉強し、交流します。ほとんどは男女共学で、寮は男子寮と女子寮があります。男子校や女子校も多くあります。いずれも高額な寮費と学費がかかります。
38ある公立のボーディング・スクールは、授業料は国が負担するので無料ですが、寮の費用はかかります。すべてのボーディング・スクールは、授業の質、設備、生徒のケアなどの点で、英国政府が定める厳しい基準を満たさなければなりません。
2016年に英国の私立ボーディング・スクールを卒業した生徒のうち、91%の生徒が大学・カレッジに進学し、大多数がイギリスのエリート校に合格しています。
英国のボーディング・スクールは、入学時はほとんど英語のできない子どもでも、英語を完璧にマスターし、大学やカレッジで勉強できるレベルまでにするエキスパートといっても過言ではありません。

カナダのボーディング・スクール

カナダには以下のようなボーディング・スクールがあります。
・コロンビア・インターナショナル・カレッジ(Columbia International College)
・レイクフィールド・カレッジ・スクール(Lakefield College School)
・セント・ミシェル・ユニバーシティ・スクール(St. Michaels University School)
・アップルビー・カレッジ(Appleby College)
・シャウニガン・レイク・スクール(Shawnigan Lake School)
・アシュベリー・カレッジ(Ashbury College)

日本のボーディング・スクール

日本のボーディング・スクールは以下です。
・札幌聖心女子学院中学校・高等学校
・函館ラ・サール中学校・高等学校
・不二聖心女子学院
・海陽中等教育学校
・学校法人日生学園
・国際高等専門学校

さいごに

ボーディング・スクールは健康で楽しい学校生活を送れるだけでなく、創造力、自信、チームワークの精神を養うのに最適ですね。ほとんどの学校で、写真、サッカー、ダンス、チェス、演劇、作詞、コンピューターのプログラミング、絵画、ボート、オリエンテーリング、乗馬、スキー、ホッケーなどを放課後や週末の活動として開講しています。
10年前、小学生の子どもさん二人を同時にスイスのボーディング・スクールに入学させた人が筆者の知人にいます。父親は国立の大学教授(教育学)、母親は高校の教師という家庭でしたが、あれから子どもさんがどのように成長されたか、知りたくなりました。機会があれば、近況をうかがってみたいと思います。
    この記事の著者
    【ライター・コラムニスト】神戸市外国語大学を卒業後、京都府立高校で英語教師として勤務。 その後、40歳で米国ジュニアタ大学に留学し、平和学を専攻。 続いてオハイオ州立大学 教育学部 修士取得、博士課程、単位取得。 帰国後、関西外国語大学にて教授。 時事、カルチャー、政治経済、幼児教育~社会人教育まで多岐にわたる分野で記事執筆。20年間インドのアウトカーストの子どもたちの教育支援を行っている。 2018年、インド支援の一環として出版社、Murata Publisherを立ち上げる。著書に東洋経済新報社より「クリティカルシンキング 基礎編」「クリティカルシンキング 実践編」「誰も知らなかったインド人の秘密」、Murata Publisherより電子本39冊出版。
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