以前の記事、「小1プロブレム」でもお伝えしましたが、一因と考えられる日本の一斉型教育は今後変わらざるを得ないと考えます。欧米ではずいぶん前からMultiple Intelligences（MI）の考え方が教育に浸透し、e-learningを使った個別型授業に変わっていっています。それをブレンディッド教育といいます。この記事では主に“MI”についてご説明します。

どうやら、教育面で日本は世界の潮流にまだまだ組み込まれているとはいい難い状況です。日本の次世代を担う学生の国際的流動数は文科省によると81,219人（OECDによると、学生の国際的流動数は2015年500万人）です。しかも日本人留学生の84％が一ヶ月未満の短期滞在です。このような現状も日本の教育が世界の主流から大きく離れている一因になっているように思います。

ハーバード大学教育大学院認知心理学教授、ハワード・ガードナーにより1983年に提唱されているマルチプル・インテリジェンス理論 (MI理論）では、人は８つの知能を持つと言います。これは、子どもの個性を改めて見つめ直し、子育てや教育に役立てることができ、世界中から受け入れられています。現在、海外の学校では、MI理論に基づいた個別学習などの学習環境を提供する学校も増えています。

ガードナーの理論によると全ての人間には、

①言語的知能 (Verbal - Linguistic)

②論理・数学的知能 (Logical - Mathematical)

③空間的知能 (Visual - Spacial)

④音楽的知能 (Musical)

⑤身体運動的知能 (Bodily - Kinesthetic)

⑥対人的知能 (Interpersonal)

⑦内省的知能 (Intrapersonal)

⑧博物的知能 (Naturalistic)

があると言います。

少しわかりにくい⑥～⑧について、説明を補足しましょう。⑥は他の人を理解する力・円滑な人間関係を築く力、⑦は自分を知り、自分と向き合う力、⑧は人間の自然界に対する感度や、植物、動物などの識別能力を示します。

IQ（知能指数テスト等）で計られる知能は①の言語的知能と②の論理・数学的知能に偏っています。①と②を養成するだけでは社会に出ても成功できないと世界では考えられています。日本ではどうでしょうか？　未来を見据え、できるだけ早く狭義から広義の知能への教育に移行すべきであると筆者は考えます。

ハーバード大学は毎年夏季に”Future of Learning” (「未来の教育」)というシンポジウムを開催しています。このシンポジウムでは脳科学者、心理学者、教育学者が参加して、最新の未来の教育の在り方について討論します。

2015年、ガードナーはMI理論発表後30年間の研究を総括し、今後の教育の指針を以下のように示しました。

①8つの知能を養成する

②知識や情報の詰め込みをやめる

③ガッツ(Grit)を持つ　（Gritについては、他記事をご参照ください）

④知識とガッツを倫理的かつ道徳的に活用する

参考：https://howardgardner.com/videos/

いかがでしたか？ハワード・ガードナーの8つの知性を知ることで、親や教師が子どもたちの個性を改めて見つめ直し、子育てや教育に役立てることができますね。子どもたちは、どの子もそれぞれが個性を持ち、得手不得手をもっていて当然です。8つの知性をまんべんなく育てることに終始せず、知性のどれかがダントツにできる子どもがいることも当然なこととして、おおらかに受け入れられる日本であって欲しいと思います。