ＥＱは「Emotional Intelligence Quotient」の略で、1989年に米国イェール大学のピーター・サロベイ博士とニューハンプシャー大学のジョン・メイヤー博士によって論文発表されました。その後、ダニエル・ゴールマンが研究を進め、『EQ こころの知能指数』を著したことで世界中に普及しました。

EQの5つの能力には、自己認識力、自己統制力、動機付け、共感能力、社会的スキルがあり、すべて後天的な能力といえます。幼小期の環境によって、物事の捉え方や考え方が変わってくるため、親のあり方も子どものEQに影響すると考えられていて、研究結果も多くあります。

生まれ育った環境が一因で、子どもが感情を抑制してしまい、自分の感情をコントロールすることができなかったり、NOと言えない環境は避けなくてはなりません。また、自分の感情を認識し、周囲の人を理解したり、共感するためには、豊かなコミュニケーションが大切です。このように、幼少期の親との関わりは、EQ教育の第一歩といえます。

具体的には寝る前に一日の出来事を子どもと話しましょう。「きょうはどんなことがあった？」「どう思った？」と、子どもの気持ちを聞き、共感してあげましょう。それにより、子どもは昼間体験したネガティブな感情から解放されます。そして、静かな空間で絵本を読み聞かせたりすると、気持ちがリセットできます。

親も育児や家事で忙しいと、なかなか子どもの相手をしてあげる時間が作れないですよね。限られた時間の中で、たくさん会話をすることで、子どもは感情豊かに育ち、相手の気持ちを考えられる子ども、共感できる子どもに育ちます。また、たくさん褒めてあげることで自分に自信がつきます。自信がつくと自己肯定感が芽生え、逆境や困難を自分の意思や力で乗り越えることができるようになります。

著書『幼児教育の経済学』の中で、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授は40年以上にわたる追跡調査から、5歳までの教育がやる気や忍耐力を伸ばし人生を変えることを明らかにしています。

IQが高く勉強はできたとしても、必ずしも社会で活躍・貢献し収入が高く安定した生活を送るわけではないことを指摘し、むしろIQではなく、数値化できないEQ(非認知能力)を伸ばすことこそが成人してからの仕事などの成功、高収入に結びついているのではないかと、主張しています。

このたび、文部科学省の新学習指導要領（幼稚園平成30年、小学校平成32年施行分）にも知識及び技能，思考力・判断力・表現力等と合わせて、「非認知能力」にあたる学びに向かう力，人間性等が教育の柱のひとつとして明記されました。（参考：文部科学省　学習指導要領「生きる力」

以上、EQについてお伝えしました。一般的に、EQが高い人は好奇心が旺盛で努力家であると言われます。その芽を伸ばすのは幼少期であると多くの学者が指摘しています。どの親も、我が子がコミュニケーション能力が高く、協調性があり、逆境に強い「生きていく力」をもった子どもに育つよう願います。子どもたちが成長し、より幸福に暮らしていくための基礎、EQを伸ばすために、親もできる限り子どもに良い環境を作ってあげたいものですね。