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オールタナティブ・スクールの一つ、ニイル教育って?

ライター 村田 美子
2020/08/10 06:08
「子どもに、もっと自由で、自分自身の生き方を追求する教育を!」と、養育者が願う時、私たちの頭に浮かぶのは、シュタイナー学校やホーム・スクール、チャーター・スクール、サドベリー・スクールといったオールタナティブ・スクールです。この記事では、その一つニイル教育が行われているサマーヒル・スクールに焦点を当てます。そして、オールタナティブ・スクールが置かれている実情についてもお伝えしましょう。

A・S・ニイルが創設した国際学校、サマーヒル・スクール

サマーヒル・スクールは、1921年、A・S・ニイルによってドイツで始まった最古のフリースクールで、世界各地のフリースクールのモデルになりました。現在では、イングランドのレイストンで、生徒たちが全寮制で学んでいます。
サマーヒル・スクールには、「子どもたちは強制よりも自由を与えることで最もよく学ぶ」という教育哲学が底流に流れ、民主主義と社会的平等を大原則としています。
すべての授業が選択制で、生徒の自由に任されています。そのため、「世界一、自由な学校」として知られています。学校で禁じられているのは、寮での同棲と喫煙です。
生徒は週4回ある全校集会に参加し、学校の規則などを決めたりする学校自治が徹底しています。
すなわち、サマーヒル・スクールの特徴は、授業への出席は生徒の自由意志によること、教師と生徒が対等であること、教師による処罰を否定していることです。この革新的、先駆的試みは、現在、世界中の多くの公立学校でも行われています。
(参考:『ニイルと自由の子どもたち』堀真一郎 著)
サマーヒル・スクールの卒業生の多くは、大学にも進学し、大学教師など専門職に就いた卒業生も少なくないといいます。しかし、サマーヒル・スクールは、その教育方針を巡って、イギリスの政府と裁判になったことがあります。
1999年に、サマーヒルはイギリスの教育基準監督局から査察を受けた後、一時は閉校の危機に追い込まれてしまいました。その時、サマーヒルは毅然と法廷で争い、調停案で合意しています。
日本では、「きのくに子どもの村学園」「いいづな学園」などで、ニイルの教育思想に基づいた教育が行われています。
次に、サマーヒル・スクールなどが含まれる、オールタナティブ教育について、まとめてみましょう。

オールタナティブ教育って?

Alternative educationは代替教育(だいたいきょういく)と、訳され、特に幼児教育~中等教育で行われる、従来とは違う斬新な運営制度、進級制度、教育科目などが特徴です。
形態は、公立校、私立校、無認可校(営利・非営利)、ホームスクールなど、さまざまですが、ほとんどは私立校です。
具体的には、モンテッソーリ学校、シュタイナー学校、イエナプラン学校、ホームスクール、チャーター・スクール、サドベリー・スクール、マグネット・スクール(小中高一貫校、イマージョン校、ギフテッド教育など)、インディペンデント・スクール、セパレート・スクールなどが、その範疇に入ります。それぞれの詳細については、別記事をご参照ください。
特にモンテッソーリとシュタイナーは、現在では私立のみならず州立や公立としても存在します。

オールタナティブ・スクールの歴史

「もう一つの教育を!」という考えはいつごろから出てきたのでしょう。代替というからには、不満に思う対象があるはずですね。
「オールタナティブ教育」は、19世紀に義務教育が普及した後に話題になりました。19世紀には、スイス人のペスタロッチ、アメリカ人のエマーソン、ソロー、また教育進歩主義を作り上げたジョン・デューイ、さらにモンテッソーリやシュタイナーなどがオールタナティブ教育を主張しました。
皆、人間らしい教育を主張し、子ども主体の教育、子どもの尊厳を認める教育を目指しました。

オールタナティブ校の経済的基盤

アメリカのオールタナティブ校には、数多くの公立校があります。イギリスではオールタナティブ校への公的援助金がなく、納付金を払うのが普通です。

日本におけるオールタナティブ学校の実情

日本でオールタナティブ教育と言うと、学校教育法等の法的根拠を持たない、非正規の教育機関と、そこで実施される教育のことになります。
その中でも特に、 幼児~学校教育の新しい教育思想である、モンテッソーリ教育やシュタイナー教育、デモクラティック・スクールなどを指します。
不登校児童生徒の救済のためのフリースクール、サポート校、ホームスクーリングや、インターナショナル・スクールを示すことも多いです。
ただ、日本では、オールタナティブ教育だけでは正規の課程の卒業資格を認定されないため、大学への入学資格を得る事が不可能です。そのため、通信制や定時制等による正規課程の履修を併用したり、文部科学省による卒業資格認定試験の受験、海外の大学に進学するためには、国際バカロレア試験(IBなど)を受験しなければなりません。
文部科学省では、グローバル人材育成の観点から、IBの普及・拡大を推進するため、平成30年度から、文部科学省IB教育推進コンソーシアムを立ち上げています。日本での認定校に関しては、以下のサイトをご覧ください。

日本のオールタナティブ・スクールのデメリット

日本で「学校」というのは、学校教育法第1条で定められた施設だけが名乗ることができると前にふれました。
学校は文部科学省の学習指導要領に沿っています。子どもたちは住んでいる家の校区の学校に籍を置きつつ、オールタナティブ・スクールに通うことになります。
公立学校ではないので、学費は自分で負担しなければなりません。また、進路の問題もあります。小学校だけのオールタナティブ・スクールが日本には多く、卒業後、公立中学か私立中学に通うことになります。一般校とのギャップに戸惑ってしまうことがあるようです。

無償化の対象にならない幼稚園類似施設とは?

そもそも幼稚園とは、学校教育法に基づき都道府県に認可された施設です。敷地面積・一学年の幼児数・設備構造など、国が定めた基準を満たしておらず、幼稚園とは認可されていない施設であるものの、教育的な面など幼稚園と変わりない施設のことです。
認可されていないと「幼稚園」という名称が使えないため、幼稚園類似施設と呼ばれます。
園の教育方針からあえて届け出をしていないモンテッソーリ・シュタイナーといった教育法をはじめ、体育・音楽などの面で個性を持つ施設などもあります。
すなわち、オールタナティブ教育を行っている幼稚園類似施設は、2018年秋から開始された、無償化対象になっていません。今後の展開を見守りましょう。

さいごに

ニイルは「教育とは小さな軍隊ではない」と明言しています。権威主義を否定し、「子どもたちを伝統的な価値観や行動様式からひとまず解放して、自分自身のものの見方を築かせること」でした。
グローバル化、AI普及に伴って、子どもたちが未来に向かって力強く生きていくには、従来の教育では太刀打ちできないと考える教育者や養育者が増え、現在では、一般学校において、かつてはオールタナティブ校だけで使われていた手法が導入されており、オールタナティブ教育と主流な一般教育との境目がますます曖昧になってきているようです。
この記事でご紹介したように、現在オールタナティブ教育を行っている学校が日本でも数多くあります。経済面や、進路に関する実情をお伝えしましたので、是非参考にしてください。
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