表情が乏しく、発語も少ない静かな赤ちゃんを私は「サイレント・ベビー」と名づけましたが、この「サイレント・ベビー」という言葉は、医学用語でも育児用語でもありません。 育児の上での環境、とりわけお母さんとのかかわりあいが、大きく影響します

医学的には知的な発達の遅れや自閉症の可能性もあるが、小さいうちは判断が難しい。

泣いても無視されることが続くと、赤ちゃんが空気を読んで、諦め、泣かなくなるという説は疑問である。赤ちゃんが空気を読むとは考えられない。

日本小児科医会は、授乳中のスマホやテレビはできるだけ控えた方がいいとアドバイスをしているが、そのせいで「サイレント・ベビー」になるかというと、そのような短絡的な因果関係を見出すのは難しく、研究は途上である。

実際にそのような子たちを診察したことはあるが、家でほとんど面倒を見てもらえていないケースが多く、親に抱かれるのを嫌がったり、おびえたりしていた。家庭事情などがが深刻な例ばかりだった。

妊娠・出産・育児情報などを扱うサイトにはサイレント・ベビーについての記事が数多くある。やみくもに、母たちの不安を煽っている。医学的に根拠や因果関係なしに、必要な育児情報のように書かれていることが問題。

問題はお母さんに経済的困窮、社会的孤立、産後うつの可能性はないかを診ることが大切。

生後5〜6ヶ月になっても声を出さない乳児は、別の疾患（甲状腺機能低下症、目や聞こえの異常など）を疑い、小児科にかかって欲しい。